Tomb of the Overlord

オーバーロード 元ネタ考察 備忘録

はじめに

このブログは丸山くがね氏の小説「オーバーロード」について、
そのユグドラシル世界に大きく影響をあたえているであろう、ダンジョンズ&ドラゴンズ3.5版(以降D&D3.5e)視点から、元ネタを考察していく個人的な備忘録です。
オーバーロード」内からのものは〈山カッコ〉、D&D3.5e出典のものは《二重山カッコ》で表記しています。
またD&D3.5eについては、特に記載ない限り基本ルールブック3冊(PHB,DMG,MM)からの出典です。

自分は3版系で邦訳された分はほぼ全てルールブックを揃えていますが、なにぶん物量が多く未訳まで含めると甚大な量となります。また丸山くがね氏がプレイ経験を明言しているクラシックD&D(赤箱)、ダンジョンズ&ドラゴンズ4版、ソードワールドガープスなどについての知識はほとんどありません。
そのため勘違い、的外れな考察もあるかもしれませんがそこはご了承ください。

追記ログ

2022/7/7 「聖王国の聖騎士」描写から見るルール その2
アレンダーグロストについて追記

2022/6/19 3版用語の基礎知識:最果てのパラディン編
グリース呪文について追記

2022/5/16 オバロの魔法名は厨二成分が足りない
原文での呪文名を追記

2022/5/2 甘い薫りは命取り
コナンの著作権に関して補足注釈

2022/4/30 一橋 ゆりえ
ちょっと追記

2022/4/27 ゴブリンの容姿の変化と、アウラのお肌
D&Dにおけるダークエルフ描写変遷まとめ

2022/4/14 ファンタジーRPG必読作家リスト
バローズ、ハロルド・シェイなどに追記

2022/4/12 呪文その13 サキュロント特集
ミラー・イメージ対策について追記

2022/4/10 クラス考察 その4
クラス:シーフ、注釈など少々整理追記

2022/4/1 呪文 その2
ファイアーボール及びライトニング・ボルト呪文の原型について追記

2022/3/6 呪文 その1
マジック・ミサイル呪文の起源について追記

2022/2/10 バハムート顛末記
バハムートとGrand Master of Flowersの接点について追記

2022/2/1 キャラクター強さ考察 レベル
魔法習得レベル比較表を追記

2022/1/8 クラス考察 その4
D&Dモンクの起源について追記

2021/12/29 クラス考察 その2
ドルイドの武器について追記

2021/12/18 "闘鬼" ゼロ
モンクの素手による遠隔攻撃と与太話を追記

2021/12/17 HP(ヒットポイント)とは何か
ヒーローについて注釈を追記

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二刀流レンジャー ~ダークエルフと共に歩んだ40年~

クラス:レンジャーの能力、二刀流。
D&Dにおいてはもはや伝統と言っても良いほどの歴史ある標準能力なのだが、これは何時から始まったものなのか?
レンジャーは指輪物語の野伏が原型とは言うが、そもそもアラゴルンは二刀流してないし…

まあ海外サイトなら初期D&D考察ブログとか多いし、調べれば纏まった情報が出てくるだろうとググって見たものの、そんなものはない…でも調べ始めてしまったからには…どうするブラックジャガー!?

というわけでえらく調査に時間がかかってしまったものの、おおむね3版系までの流れは把握できた。せっかくだから見て下さい。


1975年 TSR季刊誌『The Strategic Review』第2号のオリジナルD&D記事
ジョー・フィッシァー(ガイギャックスのグループで遊んでいた高校生ゲーマー)考案のクラス:レンジャーが掲載される

主な特徴
レンジャーになるには複数の高い能力値が必要
秩序属性限定
1レベル目はヒット・ポイント決定ダイスを2回振る
武器防具に装備制限無し
(AD&D2nd以降のような軽装縛りが無い)
追跡スキル
不意打ちしやすく、されにくい
8レベルからクレリック及びマジック・ユーザー呪文の習得
身に付けて運べる量以上の財産は所有できず、余分は寄付する
8レベルになるまで部下や従者を雇う事は出来ない
ジャイアント・クラス(コボルドジャイアント)に対する近接攻撃へのダメージ・ボーナス
*対ジャイアントクラス特効は1Lvあたり+1のダメージボーナスと、インフレが進んだ後の版と比べてもとても大きいものであり、OD&DやAD&D1stではぶっ壊れ能力と言える。また1Lv時に2Lv分のHPというのも、低レベル帯で簡単に押っ死ぬD&Dにおいては大きな利点。

*レンジャー・ナイト(9Lv)になるまでは比較的弱いとデザイナーは言ってるが、とてもそうは思えない。パラディンに似た縛りこそ多いもののファイティング・マン(後のファイター)の上位互換に見える。


1978年 AD&D1st『Players Handbook』
AD&D1stファイターのサブクラスとしてクラス:レンジャーの掲載

オリジナルD&Dからの主な変更点は
ジャイアント・クラスの拡張(バグベア、エティン、ジャイアント、ノール、ゴブリン、ホブゴブリン、コボルド、オーガ、オーガ・メイジ、オーク、トロール
いずれかの善属性限定(AD&Dで秩序-混沌、善-悪の2軸に増えた為か)
8レベルからドルイド及びマジックユーザー呪文の習得
種族は人間とハーフエルフに限定

*AD&D1st基本ルールではエルフはクラス:レンジャーになれない。これが古参ゲーマーからレゴラスは弓ファイターであってレンジャーでは無い、と言われる所以の1つである。


1979年 AD&D1st『Dungeon Masters Guide』
二刀流ルールの登場
逆手武器はダガーかハンドアックでなければならない、高い能力値[敏捷力]があれば命中ペナルティが減少する

*対ジャイアントクラス特効とのシナジーが強力であり、レンジャー+二刀流の組み合わせはここから普及したものと思われる


1981年 モンスターデータ集『Fiend Folio
ドラウ(ダークエルフ)のモンスターデータ掲載
黒い肌に白髪、呪文抵抗、アダマンタイト製の武器防具(日光で劣化)、明るい光の下でのペナルティ、麻痺毒を塗ったライト・クロスボウ武装、ダンシング・ライト、フェアリー・ファイヤー、ダークネス、レヴィテーションなどの種族による呪文能力、女性のほうが男性より強い(平均ステータス高い)などなど、後の版でも基本となっているダークエルフの詳細な能力が設定される


1981年 Apple IIWizardry: Proving Grounds of the Mad Overlord』発売
クラス:レンジャーがサムライになる

*1Lvで2HDとかMU呪文習得まで再現したはよいが、ジャイアント特効も二刀流も実装できて無いんじゃレンジャーとは言いがたい。そのため装備品でクラスの特色を出す方針に切換え、これをサムライとしたのだろう。


1982年 Dragon誌68号
二刀流に使用可能な武器のリストを拡張


1985年 追加ルール集『Unearthed Arcana』
ダークエルフをプレイヤー・キャラクターとして使用するためのルールが掲載
また種族による各クラス及びレベル制限も緩和され、エルフ種ならばレンジャー14Lvまで伸ばせる様になった

「ドラウは一般に邪悪で混沌としているがPCはそうである必要はない」
ダークエルフのPCは、地中深くにある故郷から追放された者とみなされる」
「片手で扱える武器であれば、ペナルティなしに2つの武器で戦うことができる」
と、明らかにドリッズトのインスピレーション元となったであろう記述が見られる。


同誌にWeapon Specializationルールの掲載
武器専門化による命中、ダメージ、攻撃回数の強化。これによってファイターの戦闘力が大幅アップ。
またレンジャーも成長面でやや遅れるもののファイター同様にDouble Specializationまで強化する事が可能だった。

*この時点で「二重専門化二刀流で悪のデミヒューマン共をなで斬りするフルプレート着た魔法戦士、追跡もできるよ!」という最強レンジャーの伝説が完成する。


1988年 R.A.サルバトーレ著の小説『The Crystal Shard』
ダークエルフ二刀流レンジャーのヒーロー「ドリッズト・ドゥアーデン」登場、一躍大人気に。
作中で多数のフロスト・ジャイアント相手に無双する活躍を見せる、というかウルフガーも引くほどのジャイアント絶対殺すマンなのはルールに基づいた描写ゆえのものか


同年 レルム地域本『The Savage Frontier』
ドリッズトをレンジャー10Lvとして紹介、詳細なデータは無し


1989年 AD&D2nd『Players Handbook』
2ndルールのレンジャー登場、しかし大幅に弱体化。レンジャーいらない子伝説の始まりである…

武器専門化ルールがファイター専用となってしまい、レンジャーでは不可に
AD&D1stに引き続き武器防具に装備制限は無いが、スタテッド・レザー以下の軽い鎧を装備していないと特殊能力の多くが使えない為、実質軽装戦士となる
ジャイアントクラス特効は無くなり、代わりに選択した1種類の敵種族への命中判定に+4のボーナス、ナーフされすぎ!
1Lv目の追加HPダイスも無くなる
種族は人間、エルフ、ハーフエルフに限定
自然環境での隠れ身と忍び足のスキル
動物と仲良くなれる
8レベルからプリースト呪文(プラントとアニマルの領域のみ、バークスキン以外ろくな呪文が無い)の習得
スタテッドレザー以下なら二刀流時のペナルティ無し、ただし逆手は小さな武器限定
(AD&D2nd基本ルールだけではシミター二刀流のドリッズトは再現できない)

*ここにきてレンジャーへの二刀流標準搭載と相成ったわけだが、クラス説明で挙げられている代表的レンジャーはロビンフッド、オリオン、巨人殺しのジャック、ダイアナの女戦士と、弓兵多めで二刀流キャラはいない

*この後の2nd時代、追加ルールによるテコ入れが何度も行われるが、レンジャーがかつての栄光を取り戻すのには後々の世代までかかる事となる…


1996年 レルム本『Heroes' Lorebook』
2ndレンジャー16Lvとしてのドリッズトの詳細なステータスを記載。
なお最初の小説シリーズなどではカバーアートはCD&Dでおなじみのラリー・エルモアだったが、この頃は怪物画に定評のあるジェフ・イーズリー作のものが多い。ドリッズトもデコ広おじいちゃんみたいに描かれ、イケメン剣士の面影はない…あと鉢金。


1998年 電源系D&Dゲーム『バルダーズ・ゲート』
レンジャー「ミンスク」とハムスターの「ブー」登場。
筋力18/93 知力8 判断力6にバーサーク能力持ちと見事な脳筋ぷり、こいつほんとにレンジャーか?
この二人もMTGコラボカードに登場し「時を超えた英雄」「敬愛されるレンジャー」とやたらと持ち上げられた二つ名が付くように。


1999年 ポール・キッド著の小説『ホワイトプルームマウンテン』
レンジャー「ジャスティカー」登場、やっぱり主人公はレンジャーじゃなくっちゃ!(二刀流じゃないけど)
和訳も出ているのでお勧め、おもしろいよ。


2000年 D&D3rd『Players Handbook』
3.0版ルールのレンジャー登場
ヒット・ダイスはd10、良好なセーヴは頑健のみ(ファイターと同等)
技能ポイント4
能力値や属性による縛りはなくなり悪レンジャーも可能になる
ボーナス特技《追跡》
1Lvから《二刀流》および《両手利き》の特技を取得、9Lvで《二刀流強化》
中装鎧の習熟を持つが、二刀流を使うには軽装であることが必要
レベル4から少量の信仰呪文を習得
「得意な敵」として選択した種族に対して技能判定と与ダメージに+1ボーナス。
これは4lvごとに対象とボーナス値が増え20Lvで+5,+4,+3,+2,+1のボーナスを持つ5種となる。

*後の版のレンジャーと比べると、野外活動系や軽戦士としてのクラス能力が全く無い事と、得意な敵ボーナスの少なさに驚く。


2001年 『Forgotten Realms Campaign Setting/フォーゴトン・レルム・ワールドガイド』
ドリッズトの3.0版データが掲載。ファイター10/バーバリアン1/レンジャー5

*レンジャー分がかなり少なくなっているが、これは一応小説の展開に合わせたクラス構成といえる
二刀流戦士として200年くらい地下世界を戦い抜く>ファイター10Lv
地上に出てきて老レンジャー、モントリオと出会いマイリーキー信仰になる>レンジャー5Lv
蛮人ウルフガーみたいな戦い方もちょっといいかなと思う>バーバリアン1Lv


2001年 D20システムのメインデザイナーであったモンテ・クックが自サイトでレンジャー強化案PDFを公開

3lVごとのボーナス特技取得(二刀流系、弓術系、騎乗戦闘系、一撃離脱系のリスト内から)
ヒット・ダイスがd8に減少
技能ポイントが6へ増加
頑健、反応の2箇所のセーブが良好
呪文習得が少しだけ早く

*軽戦士として技能とカスタマイズ性を増した感じ、これは後の3.5版レンジャーに影響を与えたと言われているが、相変わらずクラス能力しょぼすぎである。


2003年 D&D3.5e『Players Handbook』
3.5版レンジャー登場

HP、セーヴ、技能はモンテレンジャー同様
軽装鎧までの習熟(中装鎧やタワーシールドは無くなった)
ボーナス特技《持久力》の追加
得意な敵ボーナスが3.0版に比べ倍になる。20Lvで+10,+8,+6,+4,+2
2Lvから「戦闘スタイル」二刀流か弓術のどちらかを選択できるようになる、これは6Lvと11Lvでさらに強化される
4Lvから「動物の相棒」ドルイドレベル1/2相当なので弱い。まあ替えの利く騎乗、挟撃要員がタダで手に入ると思えば…
野生動物との共感、森渡り、迅速なる追跡、身かわし、カモフラージュ、影隠れといった野外活動や斥候としてのクラス能力を多数追加。
呪文についてはサプリメントで強力なレンジャー専用バフ呪文がいくつか追加されたが、それらにアクセス出来るほどレンジャーレベルは上げない人が大半であった。

*やれることが増え3.0版のようなしょぼくれた感じは無くなり、弓術レンジャーならばうまく立ち回ればかなりの活躍を期待できるが、二刀流はやはり弱い。というかこれ1,2Lvを生き残れないのでは…敏捷力を切っても二刀流系特技を取得できるのはうれしいが、敏捷切った盾無し軽装が前に出たら簡単に死ぬよ!

*この頃のレンジャーはローグやファイターに2Lv混ぜた後に上級職、みたいな使われ方が大半だったが、そもそも3版系D&Dは複雑なマルチクラスで強さが発揮されるようデザインされており、「レンジャー弱い」「H.F.O弱い」と単クラスで評価してしまうのにも問題がある。
また二刀流は3.5版で複雑化したダメージ減少(物理耐性)に対処する事が難しく、近接物理アタッカーとしては「筋力上げて両手武器で強打」が強力すぎることもあり、この頃の二刀流及び軽装戦士は不遇であった。


2006年 3.5ベースのMMORPG『Dungeons & Dragons Online』正式サービス開始
DDO版レンジャー登場。
ベータ版~10レベルキャップぐらいの頃までは、紙版と大して変わらなかったためいらない子扱いされていたが、アップデートと共に強化され続け最終的に二刀流でも弓術でも強クラスとなった(みたい)。

紙版との主な違い
二刀流と弓術の両方が強化される(特技いっぱい貰える)
弓ダメージに筋力ボーナスが乗る
動物の相棒は無し

レベルアップと共に選択取得できる強化ツリー(テンペスト)では
得意な敵ボーナスが命中にも適用
二刀流時シミターを軽い武器扱い
軽い武器二刀流時ダメージを敏捷力で算出
二刀流クリティカル時ダメージアップ
とクラスデザインはやや4版アタッカー的か。

*「パーティを追放されたレンジャーがアプデで強クラスになり無双、ざまぁ」と書くと今風のネタになりそうなもんだが、当時マジでレンジャー使ってる人は素人だから入れないって言われたからね…


2009年 3版系D&D後続『Pathfinder RPG
パスファインダー版レンジャー登場。

3.5版との主な違い
ヒット・ダイスd10で中装鎧OK、前線に出れる
得意な敵ボーナスが命中、ダメージ共に適用
動物の相棒はドルイド-3Lv相当で強くなった。
身かわし強化、得意な地形、獲物、狩人の極みなどの能力追加

*3.5版レンジャーを全体的にパワーアップさせた感じ。毎レベル何らかのクラス能力を得るしまた高レベル帯に強力な能力も増え、1本伸ばしが魅力的なクラスデザインとなっている、もういらない子とは言わせないぜ!


2018年 電源系ゲーム『Pathfinder: Kingmaker』
コンパニオンの弓レンジャー「エクンダヨ」登場
悲しき過去を背負った孤高のヒーロー。その心の傷が癒される日はくるのか、はたまた復讐に生き修羅となるか…みたいなキャラ。
飛びぬけた強さ、火力とかは無いんだけど、安定した活躍と便利さというか言ってしまえばシステムに愛されてる。

まず能力値が全体的に高くポイントバイに変換すると31ポイントと、これはディフォルト主人公含めた全コンパニオン中トップである
比較的早い時期に強力な弓を拾える
キングメーカーでは「動物の相棒」が強くて便利な為これを持ってるだけで強クラス
シナリオの傾向的に「得意な敵」を生かしやすい
女性にもモテモテ、やっぱりレンジャーは人気者だね。

 

*よくある疑問、風説まとめ

レンジャー二刀流の起源はドリッズト?
→二刀流ルールが出た時点でレンジャーに使わせる風潮が現れた、つよいから。


二刀流が標準となったAD&D2ndレンジャーはドリッズト人気の影響を受けている?
→出版時期的に近すぎるので可能性は低い。3e以降の一部設定、特技などにはその傾向が見られる物もある(特技《ダブル・ソード・スタイル》の前提地域にメンゾベランザンが入っているなど)


生来の悪属性モンスターであるドラウが善属性限定のレンジャーというのはAD&Dルール的に考えられない、ダークエルフの主人公という設定は界隈に衝撃を与えた
ダークエルフ二刀流レンジャーをプレイヤーキャラとして(DMが拒否しなければ)使用するという発想は、Unearthed Arcanaを読んだゲーマーならばすぐに思いつくはず。
しかしながらサルヴァトーレは当初、蛮人ウルフガーの方をアイスウィンド・サーガの主人公と考えており、小説へのダークエルフキャラ登用に懐疑的だった編集者にも「脇役だから大丈夫」と答えているなど、成り行きとはいえダークエルフが主人公というのはかなり冒険した選択だったと言えるだろう。

ランダム娼婦エンカウンター

AD&D1st DMG192pより

娼婦との遭遇は、図々しいあばずれや高慢な高級娼婦が相手となることもあり、パーティはそれぞれの出会いを見分けることが難しくなっている。(実際には、自分の好きなように売春しているだけの踊り子や、年配のマダム、あるいはポン引きとの出会いであることもある)娼婦は通常の報酬の他に、30%の確率で貴重な情報を知っており、15%の確率で報酬を得るために何かをでっち上げ、20%の確率で泥棒である、もしくは泥棒と行動を共にしている可能性がある。どのような娼婦との遭遇があるかは、下の副表を参考にするとよい。

01-10 だらしない売女      76-85 高価な愛人
11-25 図々しいあばずれ  86-90 高慢な高級娼婦
26-35 安物淫売             91-92 年配のマダム
36-50 典型的な立ちんぼ   93-94 裕福な女衒
51-65 生意気な尻軽娘      95-98 悪賢いポン引き
66-75 ふしだらな女中    99-00 金持ちの斡旋人

高価な愛人は淑女に、高慢な高級娼婦は貴婦人に、その他の娼婦は良妻賢母に間違われるかもしれない、云々かんぬん。

 

さて、D&D5版ダンジョン・マスターズ・ガイドから売春宿が消されると聞いて真っ先に思い出したのが、かの悪名高きAD&D1stDMGの娼婦との遭遇である。
都市遭遇表を見てみると、30分ごとに100面ダイスで判定を行い日中では2%、夜間では7%の確率で娼婦/Harlotに遭遇、その中身の説明が上記の物となる。
ガイギャックスによると*1歴史小説ファンタジー小説に登場するさまざまな娼婦の言い回しをゲームでいちいち説明するのにうんざりして一種教育的な目的で遭遇表を作ったらしいが…おかげで上記翻訳も自分がGoogleを駆使してでっち上げた多くの意訳が含まれている、気になる方は原文を確認願いたい。

なお3.5版DMGでの都市部エンカウンターは修正値+20面ダイスで判定して25項目と、残念ながら如何わしさもボリュームもやや減少となってしまったが、それとは別に「冒険のアイデア百選」というボリューム満点の100面ダイスランダムイベント決定表が付いてきている。

この「冒険のアイデア百選」表は追加サプリメントでも手を変え品を変え掲載され、結局和訳されただけでも6種、つまり600もの「冒険のアイデア」が我々ゲーマーに提示されたわけだが…これらもやはりゲーマーに好評だったから増やしたと言うよりは、大量のイカれた項目を持つダイスロール表に暗い喜びを見い出すパラノイアなデザイナーの気質がその作成理由の大半だったんじゃなかろうか(その中身も「動物園作るからティラノサウルス捕まえて来い」だの「リッチを説得してマジックアイテムを作らせろ」だの「しゃべるアライグマが仇討ちのため仲間を募集」などといった無茶振りが多く目に付く)

*1:EN Worldフォーラム Q&A with Gary Gygaxスレ#7,710 なお彼の豊富な語彙を駆使した散文的──悪く言ってしまえばルール記述に向かない冗長な文体は、ファンからは愛情を込めて"High Gygaxian"と呼ばれているが、これについてはラヴクラフトにR.E.ハワード、ジャック・ヴァンスなどの作家からの影響を指摘する声もある

トールキンにまつわるガイギャックス語録

 *全てEN Worldフォーラム Q&A with Gary Gygaxスレからの引用抄訳

過去のインタビューなどでは詳細が語られることは無く、あくまで噂の範疇だったトールキン財団からの法的措置についてぶっちゃけているのが興味深い。まあこれらの発言全てを鵜呑みにするわけにはいかないが、「RPGトールキン指輪物語が元ネタ」というよくある主張がいかに短絡的なものであるかは、わかっていただけると思う

  #960

    エドガー卿の発言
D&Dのエルフをトールキンのエルフと違うものにしたのは法的な理由があったのですか、それともただ違うものにしたかったのですか?エルフの概念化についてもっと話してもらえますか?


私が『指輪物語』三部作の熱狂的なファンでないことは周知の事実だと思うので、D&Dのエルフがトールキン教授のエルフのコピーではなく、私の概念に近いものである理由のかなりの部分が説明できると思う;)

私の考え方は、どちらかというとイギリス神話をベースにしていて、ハイエルフはフランスの「フェイ」の影響を受けています。
もちろん、D&Dの環境は人間が支配的であることを前提にしています。

 

 #1,900

 S'monの発言
ちなみにJRRTの『ホビットの冒険』に出てくる大きなオークは「ホブゴブリン」(LOTRでいうところのウルク・ハイ)と呼ばれ、小さなオークは「ゴブリン」(LOTRのスナガ・オーク)と呼ばれています。偶然でしょうか?

 

JRRTが小説の中で「ホブゴブリン」という言葉を使っていたとは知りませんでしたし、少なくとも記憶にありません。もし、JRRTが大型のゴブリンを "ホブゴブリン "と呼んでいたとしたら、とても驚きです。

私が述べたように、私はゴブリンより大きいヒューマノイドの名前が必要で、その種族はすでに詳述されていたので、思い切ってAD&Dの大きい人型種族にゴブリンの小型版の名前を使いました。
トールキンがどんな理由であれ、同じことをしたのなら、それは偶然の一致です。*1

 

 #1,916

 グレイマウザーの発言
ホビット、ホブゴブリンといえば D&Dファミリーのゲーム(その他、思いつく限りのファンタジーRPG)に、どうしてオークが登場したのか、不思議に思っていました。
結局のところ、トールキン財団は「ホビット」という言葉を使わせたくなかったのです(JRRTは「ハーフリング」も使っていましたが、程度は低かったようです)。
なぜ "オーク "が選ばれて "ホビット "が選ばれなかったのか、何か思い当たることはありますか?

 

それは簡単なことです。エラン・マーチャンダイジング社のソウル・ゼインツは、トールキン財団の代理人として、TSRドワーフ、エルフ、ゴブリン、オーク、トロール、レイスなどを使うことを望まず、バルログ、エント、ホビットを使うことにも反対していたんだ。
なぜかというと残りはすべて辞書に載っており(オークは "オーガ")、D&Dが描くこれらの生物はJRRTのものと同じではなかったので、彼らはTSRバルログ、エント、ホビットをやめることで喜んで和解したのです。

ちなみに、バルログはこの中で唯一トールキン独自の名前で、"エント "は古いアングロサクソンの言葉で "巨人 "を意味するものである。JRRTの描くバルログは樹木のようで、非常にユニークであり、最も説得力があったと思います。

 

 #1,483

 cimeriansの発言

ホビット族がオリジナルゲームから削除されたのはどのような経緯だったのでしょうか?
トールキン財団からTSRに法的措置の脅迫状が送られたのでしょうか?
 それとも、もっと友好的な電話でゲームからホビット族を削除するように言われたのでしょうか?

 

TSRは、エラン・マーチャンダイジングのソウル・ゼインツ(sp?)から、トールキン財団に代わって50万ドルの損害賠償を求める書類を突きつけられました。*2
主な異議申し立ては、私たちが出版していたボードゲーム『五軍の戦い』に対するものだった。
そのゲームは、JRRTの作品の著作権が失効した後、更新される前に出版されたのだが、この作品は既得権侵害であると主張する弁護士からの手紙を私たちに渡してきたのです。
また、バルログ、ドラゴン、ドワーフ、エルフ、エント、ゴブリン、ホビット、オーク、ワーグをD&Dゲームから削除することも要求された。
バルログとワーグだけがユニークな名前だったが、私たちはホビットにも同意し、残りはもちろんそのままにした。
ボードゲームは捨てられ、その結果、この訴訟は示談で解決した。

 

#2,504

エルフの描写については、私はトールキンを見ているわけではありません。
D&Dのエルフは超人でありません。人間より背が高いわけでもなく、一般的に力が強いわけでもない。

 エルフのパラメーターについては、神話、伝説、民間伝承、おとぎ話、ポール・アンダースンの作品*3などの作家のファンタジーをインスピレーション源としています。

もちろん、開発された変種*4は教授の著作を反映しています。
結局のところ、私は彼のファンにアピールするゲームが欲しかったのです。 

 

#3,179

ロバート・E・ハワードの剣と魔法の物語には生々しい迫力を感じるが、子供たちに何度も声を出し読み聞かせた『ホビットの冒険』以外の大教授の物語には全く魅了されない。
私はヴァンス氏のキャラクター作り、説明、会話に魅了されている。
彼の著作の中では、『冒険の惑星』*5が一番好きかもしれないが、選ぶのは難しい。

 

#5,396
(ガイギャックスがコンベンションで若い女性編集者に「どうしてトールキンからドワーフを盗んだのか」と聞かれ、「お嬢さん、私がドワーフを盗んだのは、教授と同じ北欧神話からですよ!」と答えたエピソードに関する話題)

 バラクの発言
ふふ、まだおぼろげながらも彼女はなぜハーフリングがホビットに近いのかを尋ねた方が良かっただろうに。

 

ほんとうにそうだね(笑)。
もちろん私がそれらを作ったのは、エラン・マーチャンダイジングの人たちを困らせるための意図があったのだけどね ── ヘアフット、スタウト、それにトールフェロウ…*6

 

 

#3,187

JRRTの作品について短く答えます。

D&Dゲームを作ったのは売るため、できるだけ多くの消費者に届けるためで、そのためには多くの若いトールキンファンに好まれる種族を入れるのが一番だったのです。
ドワーフ指輪物語3部作の主役ではありませんが、ホビット、エルフ、オーク、バルログ、エント(もちろんアングロサクソン語で「巨人」の意)などは登場します。
だから、ゲームの売りになるように入れたんです。指輪三部作が退屈でも、『Bored of the Rings』*7は最高のスポーツだと思った。
それがどうした?ゲーマーは、好きなだけトールキン風味のD&Dキャンペーンを楽しむことができるのです。

OAD&Dゲームに登場するすべての種族とクリーチャーを注意深く分析すれば、トールキンにインスパイアされた素材の割合がいかに少ないかがわかるだろう。
もちろん、エルフはJRRTの創作とはみなしません。
ドワーフスカンジナビアとゲルマンのものであり、彼らは多くのイギリスの民間伝承の素材だからです。
教授が書いたもののうち、ホビットバルログ、エントは独自のディテールを持つものだった。

*1:ガイギャックスが今更どう言おうと当時のゲーマーはそうは思わなかったわけで、その後の設定でD&Dのホブゴブリンもウルクハイ的な戦闘集団としての性質を深めることになる

*2:1977年末、AD&D1stモンスター・マニュアルを執筆していた頃

*3:ポール・アンダースンの作品でエルフが出るとなると、やはり『折れた魔剣』か

*4:グレイエルフ、ウッドエルフ、バレーエルフなどを指していると思われる

*5:ジャック・ヴァンスのSF、アダム・リース・シリーズ

*6:AD&Dハーフリングの亜種3族、それぞれJRRTホビットのハーフット族、ストゥア族、ファロハイド族を明らかにパクった設定を持つ

*7:指輪物語のパロディー小説

バハムート顛末記

クラス:モンクの所かドラゴン関係にでも追記するつもりだったが、長くなりそうなのでここに纏めとこう。

最新のD&Dの話題というには少々遅れているがともかく、マジック:ザ・ギャザリングとD&Dのコラボで生まれたカード、伝説のプレインズウォーカー『花の大導師/Grand Master of Flowers』についてのお話です。

 

花の大導師という可愛らしい名前と周りを飛び舞う7匹のカナリア(映画『ラム・ザ・フォーエバー』でのラムちゃんを彷彿とさせる)が相まってちょっとおマヌケに見えるかもしれないが、その正体は何をかくそう(隠してない)善のドラゴンの神格バハムートとそれに従う7匹のエンシェント・ゴールド・ドラゴンであり、迂闊に手を出すとえらい目にあう。

と、カナリアラムちゃんの話はさておき、D&D系ゲーマーであっても「花の大導師って名前は何なの?あとモンクを呼び出す能力も何由来?バハムートにそんなの無いよ」と疑問に思う人が多いかもしれないがご安心、調べてみました!

で、これはなにかというとオリジナルD&Dにおけるモンクの称号、Grand Master of Flowersから始まる長い後付け設定の歴史からきている。


順を追って書くと

オリジナルD&D サプリメントII『Blackmoor』(1975)
クラス:モンクの登場、さらに最高位モンクの称号としてGrand Master of Flowersを設定、後AD&D1st『Player's Handbook』(1978)にも掲載

AD&D2ndのフォーゴトン・レルム本『The Bloodstone Lands』(1989)
イエローローズ修道院のモンクにおけるグランドマスターの称号として設定

この後わずかな記述を除き、数十年設定的にほぼ忘れ去られる(4版サイオニック本エピックレベルのギスゼライモンクやDnDオンラインのモンクエピックデスティニーぐらいか?)


今回のコラボ『The Legends of Adventures in the Forgotten Realms』(2021)で突然、人間に変身時のバハムートの呼び名として設定される。調べたところ設定初出の記事を書いたライターはジェームズ・ワイアット、3版の頃からお馴染みのあの高貴なるワイアットである。

つまり今回の意味不明な後付け設定に対する感想としては、3版全盛期の頃によく耳にしたお決まりのフレーズ、「ワイアット自重しろ」この一言に尽きる。


きれいにオチがついた所で終わってもいいのだが、今度は遡って「Grand Master of Flowers」の起源について解説する。


レベル:モンクの称号(AD&D1st PHB)

1Lv: Novice
2Lv: Initiate
3Lv: Brother
4Lv: Disciple
5Lv: Immaculate
6Lv: Master
7Lv: Superior Master
8Lv: Master of Dragons
9Lv: Master of the North Wind
10Lv: Master of the West Wind
11Lv: Master of the South Wind
12Lv: Master of the East Wind
13Lv: Master of Winter
14Lv: Master of Autumn
15Lv: Master of Summer
16Lv: Master of Spring
17Lv: Grand Master of Flowers

ガイギャックスによると*18Lv以上の各マスターの称号、これらは全て彼が幼少時よりプレイしていたゲーム「mahjongg」…麻雀の牌が元ネタとなっている。

つまり9~12Lvの東西南北は風牌が元ネタであり、13~17Lvの四季と最後の花は花牌が元ネタ、8Lvの竜はアメリカにおける三元牌の名称「Dragon Tiles」からきている。

 

さらに余談を付け加えるとD&Dのホワイトドラゴンもその発想元に三元牌があったようだ。*2

70年代初頭、ミニチュアウォーゲーム「チェインメイル」にレッドドラゴン(ステゴサウルスのプラモデルを針金とパテと厚紙の翼で改造した物)を出すのに飽きてきていたガイギャックスはドラゴンのバリエーションを増やそうと思い立った。
まず歴史的な文献伝承を調べ毒のブレスを吐くドラゴンに注目、塩素ガスは緑色をしているのでグリーンドラゴンの設定が決まった。
赤竜、緑竜とくればそこから三元牌の中/チュン、發/ハツを連想し、残りの白/ハクからもうひとつの竜族ホワイトドラゴンが誕生した、という経緯らしい。


最新のマジックザギャザリングの話題だったはずが結局はガイギャックス、それもD&Dが生まれる以前のお話まで遡るとは…いくら歴史があるとはいえ、今回はさすがに調べていてうんざりしてきたw

 

追記:なんとかバハムートとGrand Master of Flowersを繋ぐ唯一の接点らしきものが見つかった。どうやらAD&D2ndモジュール『H4: Throne of Bloodstone』において冒険者パーティを導くイエローローズ修道院守護聖人、"二度殉教せし者"聖ソラーズがイルメイター神の下僕でありながらプラチナドラゴンであるバハムート神も崇め、「ビッグ・ボス」と呼んでいたことに起因するようだ。
そんな30年前のシナリオにちょこっと書かれた設定なんて誰もわかんないよワイアット…

*1:EN Worldフォーラム Q&A with Gary Gygaxスレ#1,940

*2:The Slayer's Guide to Dragons序文、2002

オーバーロードみたいなアニメはありますか?

近頃のD&Dの話題といえば、WotCが翻訳方針を変更したことに伴いD&D5版の日本語展開が止まっちゃったり、最新のエラッタでプレイヤーズハンドブックの種族の属性まわりを「The “Alignment” section has been removed.」の一言で全部消しちゃったりと、なにかときな臭いが…

エラッタについてはまとめサイトなんかにも取り上げられて話題になったので、知ってる人も多いかと思うが、よく見るとPHBだけじゃなくダンジョン・マスターズ・ガイドのエラッタもけっこうアレだよなぁ。


狂った野望/Mad Ambition

あらがい得ぬ野望/Overwhelming Ambition.


言語不明瞭、舌足らず、どもり/Slurs words, lisps, or stutters

不自然なほど礼儀正しく話す/Speaks in an unusually formal manner.


特定の何かに対する恐怖症/Specific phobia

とつぜん疑心暗鬼に襲われる/Prone to sudden suspicion.


集団虐殺/Genocide
抑圧/Oppression

財産没収/Confiscating property
悪法/Oppressive Laws.


奴隷商人の秘密のアジト/Hidden slavers' den

盗賊の秘密の隠れ家/Hidden thieves’ den


売春宿/Brothel

演奏用の場所/Music venue

 

まあ子供もプレイするゲームってことで致し方ない面もあるんだろうけれど、3版の頃はけっこうフリーダムだったことを考えると、ずいぶんと政治的に正しい方面に進んじゃうんだなあと一抹の寂しさが。

 

といったところで本題の「オーバーロードみたいなアニメ」の話だが、Amazonプライムビデオ にて配信、今話題沸騰中の『ヴォクス・マキナの伝説』をオススメするぜ!

このアニメは元々アメリカの声優陣がD&D4版キャンペーンのプレイ動画をWebで公開、使用ルールをパスファインダーRPG、D&D5版と変更しながらも大人気となりキックスターターで資金を募ってアニメ化となった作品。

D&D系の映像化といえば映画『ダンジョン&ドラゴン』シリーズとかの嫌な記憶が脳裏をよぎる人も多いだろうが、これは大丈夫w

18禁ということもあるけどDMGエラッタもどこ吹く風、しょっぱなからエロ、グロ、ゲロの下品オンパレード!それでいて中身は王道ファンタジーでとてもおもしろい。

CGのでっかいドラゴンも、違和感なくグリグリ動いてブレスをバリバリ吐いて『ドラゴンランス』のアニメからずいぶんと進化したなあと感心することしきりである。


まあ「オバロっぽいアニメ」に何を求めるかは人それぞれだろうが(それこそ以下略)、D&Dゲーマーの「こういうアニメが見たいんだよ」という欲求に太鼓判を押してオススメ出来るものであるのは間違いない。

 

*ヴォクス・マキナのキャラクターたちはD&D5版での7Lv、オバロでいえばミスリル冒険者ぐらいになるか。