Tomb of the Overlord

オーバーロード 元ネタ考察 備忘録

「半森妖精の神人」描写から見るルール その1

下巻もすぐに控えているし、ルール関係は後回しにして種族まわりの与太話を先にしとこう。さてと……やりますかー

 

〈オーク/豚鬼〉について

豚顔オークの起源については諸説入り乱れているが、はっきりとその流れを決定づけたものといえば、やはりAD&D1st『Monster Manual』(1979)記載のデイヴ・サザーランド3世によるオークのイラストであろう。
和製RPGでオーク=豚人の不文律がまかり通っているのは、RPG自体が目新しく作成も手探りだった80年代初頭に多くのゲームデザイナーがこのモンスターマニュアルを参照したからに他ならない。
豚オーク@サザーランドはAD&D1stモンスター・マニュアル以降描かれることは無く本家D&Dにおける豚顔オークの血脈は絶たれたが*1、これが40年経った今でも和製RPGラノベファンタジーに引き継がれていることは感慨深い。

さて、D&D3.5e環境でのプレイヤー種族としてのオークはどうかというと、これは文字通り最強である。
LA0、種族HD1以下、よーするにPC1Lvからスタートできて経験値ペナルティのない種族は和訳された範囲でおよそ30種、これが未訳サプリやドラゴン誌、3.0アップデートにワールドセッティングによる差異まで含めると200オーバー(途中で数えるのをやめた)と、まさに甚大な選択肢があるわけだが、この中でオークは「筋力への修正+4」を持つ唯一無二の種族であり他は全て+2以下であった。

まあ実際のところは基本悪属性だとか日光が苦手とかPCとしては使いにくい面もあり、レベル調整値0で筋力高い種族使いたいならクラスオプションも豊富なハーフオークにしとけって意見が大半だったが。

 

追記:『ゴブリンスレイヤー』関連の記事がまとめ系サイトに載るや否やすぐさま書き込まれる荒しコメントの中には「RPGオークを豚鼻にしたのはPORKとORKをかけたD&Dルールブック改訂版のダジャレイラストがルーツ」といったコピペが含まれている事が多い。
この「D&D起源」と「ポークにかけたジョーク」が合わさった風説は恐らく中つ国Wikiのコメント欄あたりが情報元なんだろうが、ほぼ誤情報と言える。

まず「D&Dルールブック改訂版」というのは上記AD&D1st『Monster Manual』のことを指しているのであろうが(AD&D1stMM以前にも少数ながら豚オークのイラストはある)これは断じてダジャレイラストではない。

このイラストについてはガイギャックスが語っていた「イラストレーターとのコミュニケーション不全が原因」という理由が良く知られているが、後に掲示板で*2「サザーランドにオークは豚みたいな顔って言ったら、文字通りそのまんまにしちゃったよ!」という面白エピソードとしてこれを述懐している。しかしながらこの話にPORKは出てこないしそもそも何故ガイギャックスが「オークは豚みたいな顔/pig-like faces」と言ったかの理由も不明である。

この他にも豚顔オークの起源には、「ディズニーアニメ『眠れる森の美女』に登場した下っ端悪役が起源」説や「ヒルデブラント兄弟が書いた指輪物語カレンダーのイラストが起源」説などがあるが、これらがD&DすなわちRPGのオークに影響をあたえたのかどうかに関してはどれも推測の域を出ず、ただはっきりしとているのは(オークに限らずRPGのモンスター全てに言えることだが)AD&D1st『Monster Manual』の影響力がとにかく大きかった、という事実だけである。

 

〈ハーフエルフ/半森妖精〉について

ハーフエルフはエルフと人間の能力が半分ずつあるみたい。 
つまり森でも都会でも半分不自由な毎日を送る

コピペはさておき、ハーフエルフといえば不幸な生まれと相場が決まっており(偏見である。最近のはそうでもない)、幼少期より厳しい世間の荒波に揉まれた為か、D&D3.5eのハーフエルフは交渉と情報収集に+2の種族ボーナスを持つ。その他の利点はというとどれもパッとしないというか...エルフのような尖った能力修正があるじゃなし、人間のようにボーナス特技があるじゃなし、パワーを求めるならわざわざハーフエルフをPCに選ぶ必要性は無い。
一応ハーフエルフ専用上級クラスなんかもあるけど、親の血が憎い暗殺者って重いよ!...この興味深いロールに挑戦する事は君にとって良い経験となるだろう(ルールブック記述風投げやり)。

 

メカ天使
秩序属性であり神の教義に盲目的に従うその姿や裁定者としての性質からか、天使に機械的なイメージを持つものはオバロアニメ版に限らず日本のオタ界隈では古くから見られる。
(漫画BASTARD!!や、真女神転生における金子一馬デザインの天使など)
これがD&Dの天使(エンジェル)ではどうなっているかというと、その姿は「でっかいハゲ」が主流だが、おしおき天使「イネヴァタブル」などはメカヌス出身ということもあり、かなり機械的なデザインとなっている。
しかしながらこのメカメカしい@吾妻ひでおデザインは3.0版(2000年)以降からの物であり、私見だがこれには日本のアニメ漫画からの影響があったんじゃないかなぁと思う。

 

ツンゴグァ様 185p

クラーク・アシュトン・スミス著の幻想小説『七つの呪い』に登場する旧支配者、ツァトゥグァが元ネタであると思われる。クトゥルフ神話大系作品におけるツァトゥグァの設定解説云々はよそに任せるとして、ここではD&D3版系サイトに求められるだろう情報、つまりD20化されたデータを載せておく。

ツァトゥグァ 超大型サイズのグレートオールドワン
神格ランク4(半神)中立にして悪 35HD 脅威度39
領域:知識、破壊、魔術
(オバロ換算するとレベル122難度409ぐらいになる)

知識*3と魔術*4の領域が魅力的な神様だが、まーわざわざこんなの信仰しなくてもボカブでいっかぁ。誘拐エルフ君には悪いけど。

*1:3rdのオークは「猪の牙に似た下の犬歯が目立つ豚のような顔をしている」とMMにて描写されているが、イラストはそこまでストレートな豚顔ではない

*2:Q&A with Gary Gygaxスレ#8398 2007/10/31

*3:特典:全ての知識技能がクラス技能になる、占術呪文を術者Lv+1で発動

*4:特典:クレリックLv/2のウィザードとして巻物やワンドを使用可能