Tomb of the Overlord

オーバーロード 元ネタ考察 備忘録

「聖王国の聖騎士」描写から見るルール その5

〈憤怒の魔将〉について

書籍13巻234pの呪文能力や耐性などから見るに、D&D基本ルールに載っている最高位デヴィルの《ピット・フィーンド》Nethackで言うとこの穴の悪霊)にかなり近い感じ。
*PRDJでのデータはココ

3.5版ピット・フィーンドの種族ヒット・ダイス18、脅威度20を無理やりオバロ換算すると種族Lv63、難度210程度になる。憤怒の魔将はLv84とのことなので足りないけど、種別:来訪者は後の版になるほど強化され、5版のデータでは24HDと3.5倍すればLv84にぴったり。(ただし5版では呪文能力がお寒い限りでウィッシュも使えない。)あと3.5版には無いが、4版のピット・フィーンドは火のオーラを持っている。

 

"〈完全不可知化〉を発見する方法はあるのだが、プレイアデスでアイテム以外の手段を持っているのはルプスレギナだけだろうし、魔将は持っていないはずだ"

「呪文 その17」でも書いたが、完全不可知化を見抜くには《トゥルー・シーイング》呪文(ウィザード6Lv、クレ5Lv、ドルイド7Lv)が必要である、まあルプスレギナなら習得できてるレベルだろう。
それと上位の来訪者(デーモン、デヴィル、天使など)はトゥルー・シーイングを常時発動標準装備してるものと長年思い込んでいたが、ピット・フィーンド含むデヴィルは持ってない奴の方が多かった…

 

追記:"〈不可視化〉なら発見できるわ!でもいない!"

D&D3版系の粘体は種族能力として《擬似視覚》を持つ為、ある程度の近距離ならば呪文やアイテムの補佐が無くとも不可視化や隠れ身、視認困難を自動で見抜く事が出来る。
(このシーンより前にソリュシャンはルプスレギナに魔法を掛けてもらっている描写があるで、その時に〈透明化看破〉能力を得た可能性もあるが)
またオバロでは特典「プロローグ 上」でヘロヘロ(スライム種)について同等の能力の説明がなされていた。
(擬似視覚、非視覚的感知についてはココココでも触れているので参考に)

 

 〈魂と引き換えの奇跡〉
"ユグドラシル時代は第八位階までのどのような魔法までも一度だけ発動可能という能力だった。"

この点はほぼD&D3版系におけるウィッシュ呪文の効果と同一である。今回のコレをD&D的に表すなら「擬似呪文能力のウィッシュを使ってトゥルー・シーイング呪文の効果を再現した」となる

 

"悪魔が魂と引き換えに願いをかなえるという寓話が元になったその力は、奇跡を体現する。"

D&Dで願いを叶えてくれる悪魔といえばピット・フィーンドの他にはデーモン:グラブレズゥの持つ能力及び設定が相当する。
他にも「ビンの中に封印された悪魔を出してあげたら、お礼に願いを叶えてくれた」(マジックアイテム:アイアン・フラスク)やアラジンと魔法のランプ(ジン、イフリートの持つ限定的なウィッシュ)など、おとぎ話再現の為にあるようなルールやマジックアイテム(空飛ぶ絨毯や惚れ薬とか)もD&D3版系には多い。

これらはバランスを取った上でゲームシステムに落とし込むのが難しいためか、ボードゲームライクなD&D4版では多くが無くなってしまった…5版ではそこらへんも復活したんじゃろうか?(ルルブまだ買ってない)

 

追記:電源系RPGにおいては(他のD&Dを原典とするモンスターに比べ)影の薄いピット・フィーンドではあるが、少なくともD系卓ゲーマー及びローグライクゲーマーにとってピット・フィーンド=赤くて強い悪魔というのは広く知れ渡ったもの…と長らく思い込んでいたわけだが、話を聞くにどうやら古参のアナログゲーマー&ファンタジーマニア全ての者がそういった認識というわけではないようだ。

80年代に和訳され日本でもゲームブック・ブームを引き起こしたファイティング・ファンタジー・シリーズ。
その内の1冊『死のワナの地下迷宮』にもピット・フィーンド(地底怪獣/穴悪魔)というモンスターが登場し、それは下記のようなイラストとなっていた。

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…どう見てもティラノサウルスである、これは一体どうしたことなのか。

咆哮の主、窖の怪物の正体見たり!的な演出から付けた名称なのか?
それとも当時、十分に普及していたD&Dの知識を持つゲーマーに対するミスリード&サプライズを狙ったものなのか…
35年前の海外ゲーマーの感覚など今となっては知る由もない。

 

追記:『モンスター事典』〈原題:奈落の底から〉での解説によると、「死刑を宣告された囚人の中から選ばれた闘士が大きな穴の中でこの怪物と闘うという、血に飢えた観客を喜ばせるための競技が名前の由来」だそうだ。