Tomb of the Overlord

オーバーロード 元ネタ考察 備忘録

はじめに

このブログは丸山くがね氏の小説『オーバーロード』について、そのユグドラシル世界に大きく影響をあたえているであろう、ダンジョンズ&ドラゴンズ3.5版(以降D&D3.5e)視点から、元ネタを考察していく個人的な備忘録です。
オーバーロード内からのものは〈山カッコ〉、D&D3.5e出典のものは《二重山カッコ》で表記しています。
またD&D3.5eについては、特に記載ない限り基本ルールブック3冊(PHB,DMG,MM)からの出典です。

自分は3版系で邦訳された分はほぼ全てルールブックを揃えていますが、なにぶん物量が多く未訳まで含めると甚大な量となります。また丸山くがね氏がプレイ経験を明言しているクラシックD&D(赤箱)、ダンジョンズ&ドラゴンズ4版、ソードワールドガープスなどについての知識はほとんどありません。
そのため勘違い、的外れな考察もあるかもしれませんがそこはご了承ください。

追記ログ

2025/10/21 私はな、根本的に自分だけが選ばれたとは考えていないのだ。
『亡国の吸血姫』における描写について追記

2025/10/12 没データ
『やってきたよ、ドルイドさん!』について追記

2025/09/22 D&D(←この時点で要注意)というお話
ベーシック/エキスパートセットについて追記し文章整理

2025/09/20 理論上はできるけど実際にやると怒られる系マンチ技
高貴バードについて追記

2025/08/30 理論上はできるけど実際にやると怒られる系マンチ技
ライトニング・ククリについて追記

2025/08/26 1986年の怪物誌
オークの参考画像を追加

2025/08/11 クラス考察 その2
ドルイドクラスのデザインについてさらに追記

2025/07/27 ウィザードリィとAD&D1e:システム比較表
表:クレリックの治癒呪文によるHP回復量を追記

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『幻獣辞典』とカーバンクル

*この記事はまたまた、以前に書いた「1986年の怪物誌」の補足となります。

 

ホルヘ・ルイス・ボルヘスマルガリータ・ゲレロ共著 『幻獣辞典』について

  • スペイン語第1版:『Manual de zoología fantástica』(1957年)

  • 改訂第2版:『El libro de los seres imaginarios』(1967年)

  • 英訳版:『The Book of Imaginary Beings』(1969年)

  • 和訳版:『幻獣辞典』(1974年)

『幻獣辞典』は世界各地の神話・伝承・文学に登場する架空の生物を博識的に集めたアンソロジーであり、ボルヘス作品の中でも代表的な一冊とされる。出版歴が示すように国際的にも広く知られ、各国の幻想文学・ファンタジー作家に多大な影響を与えた。

この英訳版『The Book of Imaginary Beings』は1969年、すなわちRPG誕生前夜ともいえる時期に刊行されたこともあり、当然「D&Dモンスター」の造形にも少なからぬ影響を及ぼしたと考えられるが、D&D側で独自に発展させたモンスター設定も多く、断定は難しい部分もある。

 

また本書の存在によって世界各地のマイナーな怪物伝承が広く知られるようになった点も大きい。現在ピクシブ百科事典やウィキペディアに掲載されている幾つかのモンスター解説記事には『幻獣辞典』和訳版から直接引用された記述が多く見られる。さらに英訳版が出る以前にはスペイン語圏でしか知られていなかった幻想生物(カーバンクルなど)も、本書によって国際的に紹介されることとなった。

 

一介のオタクとしては「もし本書和訳が無ければ『機動戦士ガンダム』(1979)の宇宙要塞ア・バオア・クーの名も違っていたのだろうなぁ」とか思いを馳せがちなのだが、今回はその話ではなくRPGモンスターの系譜についてです。

 

コンパイルの有名落ち物ゲームぷよぷよ』シリーズに登場するマスコットキャラクター「カーバンクル」について。

ぷよぷよ』シリーズにはAD&D固有のモンスターであるアウルベアやノールが登場する。そのため自分は当初、マミー、バンシー、ハーピー、ワイト、カーバンクルといった他のぷよぷよキャラクター達も同様にAD&D系資料、すなわち『Monster Manual』および『Fiend Folio』を参照しているのだろうなぁと思い込んでいた。
ところが、実際に『Fiend Folio』記載のモンスター「カーバンクル」と『ぷよぷよ』シリーズにおける「カーバンクル」の容姿を比較してみると、両者はかなり異なっている。

では、その違いはどこから生じたのか。
実はカーバンクル伝承の共通ソースである『幻獣辞典』と、コンパイルにおけるカーバンクル初出作品MSX2用ソフト『魔導物語 EPISODE II CARBUNCLE』ディスクステーション版・1989年)との間に、もう一つ系譜をつなぐ資料が存在していた。それが以前の記事「1986年の怪物誌」にて紹介したRPG解説書・早川浩RPG幻想事典』(1986年)だったのである。

 

初期『魔導物語』シリーズの監督である米光一成は自身の著作の中で、早川浩著『RPG幻想事典』に影響を受けてRPG制作を始めたと述べている。
さらに下記YouTube動画では、アルルたち『魔導物語』キャラクターのデザインに関して、背後の本棚から『RPG幻想事典』を取り出し「氷樹むう先生にコレを見せた」とぶっちゃけている。

動画リンク:米光とうゑみぞがコンパイル時代のお宝を見せながらしゃべる会

*39:50~ ぐらいから参照。コンピュータRPGでは軽視されがちなモンスター伝承の設定を生かすという『魔導物語』のコンセプトについても語られており、色々と興味深い話が聞ける

 

RPG幻想事典』の著者・早川浩は当時の日本産RPGの状況を憂い、本書の序文では警鐘を鳴らしていた。
しかし、そんな『RPG幻想事典』がきっかけとなって、米光一成氏の手によりこれまでにないタイプのRPG魔導物語』が誕生し、さらに後年には名作ローグライクゲームバロック』(サターン版をクッソやり込んだ)へとつながっていったと考えると、実に感慨深いものがある。

自分が若かりし頃に読んだRPG解説本と、かつて熱中したRPG作品とが、思いがけないかたちで繋がっていた――それはとっても嬉しいなって

 

*参考画像

AD&D1eサプリメント『Fiend Folio(1981)におけるカーバンクルボルヘス『幻獣辞典』において「その動物がどんな姿をしていたかは、だれも知らない」と記述された容姿だが、ここではアルマジロをベースにデザインされている

 

RPG幻想事典』(1986)におけるカーバンクルコンパイルカーバンクルの直接の参照元であるが、かなり不気味な姿をしている

この『RPG幻想事典』には前述の『Fiend Folio』が参考文献として記載されており、収録モンスターの解説にも同誌を参照・引用したものが複数見られる。
しかし本解説における「カーバンクル」の容姿に関する描写は、AD&D1eモンスターとしての物では無く、ボルヘス著『幻獣辞典』からの引用に基づいた「額にルビーを持つ謎の動物」としてイラスト化されたものとなっている。

 

 

魔導物語 EPISODE II CARBUNCLE』(1989) この作品がコンパイル㈱におけるマスコットキャラ「カーバンクル」の初出となる。
ただし当時のデザインは現在のものとはやや異なり、額にうめこまれた八角形の宝石(後の設定ではルベルクラクとなっているが、本作ではカーバンクルと呼ばれている)が強調されたもので、体色も黄色ではなく茶色、耳もやや細長いという特徴を備えている。

はじめての冒険 3.5版

君は生き延びることができるか

もう20年ほど前になるだろうか……ある卓でダンジョンマスターがこんなことを言っていた。

「1レベルキャラクターの戦闘には、そのゲームデザインの全てが詰まっている」

当時の自分は「1レベルなんてクラスの特徴も少ないし、やれることの幅も狭くてつまらない。3Lvを過ぎたあたりからが楽しい、さっさとレベル上げたいぜぇ」などと考えていたのだが、今になって改めて1レベルキャラクターの強さという物を検証(D&Dの低レベルキャラは死にやすいと言われているけど、本当のところはどうなの?)していくうち、かのダンジョンマスターの言葉が真実であったことに気付かされた。

 

検証の為、まずはごく一般的な1レベル戦士がどのようなステータスになるのかプレイヤーズ・ハンドブック3.5版に基づいてキャラクターを作成してみることにする。

「ファイター太郎」
ヒューマン・ファイター・オトコ:HP13、AC17、攻撃ボーナス+5、ダメージ期待値7.5
(ロングソード、スケイルメイル、ヘヴィ・シールド装備、筋力16、敏捷12、耐久16、特技3個うち1つ武器熟練)

*命中判定には20面体ダイスを使用するので、1目盛り=5%の重みになります。つまりアーマクラス17に対しアタックボーナス+5による攻撃は(17-5)=12以上の出目で成功。20面体のうち12~20は9つを占めるので9×5=45、45%の命中率となる

*クリティカルとファンブルを除いた命中率%換算=(21 − AC + AB) × 5

 

次に今時コアルールだけなんてやってらんねえ!というマンチな方も多いと思われるので、サプリメント(追加ルール)アリで、ガチめにファイターを作ってみる

ドワーフの戦士「トルデク」:HP16、AC18、攻撃+5、ダメージ8.5
(ドワーヴン・ウォーアックス、スケイルメイル、エクストリーム・シールド装備、種族代替クラスルール使用、特技2個うち1つ武器熟練)

*H.F.O太郎と比べると、HPは+3、ACと与ダメ期待値は+1上昇している。些細な差に見えるかもしれないが、これは回避率が5%上がり、さらにダガーの一刺しを耐えられるようになったということだ。その"プラスいち"を軽んじる者は、熾烈なる闘争の坩堝――ダンジョンにおいて、明日の太陽を拝むことはできないだろう。(卓ゲ界隈において「妖怪1足りない」は、その存在がまことしやかに囁かれている都市伝説である)

 

さらには極端なアタッカー寄りのデータも組んでみる

ハーフオーク・バーバリアン「クルスク」:HP15、AC15、攻撃+5、ダメージ13
(グレートソード両手持ち、スケイルメイル装備、特技1個)

*1日1回《激怒》使用時:HP17、AC13、攻撃+7、ダメージ16

《激怒/レイジ》状態になると一時的にファイター太郎より命中率が10%高くなり、与えるダメージは2倍になる。ボス戦では活躍してくれそう(そこまで生き延びれば)

 

ついでに参考となるよう、クレリックのデータも載せておく

かわいそうなクレリック「アレーナ」:HP10、AC16、攻撃+1、ダメージ5.5
(ヘヴィ・メイス、スケイルメイル、ヘヴィ・シールド装備、特技1個、1Lv呪文:1日3回)

*名前からし死亡フラグが立ってはいるが、他意はありません。

 

以上、我らが頼れる前衛メンバーたちのデータと、3.5版SRDから引っ張ってきた敵モンスターのデータを比較・検証してみよう!

雑魚モンスターの例

  • コボルド:HP4、AC15、攻撃+1、ダメージ2.5、CR1/4
    (遠隔攻撃+3、ダメージ1.5)
  • ゴブリン:HP5、AC15、攻撃+2、ダメージ3.5、CR1/3
    (遠隔攻撃+3、ダメージ3.5)

一般的な強さのモンスターの例

  • ホブゴブリン:HP6、AC15、攻撃+2、ダメージ5.5、CR1/2
  • オーク:HP5、AC13、攻撃+4、ダメージ9、CR1/2

*CR(脅威度)とは、そのモンスターが平均的な冒険者パーティにとってどれほどの危険かを示す指標。たとえば「CR1」は、1レベルの冒険者4人にとって、その遭遇難易度が5段階評価のうち下から2番目の「並」の難易度となる。

つまり1レベルパーティ4人にとってはコボルド4人やオーク2人の遭遇は難しくとも何ともない、普通の難易度という事である。

 

*ここで上記のデータを見比べると、興味深いことに多くの敵のアーマクラスが15に集中しているのが分かるだろう。

D&D3.5eにおいて、上記1レベル戦士の太郎がAC15の敵に攻撃した場合、命中率は55%となる。また《武器熟練》の特技を取得しない戦士系クラスの場合は命中率が50%に下がる。つまりデザイナーは意図的に「1レベルの前衛キャラクターが敵に攻撃した際、およそ半分の確率で命中する」ように、アーマクラスの値を調整していると考えられる。

このようにAC15という数値は単なる偶然ではなく、"1レベル冒険者の基準となる戦闘感覚"を定義するための基準値として設定されていると思われる。

 

さて、コボルド&ゴブリンの雑魚二大筆頭に話を移そう。

ゴブリンの攻撃はファイター太郎に対し30%の確率で命中、ダメージ期待値的に倒すのには4回の有効打が必要となる。対して戦士はゴブリンに55%で命中、その一撃で倒すことが可能である。

この数値だけを見るなら、たとえゴブリンが徒党を組んでいようが正面からの殴り合いでそうそう遅れを取ることは無い。クレリックと一緒に前に並んであとはD20を振り続けるだけ……と油断してしまうかもしれないが、それだけでは済まないのが戦場のリアルという奴である。

モンスターマニュアル3.5版によると、コボルドについて「攻撃をしかける時は、圧倒的多数でかかるか、策略を用いる」「できる限り罠を仕掛けておいたエリアの近くで不意討ちをしかけ、敵を罠に追い込もうとする」、ゴブリンにおいては「待ち伏せ、数の暴力、汚いトリック、そのほか手立ての限りを尽くして自分たちを有利にして戦うのを好む」と明記されている。つまり単なる数合わせの雑魚戦だと思って正面から突っ込めば、気付いた時には罠にかかり戦線は崩壊、側面背後からの包囲殲滅で後衛ウィザード(HP5)は死亡確認、一気に劣勢に立たされることもある。

さらにコボルト及びゴブリンは〈隠れ身〉および〈忍び足〉の技能判定に種族ボーナスを持ち、さらに小型サイズである為これにボーナスが付く。人間より格段に隠れるのが上手く(成功率+40%)、暗視によって暗闇の中から襲いかかってくるその姿は、もはや小手調べでは済まない脅威である。

小説『ゴブリンスレイヤー』にたびたび描写される新人冒険者の悲劇的な末路は、フィクション的演出ではなく、ルールに裏打ちされた "まれによくある"風景の一つに過ぎない。

 

次はオークのデータに注目してみよう。

ホブゴブリンのデータと比べると、ACが2下がり(回避-10%)、攻撃ボーナスが2上昇(命中+10%)、ダメージは倍近くになるという、これまた非常にアタッカーとして分かりやすいデザインがなされている。そしてその実際の脅威度は+10%では済まされない。

ファイター太郎のAC17に対してオーク(攻撃+4)がファルシオンを振ると、命中率は40%。突撃であればさらに+2が加わり命中率50%となる。で、これが2回命中すると太郎君は死んでしまう。

ついでにいうとファルシオンは高クリティカル武器であり、15%でクリティカル2倍ダメージになって、太郎君は死んでしまう。

……これデザインした奴、出てこい!!(怒

 

注:厳密には、キャラクターはヒットポイントが0より下回れば瀕死状態で倒れ、そのまま流血瀕死をほっといて-10までいけば死亡状態であり、一応ワンクッションを挟む形になる。しかしながらオークの攻撃2回命中で倒れた戦士(HP-5)にクレリックがキュア・ライト・ウーンズしても回復量は期待値たったの5.5であり、さらには倒れた戦士(伏せ状態)に対する攻撃には+4のボーナスが付くし、戦士が立ち上がるときには"機会攻撃"のルールにより周りのオークから追加攻撃を受ける……戦線を立て直すどころか、"死の起き上がりこぼし"状態という、非常にまずい事態から抜け出せなくなる。

このように戦闘が長引くほど、オークの数が多いほど死亡率は跳ね上がり、ついに不幸な事故は避けられないものとなる。……早くも結論出ちゃったね、「D&Dの低レベルはやばい、オークに2回殴られると死ぬ*1

 

特殊能力を持つモンスターの例

  • ケルト:HP6(DR5/殴打)、AC15、攻撃+1、ダメージ3.5、CR1/3
  • ゾンビ(元人間):HP16(DR5/斬撃)、AC11、攻撃+2、ダメージ4.5、CR1/2
  • グール:HP13、AC14、攻撃+1,+0の3回攻撃、ダメージ4.5および2、CR1
  • スパイダー・スウォーム:HP9、AC17、群がり攻撃、ダメージ3.5、CR1

*DRとはダメージ減少(物理耐性)を指し、スケルトンは殴打武器以外の攻撃ではダメージが5減らされ、ゾンビに対しては斬撃武器以外で5減る。

特にゾンビはACが11しかない、ほぼ棒立ちであるのにHPは16もある。明らかに「攻撃は当たってるのに、なかなか倒れないモンスター」としてデザインされているのが理解できる。

ファイター太郎君は、ダンジョンマスターの「剣での攻撃はスケルトンにあまり効いていないようだ」といったヒントを聞き逃さず、予備武器のメイスに切り替えていこう。

あとは古典である『赤箱』の展開にのっとり、クレリックのアレーナがアンデッド退散で蹴散らすのも風情があって良いかもね。

どのみち「あまり強くは無いが、特徴的なモンスターとの遭遇」として、長く君の記憶に残ることになるだろう。

*グールも1レベル帯で遭遇する可能性のあるアンデッドだが、こちらは噛みつき、爪、爪の三回攻撃に加え、それぞれに「麻痺」の副次効果が付与されるという大盤振る舞い。さらに噛みつきによって感染する病気「グール熱」により死亡した場合、真夜中にグールとして蘇るという、いわゆる「アンデッドに殺された者がアンデッド化する」能力も備えている。

ケルトンやゾンビの物理耐性、非実体のゴースト系やターン・アンデッドで退散させられるといった特徴も合わせて見ると、アンデッドというカテゴリー自体が、「特殊な遭遇」としてデザインされている傾向がうかがえる。

*スパイダー・スウォームは無数の小蜘蛛で構成された危険な群体である。アーマクラスこそ書いてあるものの、武器ダメージに対する完全耐性を持ち、さらには群がり攻撃による自動命中と毒を持つ。要するにファイターが殴ってどうにかできるモンスターでは無い。低レベルにおける対処法としては、松明や油瓶を使い焼く、水中へ逃げる、強い風で吹き飛ばすなど、プレイヤーは機転を効かす必要がある。またこのような「びっくりどっきりモンスター」はD&Dゲームには多数存在し、冒険に多少の危険と大きな驚きを与え続けてくれる存在である。

 

隊長~ボスクラスの例

  • ノール:HP11、AC15、攻撃+3、ダメージ6.5、CR1
  • バグベア:HP16、AC17、攻撃+5、ダメージ6.5、CR2

*ここでバグベアは、CR1のノールに比べてACと攻撃ボーナスがそれぞれ+2高く設定されているのに注目。
D&D3.5版では、戦士系クラス(いわゆる攻撃成長が良いクラス)は、1レベル上がるごとに基本攻撃ボーナス(BAB)が+1される。さらに、キャラクターがレベルアップの過程で《武器熟練》の特技を得たり、より高品質な武器や鎧を手に入れたりすることを踏まえると「2レベルの冒険者が戦うべき敵」として、攻撃・防御がともに+2強化されているのは理にかなっている。

このような調整は、CR(脅威度)をキャラクター成長の具体的な数値変化に対応させるという、3.5版のシステム哲学をよく表したゲームデザインと言えるだろう。

 

脳筋どもには精神作用がスーっと効く

上記データからわかるようにオークやボス格のバグベアは、殴り合いでは危険な存在だが、彼ら脳筋デミヒューマンには意志セーヴ(心術や幻術への抵抗)が低いという明確な弱点が存在する。

  • オークの意思セーヴ:-2、
  • ホブゴブリンの意思セーヴ:-1
  • ノールの意思セーヴ:0
  • バグベアの意思セーヴ:1

つまり知力18のグレイエルフ・ウィザードが睡眠/スリープ呪文(DC15)を唱えたなら、オークは80%、バグベアは65%の確率で眠りに落ちる。

0レベル呪文の幻惑/デイズなら、5%減のDC14で敵を幻惑させ、1ラウンド行動不能にすることが出来る。なお巻物から使用するとDC(呪文の抵抗難易度)は最低限まで落ちてしまうため、これらの呪文はウィザードの生スロットから使用するべきだろう。どの呪文を準備していくか、ウィザードは十分に吟味しておこう。

注:ウィザード1Lvがで準備できる1Lv呪文は、知力ボーナスを入れてもほぼ2つ。専門化ウィザード、あるいはエルフ・ウィザードの代替ルールを使用している場合は、さらに1つ追加され合計3つとなる。選択肢としてはスリープ、カラー・スプレー、グリース、マジック・ミサイルなどが代表だろう。

 

まとめ

  • 20年前は「ぜんぜんわからない。俺たちは雰囲気でD&Dをやっている」状態だったが、今回3.5版の各データを検証する事により、明確な哲学を持ってデザインされたシステムだったという事が理解できた。ゴブリンとホブゴブリン、オークにバグベア。全ての数値は意図をもって設計されたものだったのだ。
  • 挟撃による+2ボーナスは低レベルでは大きい。クレリックは当てるつもりは無くても、前に出てファイターに協力して後衛の壁になろう。
  • 1レベルでは、両手武器はオーバーキル気味で不要かも?盾によるAC+2の方が生存率を大きく上げるはず。それでも両手武器バーバリアンを使いたいのなら、特技は《激怒回数追加》にして1日3回激怒出来るようにしよう。やられる前にやれ!(なおこのように敵主力を瞬時に盤外へ排除できる高火力ユニットは、より高いレベル帯においてこそ真価を発揮するタイプである)
  • 同様に3.5版で強いとされてきた「足払い特化」(トリッパー)ビルドも1レベルではそこまで必要ないかも。ただし間合いの長い武器(ロングスピアやスパイクト・チェーン)と特技《迎え撃ち》の組み合わせで、群がる敵を迎え撃つ戦法は強力であり、特技の豊富なファイターは通常の間合いの武器でも《迎え撃ち》は必ず取って、後衛に敵を近寄らせないように!
  • ダメージ期待値的に、片手武器であっても一撃で敵モンスターを倒せる確率が高いので、特技《薙ぎ払い》(敵を倒したら攻撃範囲内の別の敵に追加攻撃)はかなり有効。ただし前提特技の《強打》(命中を下げた分、ダメージアップ)が死に特技になってしまうのが惜しいところ。取得特技がいちばん多くなる人間ファイターならば《強打》、《薙ぎ払い》、《迎え撃ち》の3つで、攻撃回数増加を狙うビルドもアリか。
  • 松明、ランタン、陽光棒。光源は複数用意しておこう。
  • 1レベルの時点でも、ダメージ減少(物理耐性)を持つ敵と遭遇することは珍しくない。初心者向けの卓であるならダンジョンマスターの配慮として、プレロードキャラには各種DRに対応する予備武器を持たせてあげよう。
  •  ウィザードは1回殴られれば倒れるので、前には出ないように(当たり前)。不意打ち乱戦が怖いならメイジアーマ呪文(AC+4)のスクロールを、お守り替わりに買っておこう。
  • ゴブリンおよびコボルドは、素の殴り合いなら戦士は負けることは無いが、「奴らは馬鹿だが間抜けじゃない」 ダンジョンでは決して油断せず、不意打ち奇襲に要注意!

「自分たちプレイヤーが出来る事は、敵モンスターも出来る」という意識を持とう。

  • 対オーク戦では2回殴られれば倒され、クリティカルを受ければ一撃で死亡する可能性がある。漫然と戦うには危険すぎる相手だ、常に戦術的優位を確保する立ち回りを心がけよう。
  • リソースはケチるな。オークが3体以上出てきたら、虎の子のスリープ呪文の使いどころだ。
  • 1レベルでは、呪文は戦況をひっくり返す切り札となりえる。もちろん、敵が使っても……
  • 戦闘を「避ける」、「逃げる」という選択肢があることを忘れずに。モンスターの中には足が遅いものもいるし、交渉できる相手だっている(たまには)。

 

ダンジョンマスターは、初心者相手には手加減しよう(笑

危険な場所や隠し通路、ダメージ減少を持つアンデッドなどの特徴的なモンスターは、状況説明を工夫してプレイヤーにヒントをあげよう。
ダンジョンマスターはプレイヤーの「目と耳」だということを忘れずに。

キャリオン・クロウラーは禁止!

オークは事故りやすい、ホブゴブリンへの差替えも検討しよう。

ウィザードへの組付きやマジック・ミサイル二連発による確殺など、極端に効率的な戦術行動は程々に控えよう。

倒れたキャラクターを攻撃してとどめを刺さない事。

忘れないでください、モンスターたちはキャラクターと戦っているかもしれませんが、ダンジョンマスターはプレイヤーと戦っているわけではありません。

心を折りにいくようなマスタリングはやめて、みんなで楽しく!

 

最後に
時には奮闘むなしく、君のキャラクターが悲劇的な最期を迎えることもあるだろう。
それでも、テーブルの全員が楽しくプレイできたのなら——その冒険は、まぎれもなく君たちの勝利なのだ。

*1:クリティカル率も含めて計算してみたが、オーク2体に突撃された場合の生存率はおよそ55%しかなく、ほぼコイン投げで死ぬレベル

魅力で殴れ!一撃のお話

オーバーロード』書籍9巻のカルネ村攻防戦にて、ゴブリンのジュゲムは特殊技術/スキル〈ゴブリンの一撃〉を使用している。

また別作品ではあるが『ゴブリンスレイヤー』書籍5巻においては、小鬼聖騎士(ゴブリンパラディン)が〈只人を討つ一撃/スマイト・ヒューム〉により、ゴブリンスレイヤーの盾を容易く切り飛ばしてみせた。

 

このように両作品に登場するゴブリンが"一撃"という名のスキルを用いている点は、単なる偶然というわけではないだろう。

その共通点となる背景には、D&D3版系パラディンが持つクラス能力《悪を討つ一撃/Smite Evil》が発想の源にあると考えられる。

 

過去記事にも書いたが《悪を討つ一撃/Smite Evil》は「悪属性の敵に対し、次の攻撃1回の命中判定に魅力ボーナス、ダメージにパラディンレベルを加算する」という効果を持つ。この能力はパラディンのみならず、同様に善属性限定となっている一部のクラスや、パラディン強化系上級クラスも使用できることが多い。

さらにはD&D3.0~3.5e時代において、基本クラスおよび上級クラスが次々に追加されていく中で、《一撃/Smite》の名を冠した類似のクラス能力も数多く登場するようになった。

 

ブラックガード:《善を討つ一撃/Smite Good》 

ヴィジランテ:《罪人を討つ一撃/Smite the Guilty》

エルフ・パラディン:《悪を射る一撃/ranged smite evil》

ドワーフクレリック:《巨人を討つ一撃/Smite giants》

ジャスティシア・オヴ・ティア:《無秩序を討つ一撃/Smite Anarchy》

スカー・エンフォーサー《敵を討つ一撃/Smite Enemy》

ディヴァイン・チャンピオン:《異教徒を討つ一撃/Smite Infidel》

ハンター・オヴ・ザ・デッド:《アンデッドを討つ一撃/Smite Undead》

プラティナム・ナイト:《悪竜を討つ一撃/Smite evil dragon》

ホーリィ・スカージ:《悪を討つ秘術の一撃/Arcane Smite》

モータル・ハンター:《定命の存在を討つ一撃/Smite Mortals》

パイアス・テンプラーまたはオーデインド・チャンピオン:《一撃/Smite》

タトゥード・モンク:獅子の刺青による《一撃/Smite》

サムライ:《気合の一撃/kiai smite》

 

適当に和訳サプリメントから抜出してみたけど……いっぱい出たね!

これほどまでに"一撃"系能力が氾濫しているD&D3版系を経験していれば、そりゃまあ同様の名称を用いた能力が被ってしまうのも無理からぬことだろう。

(というか〈只人を討つ一撃/スマイト・ヒューム〉という名からも察せられるように、ゴブスレ作中には度々D&D3版系ルール用語がそのままの形で混入。そしてそれにとどまらず、D&DのみならずT&T、ソード・ワールドシャドウラン、カオスフレア、ダブルクロスといった各種TRPGの用語や、ファイティング・ファンタジーグレイルクエストといった古典的ゲームブックのネタ多数、さらには90年代の富士見ファンタジア文庫作品、映画および原作のコナン、ウィザードリィローグライクゲーム、さらにはダンセイニから児童文学に至るまで古今東西のネタが折り重なって、まさに幻想遊戯のマーブル模様とでも言うべき様相を呈しており、これを純粋に「ファンタジー小説」として評価してよいものなのか――色々と考えさせられる作品である)

 

なおこれら"一撃/スマイト"系能力は一般に「主要能力値ボーナスを命中判定、クラスレベルをダメージに加算」といったルールで設計されていることが多い。しかし『戦士大全』に掲載された基本クラス:サムライの持つ《キアイ・スマイト》は「命中・ダメージともに魅力ボーナスを加算する」だけという内容で、レベルが上がってもダメージは一切伸びないという微妙性能であった。(正直、デザイナーを小一時間問い詰めたい

さらに余談となるが、AD&D1e OA及びAD&D2eのサムライは《キアイ・シャウト/Kiai shout》という能力により、一時的に筋力が人間の限界値まで上昇するという、なかなか豪快な仕様だった。3.5版サムライのキアイのこともあり、以前は「やっぱりアメリカ人の考えるサムライ像って、どこかズレてない?」などと思っていたものだが、若先生の漫画で「薩摩のぼっけもん」を知ってしまった今となっては、まあそういう解釈もアリだろう。と納得してしまっている今日この頃である。

アンデッドモンスター「デュラハン」はD&Dにはいないよ、というお話

*この記事は実質、以前に書いた「1986年の怪物誌」の補足となります。

 

さて、自分はずいぶんと以前に戦闘メイド「ユリ・アルファ」のキャラクター考察、あわよくば3.5eデータ化でもしようかと思い、アンデッドモンスター「デュラハン」について調査した事があったのだが、そこで知ったのは「オーバーロード発表までの全てのD&Dシリーズにおいて、デュラハンは登場していない」という驚愕の事実であった。

(*パスファインダーRPGでは『Bestiary 2』 (2010) に収録、D&D5eではサードパーティ製資料などにデータが見られる)

以前からこのブログでは「RPGに登場するモンスターの多くが、AD&D1e時代のモンスターマニュアルから影響を受けている」と度々主張してきたのだが、当然「AD&D1eを経由していないRPGモンスター」も少なからず存在するわけで、この「デュラハン」もそういったものの1つである。

まあD&D3.5版と無関係なら、敢えて「デュラハン」についてブログで取り上げることもなかろう……と、すっかりその存在を忘れていたのだが、最近になってRPGにおける「デュラハン」の登場経緯を調べ上げ、論文に書いた人がいたようで。

 

「ケルト伝承が日本で変貌-妖精「デュラハン」蘇る死者へ」

上記論文の概要では「多くの怪物が西洋TRPGを通じて受容された一方で、デュラハンは1980~1990年代のケルト・ブームを通じて翻訳から直接日本のファンタジー作品に導入」「アイルランドの詩人W. B.イェイツの著作とその邦訳に見られる誤解を起点として、ファンタジー事典や初期国産RPGが像を定着させました」と書かれているが……わかる、今の自分ならわかるぞ。

 

この論文の詳細までは読めていないが、上記の西洋TRPGとは、すなわち『AD&D1eモンスターマニュアル』(1977)であり、1980~1990年代のケルト・ブームとは主に筑摩書房から出版された『ケルト妖精物語』(1986)『ケルトの神話』(1987)『ケルト幻想物語』(1987)などの書籍群の事だろうし、和訳されたイェイツの著作で書かれたデュラハンについて紹介したファンタジー事典とは、新紀元社のTruth In Fantasy1 :『幻想世界の住人たち』(1988)であるし、像を定着させた初期国産RPGとは『デジタル・デビル物語 女神転生』(1987)及び『ファイナルファンタジーIII』(1990)、『魔導物語1-2-3』(1991)などの事である。

 

女神転生』シリーズは、そのゲームの性質上モンスターをAD&Dの系譜からではなく神話伝承から直接採用している。一方でFF3に登場するモンスターは、FF1から引き継がれたAD&D系モンスター以外のものには(以前の記事「1986年の怪物誌」でもちょっと触れたが)、日本語訳された名称などに『幻想世界の住人たち』を一部参照した痕跡が見られる。

これら初期国産RPGから世界に広まった最たるものの1つが、アンデッドモンスター「デュラハン」だったというわけだ。

 

なおピクシブ大辞典「デュラハン」の記事においては、「首無し騎士」にまつわる各種説話や、アーサー王伝説に登場する『緑の騎士』が影響したとされる異説が紹介されている。しかし、これらは『幻想世界の住人たち』にすでに記されていた内容を、そのまま引用踏襲したものだと考えられる。

こんな風に、日本のファンタジーRPG界隈には未だに「Truth In Fantasy」シリーズの影がちらついているのであった……

ワールドエネミー 『九曜の世界喰い』

世界樹ユグドラシルは、かつて無限に広がる命の葉を揺らめかせていた。だがある日、その“葉”に喰らいつく一つの影が現れた。

その魔物は死者の血に飢え、魂すらも咀嚼する異形——ワールドエネミー。その出自は、北方の神々が太古に抹消した”サーペント”にして、神すら忘れた“喰らう者”の成れの果てである。

葉が落ちるたび、死者が甦り、その屍を再び貪る影は肥え太り、やがて九枚の葉だけが残された——それこそが、九界(ナイン・ワールド)であった。

だがその影は今、九界に迫る。ワールドエネミーが“最後の一葉”を喰らうとき、我々の知る世界は終わりを告げ、全てが原初の混沌に帰してしまうだろう。

その名は、『九曜の世界喰い』という。

 


ワールドエネミー 『九曜の世界喰い』

異名:終末の口(The Maw of the End)、九界の暗影(Shadow of the Nine Realms)、ナインゴルグ(Naingorg)、屍葉の喰らい手(Corpseleaf Devourer)、混沌のサーペント(The Serpent of Chaos)


原初のリノーム  脅威度45

ヒット・ポイント 1,960 (60d12+1,240) 

高速治癒60 ; ダメージ減少20/エピックおよび特殊

混沌にして悪/超巨大サイズの竜(エルダー・イーヴル、悪、混沌、他次元界)

イニシアチブ+7 ; 知覚:擬似感覚500フィート; 〈聞き耳〉+60、〈視認〉+71 トゥルー・シーイング(超常)

オーラ:畏怖すべき存在(300フィート、難易度50)

言語:共通語、竜語、地獄語、天上語、奈落語 ; テレパシー1000フィート

アーマー・クラス 64、接触5、立ちすくみ61 (+3敏捷力、-8サイズ、+59外皮)

完全耐性:能力値ダメージ、能力値吸収、生命力吸収、クリティカル・ヒット、大規模ダメージ、[精神作用]効果、毒、病気、麻痺、石化、ポリモーフ、[即死]効果、負のエネルギー、特殊:七色のヴェール

抵抗:[火]30、[冷気]30 、[酸]30 、[電撃]30、[音波]20、[力場]10 ; 呪文抵抗45

セーヴング・スロー:頑健+51、反応+32、意志+43

移動速度:60フィート、穴掘り50フィート、水泳50フィート、飛行100フィート(標準) 、フリーダム・オヴ・ムーヴメント (超常)

全力攻撃:噛みつき(×1)+76(4d8+24さらに3d8[不浄]および2d6[猛悪]ダメージ)、および爪(×2)+74(4d8+24さらに生命力吸収5Lv)、および爪の2次攻撃(×2)+69(4d8+24さらに生命力吸収5Lv)、および尾の打撃+74(4d6+36)


基本攻撃ボーナス+60 ; 組みつき+100

攻撃オプション: つかみ強化、飲み込み、押し潰し、尾による一掃、《強打》、《薙ぎ払い》 、《かすめ飛び攻撃》、《ひっつかみ》、《突き飛ばし強化》、《尾による一撃での打ち倒し》、《尾による大旋風》、《衝撃波》

特殊なアクション:アンデッド招来、かきむしり(4d6+18)、ブレス攻撃(DC59反応またはDC50頑健)

能力値:【筋】59、【敏】16、【耐】49、【知】31、【判】32、【魅】31

擬似呪文能力 (術者レベル34、セーヴDC20+呪文Lv):

1日3回―― イセリアル・ジョーント、グレーター・ディスペル・マジック、ディスプレイスメント

1日1回―― タイム・ストップ、フォース・ケージ、インプリズンメント

習得秘術呪文(術者レベル24、セーヴDC20+呪文Lv):

9レベル(5回/日):アポカリプス・フロム・ザ・スカイ、アンバインディング
8レベル(7回/日):チェイン・ディスペル、ストームレイジ、メイルストロム
7レベル(7回/日):リバース・グラヴィティ、グレーター・テレポート、スペル・ターニング
6レベル(8回/日):シャドウ・ウォーク、ディスインテグレイト、ムーヴ・アース
5レベル(8回/日):ウォール・オヴ・フォース、コーン・オヴ・コールド、テレキネシス、ナイトメア
4レベル(8回/日):クイッケン・ブレス、ディメンジョン・ドア、エアリアル・アラクリティ、アンホーリー・ブライト
3レベル(8回/日):スロー、アーケイン・サイト、グレーター・マジックウェポン、ウィンド・ウォール
2レベル(9回/日):シンティレイティング・スケイルズ、ウィスパリング・ウィンド、グリッターダスト、サモン・スウォーム、ブラー
1レベル(9回/日):ウィングス・オブ・スウィフト・フライング(RotD)、オブスキュアリング・ミスト、エントロピック・シールド、メイジ・アーマー、メッセージ
0レベル(6回/日):ダンシング・ライツ、ディテクト・マジック、プレスティディジテイション、メイジ・ハンド、メッセージ、メンディング、ライト、リード・マジック、レジスタンス

特技:《複数回攻撃》、《強打》、《薙ぎ払い》 、《迎え撃ち》、《イニシアチブ強化》、《連撃》、《ひっつかみ》、《強化版追加hp》、《恐るべき突撃》、《尾による一撃での打ち倒し》、《尾による大旋風》、《寄せつけぬ巨体》、《衝撃波》、《かすめ飛び攻撃》、《ホバリング》、《焦点具埋め込み》、《物質要素省略》、《手練の術者》、《迅速な呪文修正》、《呪文高速化》、《擬似呪文能力高速化:グレーター・ディスペル・マジック》


技能:〈はったり〉+30、〈威圧〉+76、〈偽造〉+10、〈解読〉+25、〈鑑定〉+40、〈交渉〉+54、〈軽業〉+25、〈捜索〉+12、〈登攀〉+54、〈脱出術〉+60、〈動物使い〉+12、〈跳躍〉+51、〈平衡感覚〉+22、〈聞き耳〉+60、〈視認〉+71、〈治療〉+11、〈生存〉+13、〈精神集中〉+79、〈真意看破〉+51、〈水泳〉+84、〈知識 (建築術および工学)〉+50、〈知識 (神秘学)〉+60、〈知識 (宗教)〉+50、〈知識 (次元界)〉+50、〈知識 (ダンジョン探索)〉+50、〈呪文学〉+32、〈情報収集〉+12

出現環境世界樹の根元

編成:単体


このおぞましき獣は、悪しき存在の中でもとりわけ最悪の部類として古くから噂される。『九曜の世界喰い』は、宇宙の構造がまだ熱と混沌に満ちていた太古の時代、星々の狭間に生まれたとされる原初のリノームである。その属性は「混沌にして悪」であるが、より本能的・破滅的・原始的な原理で行動する。そのうろこは粘液、菌類、苔、地衣類、枝分かれした繊毛に覆われている。横たわっているとき、『九曜の世界喰い』はとてつもなく巨大な朽ちた古木のように見える。『九曜の世界喰い』はいかなる気候や地形にも順応できるが、常に世界樹の根本でとぐろを巻いている。そのねぐらはしばしばアンデッドの従者たちによって守られており、それはデス・ナイトやナイトウォーカーからヴァンパイアやリッチのような強大な不死者にまで及ぶ。これらの従者たちは、かつて財宝を求めてここに挑んだ英雄の成れの果てである。

戦闘

『九曜の世界喰い』は、自らの巣で戦うことはほとんどない。侵入者に自らの棲処を発見させないことを好むためである。代わりに脅威が接近した際は、アンデッドの僕たちを差し向けて敵の足止めを行い、能力や弱点を探る。十分な情報を得たと判断すれば、天空へと舞い上がりブレス攻撃で猛攻を仕掛ける。また戦闘前にはメイジ・アーマー、グレーター・マジックウェポン、エアリアル・アラクリティ、エントロピック・シールド、ディスプレイスメント、シンティレイティング・スケイルズ、クイッケン・ブレス、アーケイン・サイト、スペル・ターニングを使用し、戦闘中にはグレーター・ディスペル・マジック(1日3回高速化)と9種類のブレス攻撃を適切に判断して使用する。敵が麻痺や朦朧化により隙を見せた時には、押し潰したり爪で切り裂くなどして容赦なくとどめを刺す。群がる敵を尾による一掃で打ち払うのを得意とするが、牙や爪による白兵戦は、あくまで最後の手段として用いられる。


 

ブレス攻撃 (超常):標準アクションとして『九曜の世界喰い』は9種類のブレス攻撃のいずれかを、70フィートの円錐形または140フィートの直線形として放つことができる。再びブレス攻撃を行う前に1d4+1ラウンド(最低1ラウンド)待たなくてはならない。ブレス攻撃のセーヴ難易度は、DC59(耐久力より算出)である。噛みつき攻撃を行ったなら、同ラウンド中はブレス攻撃は行えない。

 

エネルギーのブレス(円錐形): [火]、または[冷気]、または[酸]、いずれかのエネルギーダメージから選択して円錐形のブレスを放つ。 範囲内のすべてのクリーチャーは、反応セーヴ(DC59)に失敗すると、36D10ポイントの各エネルギーダメージを受ける。

 

エネルギーのブレス(直線形): [電気]、または[音波]、いずれかのエネルギーダメージから選択して直線形のブレスを放つ。 範囲内のすべてのクリーチャーは、反応セーヴ(DC59)に失敗すると、36D10ポイントの各エネルギーダメージを受ける。

 

地獄の業火のブレス(円錐形):範囲内のすべてのクリーチャーは、反応セーヴ(DC59)に失敗すると、36D6ポイントの[地獄の業火]のダメージを受ける。このダメージの半分は[火]エネルギーだが、残り半分は[火]耐性を無視する邪悪な力による無属性ダメージである。また[善]の副種別を持つクリーチャーに対しては+20ダメージを加算する。

 

衰滅の瘴気のブレス(円錐形):恐ろしい瘴気のガスが1d4ラウンドのあいだその場にとどまる。範囲内のすべての生きているクリーチャーは頑健セーヴ(DC59)に失敗すると、以降の効果すべてを同時に受ける(効果は累積する):過労状態、朦朧状態(1ラウンド)、麻痺状態(1d6+12ラウンド)、耐久力ダメージ(3d6)、およびリビング・ロット(病気)に感染する。セーヴに成功したクリーチャーは過労状態が疲労状態に軽減され、耐久力ダメージは半減、他の効果は受けない。このエリアにとどまり続けるクリーチャーは、自分のターン開始時に再び頑健セーヴを行わなければならない。失敗すれば、上記効果が再度適用される(すでに発生している効果は延長されるか、二重に影響を受ける)。

この瘴気のガスは視界を著しく妨げる。ブレスの効果範囲内は軽度の視界阻害を受けるものと見なされ、10フィートを超える距離にある対象は視認困難(20%の失敗確率)となる。この効果はガスが存在しているラウンドのあいだ継続する。

 

死の風のブレス(円錐形):風と負のエネルギーで竜巻のような風として機能する。範囲内のすべてのクリーチャーは、頑健セーヴ(DC59)に成功しなければならない。これに失敗した大型サイズ以下のクリーチャーは吹き飛ばされ、超大型サイズのクリーチャーは転倒する。(それより大きいクリーチャーは風の影響を受けない)。飛行中のクリーチャーは、実際のサイズよりも1つ小さいサイズ・カテゴリーとして扱われる。吹き飛ばされた地上のクリーチャーは伏せた状態で1d10x10ft.後退し、10ft.ごとに1d4ポイントの非致傷ダメージを受ける。 吹き飛ばされた飛行中のクリーチャーは、2d10x10ft.吹き飛ばされ、2d6ポイントの非致傷ダメージを受ける。さらに悪いことに、デスウィンドの範囲内にいるすべてのクリーチャーは(風自体がどのような影響を与えたかに関わらず)36d8ポイントの負のエネルギーのダメージを受け、このダメージはその範囲内にいるアンデッドを回復させる。このダメージによって殺害されたクリーチャーは、その肉体が風によって吹き飛ばされて事実上崩壊し、まことの死(True Death)により魂は完全に消滅する。

 

混沌のブレス(直線形):混沌のエネルギーの渦により因果律が乱れる。範囲内のすべてのクリーチャーは頑健セーヴ(DC59)に失敗すると、以降の効果のうち1d4つをランダムに受ける:混乱状態、石化状態、減速(2d20ラウンド)、別次元への放逐(ランダムに決定)、歪曲(体がねじれて能力値がランダムに交換)、老化(1d20年)、次元迷宮(メイズ呪文に準拠)、時間停滞(テンポラル・ステイシス呪文に準拠)、時間跳躍(1d6ラウンド後へのテレポート)

 

アンデッド招来(疑呪):1日4回。最大ヒット・ダイス30、総ヒット・ダイス68までのあらゆるアンデッド1体を招来できる、この能力は9レベル呪文相当である。

 

エピック級打撃 (変則):『九曜の世界喰い』の肉体武器攻撃はダメージ減少を克服するに当たり、エピック級武器および混沌属性として扱われる。

 

不浄なる噛みつき(超常):『九曜の世界喰い』の噛みつき攻撃が命中するたびに、対象のクリーチャーに3d8の[不浄]および、2d6の[猛悪]ダメージを与える。

 

生命力吸収(超常):『九曜の世界喰い』の爪攻撃が命中するたびに、対象の生きているクリーチャーは5レベルの負のレベルを受ける。また、与えた負のレベル1つにつき5ポイントのダメージを回復する。この回復量が『九曜の世界喰い』が受けていたダメージを上回った場合、余剰分は一時的ヒット・ポイントとして得られる。

この負のレベルが24時間以内に(レストレーション等の呪文によって)取り除かれなかった場合、対象は負のレベル1つにつき1回、難易度50の頑健セーヴに成功しなければならない。
失敗した場合、対象のキャラクター・レベルまたはヒット・ダイスが1点恒久的に減少する。


攻撃オプション

つかみ強化(変則):この能力を使うためには、超大型サイズかそれより小さい敵に噛みつき攻撃を命中させねばならない。命中したならば通常のダメージを与えるのに加え、フリー・アクションとして機会攻撃を誘発せずに組みつきに入ろうと試みることができる。組みつき判定に成功したなら、このクリーチャーは相手を捕らえたことになり、以降のラウンドに飲み込みを試みることができる。

 

飲み込み(変則):組みつき判定に成功することで、つかんだ超大型サイズ以下の敵を飲み込もうとすることができる。飲み込んだ敵は、毎ラウンド6d8+12の殴打ダメージと消化液によって6d6+6の[酸]ダメージを受ける。飲み込まれたクリーチャーは、このクリーチャーの消化器系(AC39、DR10/エピック)に60ポイントのダメージを与えることにより脱出口を切り開くことができる。外に出たなら筋肉の作用によりその穴は閉じてしまうため、他にも飲み込まれたクリーチャーがいれば、そのクリーチャーは脱出口を自分で切り開かなければならない。このクリーチャーの食道には、超大型なら2体、大型なら8体、中型なら32体、小型なら128体、超小型以下なら512体の敵を入れることができる。

 

存在喰らい(変則):飲み込まれたクリーチャーが連続して3d6ラウンドの間、脱出も救助もされなかった場合、その存在は『九曜の世界喰い』の内なる“虚無の核”へと吸い込まれ、完全に消滅する。これはスフィアー・オヴ・アニヒレイションの効果と等しいものと扱われ、これによって消滅してしまったキャラクターをよみがえらせることは神格の直接介入を除いては不可能である。 

 

押し潰し(変則):飛行また跳躍していれば、標準アクションとして敵の上に着地し、全身で敵を押し潰すことができる。押し潰し攻撃はこのクリーチャーよりサイズ分類が3段階以上小さい敵に対してのみ有効であり、身体の下に収まるすべてのクリーチャーに対して作用する。作用を受ける範囲内にいるクリーチャーは反応セーヴィング・スロー(DC50)に成功しなければならず、失敗すると押さえ込まれた状態になり、上からどかなければ次のラウンド中に自動的に4d8+36ポイントの殴打ダメージを受ける。押さえ込みを継続する場合、それは通常の組みつき攻撃として扱うこと。押さえ込まれた状態の敵は、脱出しない限り毎ラウンド押し潰しによるダメージを受ける。

 

かきむしり(変則):同一対象に2つの爪攻撃を命中させた場合、自動的に4d6+18ポイントの追加ダメージを与える。

 

ひっつかみ(変則):爪か噛みつき攻撃を命中させたなら、つかみ強化の特殊攻撃を持っているかのように組みつきに入る試みを行うことができる。自分より3段階以上サイズ分類の小さなクリーチャーを捕らえたなら、圧搾することにより毎ラウンド自動的に噛みつきか爪のダメージを与えることができる。ひっつかまれた敵は口で捕らえられているのなら、そのクリーチャーのブレス攻撃に対しては反応セーヴィング・スローを行うことができない。
クリーチャーはひっつかんだ1体のクリーチャーを、フリー・アクションで落っことすか、標準アクションで放り投げることができる。放り投げられたクリーチャーは1d6×10ft.飛び、飛んだ距離10ft.ごとに1d6ダメージを受ける。クリーチャーが飛行中に、ひっつかんだ敵を放り投げたなら、敵はこのダメージか落下ダメージのうち、どちらか大きい方を受ける。

 

恐るべき突撃(変則):『九曜の世界喰い』は突撃時、全力攻撃を行える。

 

尾による一掃(変則):『九曜の世界喰い』は標準アクションとして、尾を振り回して攻撃することができる。このクリーチャーの接敵面の縁にある交差点の1つから、いずれかの方向に広がる半径40ft.の半円形の範囲に作用する。一掃の範囲内にいる、このクリーチャーよりサイズ分類が4段階以上小さいクリーチャーが作用を受ける。尾による一掃は自動的に2d8+36ポイントのダメージを与える。作用を受けたクリーチャーは反応セーヴィング・スロー(難易度64)を行うことができ、成功すればダメージを半減できる。

 

尾による一掃での打ち倒し(変則):『九曜の世界喰い』の“尾による一掃”攻撃に対するセーヴィング・スローに失敗したクリーチャーは、全ダメージを受けるのに加え、打ち倒されて伏せ状態となる。

 

尾による大旋風(変則):『九曜の世界喰い』の“尾による一掃”攻撃は、“尾の打撃”の間合いに等しい半径を持つ円形の範囲に作用する。

 

寄せつけぬ巨体(変則):『九曜の世界喰い』が機会攻撃に成功した場合、対象が機会攻撃を誘発する以前にいた場所へと5フィート押し戻すことができる。機会攻撃を命中させた後に、『九曜の世界喰い』と敵とで対抗【筋力】判定を行なうこと。敵よりサイズ分類が1段階大きいごとに+4のボーナスを得、機会攻撃で与えたダメージごとに追加で+1のボーナスを得る。この対抗判定に勝てば今までいた場所へと5フィート押し戻される。『九曜の世界喰い』が押し戻した敵は、このラウンドの間それ以上移動することはできない。

 

衝撃波(変則):『九曜の世界喰い』は全ラウンドアクションとして、尾で固い地面を打ち、接敵面から発して種族HD数×5ft.(300フィート)だけ届く衝撃波を作り出すことができる。この半径内にクリーチャーが何体いるかに関わらず1回だけロールを行ない、“突き飛ばし”攻撃を行なうこと。半径内のクリーチャーはすべて【筋力】判定を行ない、結果を『九曜の世界喰い』のロールと比べる。対抗判定に失敗した者は打ち倒される。
部分的にでも衝撃波の範囲内にある建造物や装備中でない物体は1d4+24ダメージを受ける。


飛行能力(超常): 『九曜の世界喰い』は翼を持たないにもかかわらず飛行100フィート(機動性:標準)の移動速度を持ち、これは超常能力である。戦闘時にはエアリアル・アラクリティ呪文(飛行速度+30フィート、機動性1段階上昇、ACと反応セーヴに+1回避ボーナス)及びウィングス・オブ・スウィフト・フライング呪文(竜であれば飛行速度+40フィート)により、これは飛行170フィート(機動性:良好)となる。

 

ダメージ減少(変則):『九曜の世界喰い』のダメージ減少は特殊であり、1ラウンドごとに、エピックおよび善、エピックおよび秩序、エピックおよびアダマンティン、エピックおよび冷たい鉄、エピックおよび銀、と順繰りに変化していく。

 

七色のヴェール(超常): 『九曜の世界喰い』は上記データのエナジー抵抗に加え、[火]、[冷気]、[酸] 、[電撃]、[音波]、[力場]のうちどれか2つに完全耐性を得る。これは1d4ラウンドごとにランダムに変化する。

 

フリーダム・オヴ・ムーヴメント (超常):呪文と同様だが、常時起動である。

 

トゥルー・シーイング(超常): 呪文と同様だが、常時発動である。

 

ヒット・ポイント最大化 (変則)『九曜の世界喰い』は各ヒット・ダイスにつき、最大のヒット・ポイントを与えられる。

 

『九曜の世界喰い』はワールドエネミーとして、エルダー・イーヴル(太古の邪悪)の副種別を持つ。

エルダー・イーヴルの副種別:エルダー・イーヴル(太古の邪悪)は災厄の特性/Malefic Properties(超常)を持つ。

アンチ・マジック・フィールドは狭い範囲であればその効果を抑えることができるが、そのためにはエルダー・イーヴルの呪文抵抗を克服するために術者レベル判定に成功する必要がある。

ディスペル・マジックとグレイター・ディスペル・マジックは災厄の特性に対して効果を持たない。

災厄の特性は『九曜の世界喰い』のパワーに応じて、世界全体に影響を及ぼす。

ヒット・ダイス:効果半径
15以下:10マイル
16-30:100マイル
31-50:1,000マイル
51以上:全世界

 

異端の秘密/Anathematic Secrecy(変則):『九曜の世界喰い』に関する情報を占術呪文により神格から得ようとすると、常に失敗する。

 

占術妨害 (変則):ノンディテクション呪文と同様だが、常時発動である。

 

まことの死(超常):この特性を持つエルダー・イーヴルの存在は、生きているクリーチャーの魂を弱め、死に際に失われるようにする。

効果:災厄の特性の領域内で死亡したクリーチャーは永遠に死亡する。その魂はアウター・プレーンに渡ったのではなく、肉体とともに滅んだのだ。さらに[即死]効果を持つすべての呪文と疑似呪文応力は術者レベル+4で唱えられる。この能力は常にアクティブである。

 

神格発狂(超常):神格ランクを持つすべての[他次元界]副種別を持つ来訪者が『九曜の世界喰い』の周囲100マイル以内に近づいた場合、インサニティ 呪文と同様の効果を受ける(セーヴ無し)。彼らのアクションはランダムロールで決定され、狂気のクリーチャーが術者を攻撃する結果が出た場合、神格はエルダー・イーヴルを除く至近のクリーチャーを攻撃する。

 


破局のサイン:ホーリッド・ブライト

この兆しは、ゆっくりと世界を死へと導く。
生き物は不妊となり、もはや子をなすことはない。
獣は病み、やがて死に絶える。
植物は枯れ、あるいは腐敗し、病は荒れ狂って広まり、その忌まわしき触れによって万物を堕落させてゆく。

微弱 :すべての病気に抵抗するセーヴDCは5上昇する

中等度:微弱と同様だが 普通の植物が枯れ始める。毎日の開始時に、すべてのクリーチャーはDC15の頑健セーヴに成功しなければならない。2回目のDC15頑健セーヴに失敗した動物または植物タイプのクリーチャーは、その日1d3ポイントの耐久力ダメージを受ける

強力:あらゆる病気に抵抗するためのセーヴDCが10増加する。毎日の開始時に、すべての生物はDC20の頑健セーヴに成功しなければ、その日の間吐き気を催す。セーヴに成功した場合、そのクリーチャーは代わりに病気になる。2回目のDC15の頑健セーヴに失敗したクリーチャーは、その日1d3ポイントの耐久力ダメージを受ける;動物または植物タイプのクリーチャーのセーヴDCは20である。

圧倒的: あらゆる病気に抵抗するためのセーヴDCが20増加する。各日の開始時に、すべての生物はDC25の頑健セーヴに成功しなければ、1d6ポイントの耐久力ダメージを受ける。

 

疫病:LIVING ROT
恐ろしい疫病の兆候が現れると、新たな病気が現れ、野火のように土地全体に広がる。リビング・ロットは新たな疫病の一例である。伝染病の詳細についてはDMGを参照。この病気は犠牲者の皮膚に膿を含んだ水疱を噴出させ、やがて破裂して血まみれのクレーターを残す。肉は腐って骨から剥がれ落ち、内臓は傷口から突出する。罹患者は自らの身体が腐敗する耐え難い悪臭に包まれる。

感染: 摂取、吸入、傷害、接触。基本セーヴ:頑健DC15(この数値はサインの強さによって変化する)。

潜伏: 1日。ダメージ 1d4 筋力、1d4 耐久力*、1d4 判断力、1d4 魅力*

*ダメージを受けた場合、感染したクリーチャーは別のセーヴィング・スローに成功しなければならない。

 


デザイナース・ノート:『オーバーロード』におけるワールドエネミー、『九曜の世界喰い』の存在は、「世界樹を喰らうもの」として北欧神話のニーズヘッグがモデルになっていると思われる。
今記事ではこの点を考慮に入れ、D&D3.5版でのクリーチャーデータ化を試みた。

 

D&Dにおけるニーズヘッグ:D&Dシリーズ各版ではオリジナルD&Dの頃からすでに世界各地の神話的存在をデータ化再現し、サプリメント(追加ルール本)として出版するのが恒例行事となっているが、その中でも北欧神話の神々は常に重点的に扱われてきた歴史がある。

AD&D1eの次元界設定本『Manual of the Planes』、2e『Planescape』を経てD&D3版では《大いなる転輪》と呼ばれる宇宙観が構築されるのだが、その中に北欧神話の世界観や神々(パンテオン)、さらには複数の次元界を貫く存在として世界樹ユグドラシルも組み込まれていった。

そんな状況の中ニーズヘッグはどうだったかというと、何度か言及されることはあるもののクリーチャーとしてデータ化までは至らない、といった状況であった。

しかし3.5版シナリオ『Demonweb Pits』には、世界樹の根本でのランダム遭遇に「ニーズヘッグの血を引く竜」(脅威度20のリノーム)が含まれており、過去の記述と併せてD&Dにおけるニーズヘッグの種族はリノーム(翼を持たない原始的な竜)で間違いないみたい。

どうやら《大いなる転輪》では、いまだに鳥と蛇が世界樹の上と下で対立しているようだ(笑

以上を踏まえ、『モンスター・マニュアルⅡ』記載の強大なリノーム「死体を引き裂くもの/Corpse Tearer」(脅威度28)、各種エルダー・イーヴル、タルタリアン・ドラゴン、タイタン変動重力源(トップ2)、混沌のサーペント(*band)などをインスピレーション元として『九曜の世界喰い』を作り上げた。

自分の厨二精神と3.5版知識をフル稼働させデザインした、渾身のクリーチャー・データです。ぜひ戦ってみてください!

(対30Lvキャラクター6~8人ぐらいを想定、レイド戦で対多人数の場合は招来アンデッド追加で難易度調整)

 

参考文献:『Deities & Demigods』、『Epic Level Handbook』、『ドラコノミコン』3.5版、『モンスター・マニュアルⅡ』3.0版、『Elder Evils』、Web記事『邪悪のエッセンス/Essence of Evil』