つい最近、マジック:ザ・ギャザリングのアップデートにてラクシャーサ関連カードのクリーチャータイプから「猫」のカテゴリが外される事になり、そちら界隈では色々と話題になっているようだが、当然ながら「そもそもヒンドゥー神話のラクシャーサは猫じゃ無くね?」といった疑問もあがっていた。
MTG(あるいはファイナルファンタジー)のラクシャーサが何故トラの頭を持つ獣人タイプのモンスターなのか?
まあこのブログを読んでる人の大半が察しているとおり、結論から言うと例によって「AD&D1stモンスターマニュアルでそう書かれたから」で済んでしまうのだが、もうちょっと踏み込んだ起源については昔一通り調べたことが有るのでついでに書き留めておく。
ガイギャックスが語るところによれば*170年代に放送された特撮ホラーテレビドラマ『事件記者コルチャック/ナイト・ストーカー』のファンであり、これの11話「地獄をさまよう悪霊ラクシャサ」 (Horror in The Heights / The Rakshasa)に登場するものがD&Dラクシャーサの元ネタになったとの事。
現物を見てもらった方が早いだろう、YouTubeの動画はここ
*自称ブラフマーの使者である怪しいインド人から貰ったクロスボウで獣人…というよりはチューバッカみたいなラクシャーサを射殺すコルチャック
上記のシーンをインスピレーション元として「古代インドの悪霊」「幻術の達人」「ESP(思考探査の呪文)を使い友好的であると錯覚させる」「魔法的強化の無い武器では傷つかない」「クレリックの祝福を受けたクロスボウ・ボルトに当たると死ぬ」(ヴァンパイアの弱点みたいでいいアイデアだと思ったらしい)といった設定が生まれ、そしてモンスターマニュアルにてデイヴ・トランピアによるイラストにより「パイプタバコを吹かすトラ人間」のビジュアルが与えられた。
(グーグルイメ検で見てもらえばわかるように、MMに記載されたトランピア作のイラスト中でも傑出した作品である)
なお「祝福されたクロスボウボルトで一撃死」の設定はD&D3.0版までは残っていたが、さすがにシステマチックな3版系のルール処理にそぐわないとデザイナーが判断したのだろう、D&D3.5版では《ダメージ減少15/善および刺突》(善属性の刺突武器以外ではダメージが15減る)へとこれが改変され、また現在のD&D5版でも似たような物理耐性をラクシャーサは持っているようだ。
RPGモンスターの定番設定が実際の神話伝承と食い違っていた場合、とりあえずガイギャックスのやらかしを疑え、というおなじみのアレでした。
*1:EN Worldフォーラム Q&A with Gary Gygaxスレ2005/7/9 #3,994