Tomb of the Overlord

オーバーロード 元ネタ考察 備忘録

ボブの話(水星の魔女とはあまり関係無い)

かっこいいキャラクターにはかっこいい名前がいる。ファイターのレグダーやローグのカーンはそのよい例で、彼らの生きている中世ファンタジー世界にふさわしいものであり、君たちのゲームに単なるおふざけではない、ふんいきや“らしさ”を与えてくれる。
レグダーやカーンの登場する冒険は、ファイターの太郎やウィザードのハナちゃんが登場する冒険とはふんいきが段違いだということがわかるだろう。

A great character needs a great name. Regdar the Fighter and Cam the Rogue have names that sound cool, suggest the ancient and fantastical world in which they live, and provide enough seriousness so that your game has the right tone and edge.
After all, an adventure with Regdar and Cam presents a much different picture from one inhabited by Bob the Fighter and Elfie the Wizard.

上記文章はD&D3.5版の初心者導入用ボックスセット『D&Dビギナーズ・セット』より、キャラクターの名前についての説明文及びその原文である。

(キャラクター創造及び世界観における名前の重要性については、この箇所以外にもダンジョン・マスターズ・ガイドなどで触れられており、「命名に関する約束事」として"ファイター太郎"と"あざみ高原のアルドロリウス・キルレイヴン"と"チビ助"が同じグループにいるのは一貫性が無くリアリティを失う、などといった注意喚起がなされている)

 

さて、3e翻訳の妙として稀に話題にのぼることもある"ファイター太郎"についてだが…

ボブが太郎なのはまだわかる。あまりに一般的でモブキャラみたいな名前、ひねりが無さ過ぎて逆に偽名っぽいというのもわかる(ここで「水星の魔女」10話のグエルに繋がるわけだ、流行りのネタにも敏感なアニメブログですよよよ)。

しかしエルフィがハナちゃん、はどうなんだろう。幼稚っぽい名前なのか、それともキラキラネームなのか。
(というか「異世界 エルフィ」でググったら、けっこうな数の作品がヒットしちゃうんですけど!)

上記名前が翻訳として適切かどうか以上に、かっこよさや雰囲気、らしさといった感覚が英語ネイティブでない自分にはとんとわからず、かつてのD&Dキャラメイクでは毎度のことながらPCの命名で頭をひねっていた。

 

そういえばホビージャパン翻訳チームの人がエルフの名前の訳語はトールキンっぽくしたとか言ってたけど、そもどういった感じがトールキンのエルフ語ぽさなのかも知らないし(正直トールキンあんまり読んでないのだ)…

思考停止でランダム名前ジェネレーターを使用し、ダイスに運命を託すのもアナログゲーマーとして正しい姿に思えるが、それで英雄にふさわしいかっこいい名前になる保証があるじゃなし。

 

ウラシマ・タノキ(戦士大全のローニン)や、カツオ・ゴールドドラゴン(無頼大全、七鴉衆頭目)は果たして中世ファンタジー世界にふさわしい名前なのか?

ボブやエルフィに比べ、レグダーやマイアリーは本当にかっこいい名前なのか?

分からぬ 全く何事も我々には分からぬ (ジャガー感)

 

 

追記:上記DMG命名に関する約束事」と同じような文章を以前にD&D系以外のどこかで読んだ記憶があり、このところ探していたのだがようやく見つけた…ボトムズだこれ。

コラム:アストラギウス銀河の名前
キャラクターには、ボトムズの世界に相応しい名前をつけてやろう。 アストラギウス銀河は、我々の住む世界の過去や未来ではないし、もちろん中世風ファンタジーの世界でもない。だから、山田とかジョンとかシュトロハイムとか、我々の世界に実在する名前をつけてやっても、いまひとつ雰囲気がでない。いちばんいいのは、適当にカタカナを組み合わせて、音の響きだけで名前を作り出してやることだ。

装甲騎兵ボトムズTRPG』(エンターブレイン刊 2001)p33より抜粋

 

このボトムズTRPG、武器個別の細かな射程区分と命中修正、装甲とダメージの算出などの戦闘関係のルール処理はTRPGガンダム戦記 一年戦争全戦闘記録』あたりが元ネタとなっているようだが、それ以上に(特にキャラクターメイキング周りに)D20システム/D&D3版系の影響が大きく見られる。

*戦闘判定用と技能判定用に分けられた計6種の能力値があり、ポイントバイで決定
*キャラクターレベル5Lvごとに追加で1つの能力値を1上昇出来る
*レベル上昇で取得する技能ポイントで技能ランクを上昇させる
*レベル上昇で追加取得できる特殊能力:異能(ほぼD&Dにおける特技/Feat)の存在
*判定の基本は 対応能力値+キャラクターレベル+クラスや異能、技能ランクによる修正+1d20による上方判定
*サンプルNPCで最も高レベルなキャラはキリコ(クエント編)の20レベル、等々。


それもそのはず、ボトムズTRPGの著者である岡田伸、楯野恒雪、桂令夫の三名はこの後、ホビージャパンD&D翻訳チームに参加し活躍することとなる人たちである、上記コラムも当時まだD&D3版が未訳だったのを良いことにDMGからパクったオマージュした部分なのだろう。

まあ結局は「適当にカタカナを組み合わせる」という、なんとも締まらない提案のコラムではあるが、中世ファンタジー世界よりかはアストラギウス銀河の方がなじみがある分、オレモダビールだのダボフィッシュといった、それっぽい雰囲気の名前を考えるのは日本のオタにとっては朝飯前だと思われる。

 

さらに追記:

●ただし、登録できる名前は4文字まで(だく点も文字になります)。
『ゆきのぶ』 など4文字以内で登録できない名前のあなたは、『ゆきのん』など勇者らしい名前を考え、登録しましょう。
●さあ、いよいよ、冒険に出発です!

ドラゴンクエスト取説『冒険の書 -これを勇者たちに送る-』より抜粋

流石ドラクエ、取扱説明書にもRPG初心者に配慮した導入が見られる。また「自分の名前でゲームできるのだ」といったアピールも微笑ましい。
なお「ゆきのん」がファンタジー的にカッコよい名前かどうかについては、当時のプレイヤー(昭和の鼻たれガキンチョ)でも意見が分かれるところであろうが、紅魔族(このすば)的センスで言えばかなり一般的な名前となるだろうし、なにより「トンヌラ」「すけさん」「もょもと」「4ひえた」などの錚々たる勇者たちの名前と五十歩百歩な点を鑑みるに、アレフガルド世界においては確かに「ゆきのん」は勇者らしい名前だと言えるだろう。