Tomb of the Overlord

オーバーロード 元ネタ考察 備忘録

D&D(←この時点で要注意)というお話

みんな映画『ダンジョンズ&ドラゴンズ:アウトローたちの誇り』は見た?
すっごく面白かったよね、特に吹き替え版がサイコー!
もちろん、くがねちゃんもツイッターで話題にしていたよ。
さあ未視聴の人はすぐにチェックするんだ、今ならアマプラでレンタル500円!
と、オバロファンにも一通りアピールしたところで本題に。


さて、この映画の評価とか感想を色々ググっていたのだが、「D&Dかと思ったらAD&Dだった」といったコメントを2、3見かけることがあった。

いや……まあねぇ、言いたいことはわかるよ、うん。

言わんとするところを正確に書くとすれば「クラシックD&D4版(1985年和訳)で使われていたミスタラ・キャンペーンセッティングかと思って見に行ったらAD&D2版(1991年和訳)で主流のフォーゴトン・レルム・キャンペーンセッティングだった」となるんだろうけど。

オレちょっと詳しいよアピールにしてもこれじゃあ大半の人には伝わらないだろうし、かといってそれを理解できる人には「30年以上前に和訳された本からの狭い知識によるやや的外れな書き込み」とわかっちゃうんだよ。AD&D系でもフォーゴトン・レルムが標準世界とは限らないし、同じレルムでも映画の舞台は2ndの頃から数百年(130年程でした)経ってるし…何より今更ミスタラは無いでしょ。


上記のようなD&DとAD&Dが別物と理解している*1のはまだいい方で、ネット上のファンタジー雑語り、D&D系に関する蘊蓄などの書き込みを見ると、D&D系全般、オリジナルD&D、AD&D1st、クラシックD&D4版、現在のD&D5版など、それぞれの違い、出版時期、影響などについて混同してしまっている物が多数見られる。

D&D系の雑学については版やキャンペーンセッティングについて書かれていない時点で、その情報精度を疑ってかかる必要があるよというお話でした。
(まあ自分もD&D3版系で頭が凝り固まった人間なので、偉そうなことは言えないのだが)

 

以下、ざっくりとした版の説明早見表

"元祖" "最初のRPG" "白箱"→オリジナルD&D(1974)

"あらゆるRPGの源流" "ザナドゥファイナルファンタジーBASTARD!!の元ネタ"→AD&D1st(1977~1979)

"新和D&D" "赤箱" "ミスタラ" "ロードス島戦記リプレイ初期" "レベル最大36Lv" "キュア・オール" "エルフは職業"→クラシックD&D4版/BECMI(1983)

"新和のAD&D" ”多種多様なワールドセッティングを展開” "バルダーズ・ゲート1及び2"→AD&D2nd(1989)

"文庫版D&D"→クラシックD&D5版/Rule Cyclopedia(1991)

"オバロの元ネタ" "ゴブスレや最果てのパラディンにも影響" "エベロン" "ネヴァーウィンター・ナイツ"→D&D3rd及び3.5版(2000,2003)

"現在のD&D" "ダンドラ" "バルダーズ・ゲート3"→D&D5版(2014)

 

追記:
ツイッター上にて「ウィザードリィはD&DやAD&DがベースだけどD&Dに種族による能力修正は無かったからエルフが他種族より体力面で劣るのはWizが発祥」といったやり取りを見かけた。
見事なまでのWiz談義あるある勘違い、ビオ略激おこ案件である。

ウィザードリィ開発当時のRPG主流であったAD&D1stにおける種族:エルフは「敏捷力/Dex+1、耐久力/Con-1の能力修正」「弓、ショートソード、ロングソード使用時、命中判定に+1」「マジック・ユーザーを中核としたマルチクラスが可能」「赤外線視能力」「隠し扉の発見にボーナス」「隠れ身不意打ち成功率にボーナス」「睡眠と魅了の呪文に対して抵抗力を持つ」「グールの麻痺攻撃に対する耐性」「レイズ・デッド呪文では蘇生できない」といった特徴を持ち、また「エルフは人間ほど頑丈ではない」とも記述されている。
これらは80年代に数百万いたとかいうAD&Dゲーマーの常識、つまるところRPGエルフ設定の不文律となっていたものだ。

むしろウィザードリィ独自の改変で日本のRPGエルフ観に影響を与えたものといえば筋力ペナによる戦士適正の無さと、知力及び信仰心ボーナスによるさらなる術者適正の部分である。

*知力ボーナスのあるエルフという点については『Monster Manual』記載のサブ種族「グレイエルフ」の影響もあるかと思ったが、「チェインメイルと盾で身を固め、全員が剣で武装している」と記述されている為、やはりNPCエルフ遭遇データと同じくグレイエルフも魔法戦士(ファイター/マジックユーザーのマルチクラス)を主に想定していたようだ

*こちらにも書いたが、ウィザードリィ#1開発時のAD&DルールではエルフはNPCしかクレリックになれないので、高い信仰心ボーナスによる僧侶適正という点もウィザードリィ独自の特徴

 

というか、そもそも「D&DとAD&D」って表記自体がマズいよねぇ。Wizardry#1(1981)のベースとしての文脈ならオリジナルD&DおよびAD&D1stとしなければならないのだが、新和D&Dのみの経験者にとってはこれが無自覚でクラシックD&D4版(1983)とAD&D2nd(1989)になってしまい、ウィザードリィの元ネタ談義としては前提から破綻しているという……

*1:おそらくオリジナルとクラシックD&D系、AD&D1stと2ndの違いは分かっていない