Tomb of the Overlord

オーバーロード 元ネタ考察 備忘録

ボブの話(水星の魔女とはあまり関係無い)

かっこいいキャラクターにはかっこいい名前がいる。ファイターのレグダーやローグのカーンはそのよい例で、彼らの生きている中世ファンタジー世界にふさわしいものであり、君たちのゲームに単なるおふざけではない、ふんいきや“らしさ”を与えてくれる。
レグダーやカーンの登場する冒険は、ファイターの太郎やウィザードのハナちゃんが登場する冒険とはふんいきが段違いだということがわかるだろう。

A great character needs a great name. Regdar the Fighter and Cam the Rogue have names that sound cool, suggest the ancient and fantastical world in which they live, and provide enough seriousness so that your game has the right tone and edge.
After all, an adventure with Regdar and Cam presents a much different picture from one inhabited by Bob the Fighter and Elfie the Wizard.

上記文章はD&D3.5版の初心者導入用ボックスセット『D&Dビギナーズ・セット』より、キャラクターの名前についての説明文及びその原文である。

(キャラクター創造及び世界観における名前の重要性については、この箇所以外にもダンジョン・マスターズ・ガイドなどで触れられており、「命名に関する約束事」として"ファイター太郎"と"あざみ高原のアルドロリウス・キルレイヴン"と"チビ助"が同じグループにいるのは一貫性が無くリアリティを失う、などといった注意喚起がなされている)

 

さて、3e翻訳の妙として稀に話題にのぼることもある"ファイター太郎"についてだが…

ボブが太郎なのはまだわかる。あまりに一般的でモブキャラみたいな名前、ひねりが無さ過ぎて逆に偽名っぽいというのもわかる(ここで「水星の魔女」10話のグエルに繋がるわけだ、流行りのネタにも敏感なアニメブログですよよよ)。

しかしエルフィがハナちゃん、はどうなんだろう。幼稚っぽい名前なのか、それともキラキラネームなのか。
(というか「異世界 エルフィ」でググったら、けっこうな数の作品がヒットしちゃうんですけど!)

上記名前が翻訳として適切かどうか以上に、かっこよさや雰囲気、らしさといった感覚が英語ネイティブでない自分にはとんとわからず、かつてのD&Dキャラメイクでは毎度のことながらPCの命名で頭をひねっていた。

 

そういえばホビージャパン翻訳チームの人がエルフの名前の訳語はトールキンっぽくしたとか言ってたけど、そもどういった感じがトールキンのエルフ語ぽさなのかも知らないし(正直トールキンあんまり読んでないのだ)…

思考停止でランダム名前ジェネレーターを使用し、ダイスに運命を託すのもアナログゲーマーとして正しい姿に思えるが、それで英雄にふさわしいかっこいい名前になる保証があるじゃなし。

 

ウラシマ・タノキ(戦士大全のローニン)や、カツオ・ゴールドドラゴン(無頼大全、七鴉衆頭目)は果たして中世ファンタジー世界にふさわしい名前なのか?

ボブやエルフィに比べ、レグダーやマイアリーは本当にかっこいい名前なのか?

分からぬ 全く何事も我々には分からぬ (ジャガー感)

 

 

追記:上記DMG命名に関する約束事」と同じような文章を以前にD&D系以外のどこかで読んだ記憶があり、このところ探していたのだがようやく見つけた…ボトムズだこれ。

コラム:アストラギウス銀河の名前
キャラクターには、ボトムズの世界に相応しい名前をつけてやろう。 アストラギウス銀河は、我々の住む世界の過去や未来ではないし、もちろん中世風ファンタジーの世界でもない。だから、山田とかジョンとかシュトロハイムとか、我々の世界に実在する名前をつけてやっても、いまひとつ雰囲気がでない。いちばんいいのは、適当にカタカナを組み合わせて、音の響きだけで名前を作り出してやることだ。

装甲騎兵ボトムズTRPG』(エンターブレイン刊 2001)p33より抜粋

 

このボトムズTRPG、武器個別の細かな射程区分と命中修正、装甲とダメージの算出などの戦闘関係のルール処理はTRPGガンダム戦記 一年戦争全戦闘記録』あたりが元ネタとなっているようだが、それ以上に(特にキャラクターメイキング周りに)D20システム/D&D3版系の影響が大きく見られる。

*戦闘判定用と技能判定用に分けられた計6種の能力値があり、ポイントバイで決定
*キャラクターレベル5Lvごとに追加で1つの能力値を1上昇出来る
*レベル上昇で取得する技能ポイントで技能ランクを上昇させる
*レベル上昇で追加取得できる特殊能力:異能(ほぼD&Dにおける特技/Feat)の存在
*判定の基本は 対応能力値+キャラクターレベル+クラスや異能、技能ランクによる修正+1d20による上方判定
*サンプルNPCで最も高レベルなキャラはキリコ(クエント編)の20レベル、等々。


それもそのはず、ボトムズTRPGの著者である岡田伸、楯野恒雪、桂令夫の三名はこの後、ホビージャパンD&D翻訳チームに参加し活躍することとなる人たちである、上記コラムも当時まだD&D3版が未訳だったのを良いことにDMGからパクったオマージュした部分なのだろう。

まあ結局は「適当にカタカナを組み合わせる」という、なんとも締まらない提案のコラムではあるが、中世ファンタジー世界よりかはアストラギウス銀河の方がなじみがある分、オレモダビールだのダボフィッシュといった、それっぽい雰囲気の名前を考えるのは日本のオタにとっては朝飯前だと思われる。

 

さらに追記:

●ただし、登録できる名前は4文字まで(だく点も文字になります)。
『ゆきのぶ』 など4文字以内で登録できない名前のあなたは、『ゆきのん』など勇者らしい名前を考え、登録しましょう。
●さあ、いよいよ、冒険に出発です!

ドラゴンクエスト取説『冒険の書 -これを勇者たちに送る-』より抜粋

流石ドラクエ、取扱説明書にもRPG初心者に配慮した導入が見られる。また「自分の名前でゲームできるのだ」といったアピールも微笑ましい。
なお「ゆきのん」がファンタジー的にカッコよい名前かどうかについては、当時のプレイヤー(昭和の鼻たれガキンチョ)でも意見が分かれるところであろうが、紅魔族(このすば)的センスで言えばかなり一般的な名前となるだろうし、なにより「トンヌラ」「すけさん」「もょもと」「4ひえた」などの錚々たる勇者たちの名前と五十歩百歩な点を鑑みるに、アレフガルド世界においては確かに「ゆきのん」は勇者らしい名前だと言えるだろう。

追補2:ファイナルファンタジーの魔法、アイテム出典一覧

基本的に呪文はAD&D1st『Player's Handbook』出典

LV しろまほう 元ネタ 呪文LV
1 ケアル Cure Light Wounds Cle1
ディア *クラス:クレリックの能力Turning Undeadに由来
プロテス Protection From Evil Cle1
ブリンク Blink M-U3
2 ブラナ Cure Blindness Cle3
サイレス Silence 15' Radius Cle2
インビジ Invisibility M-U2
3 バファイ Resist Fire Cle2
4 ポイゾナ Neutralize Poison Cle4
フィアー Fear または Cloak of Fear M-U4, Cle4
バコルド Resist Cold Cle1
5 レイズ Raise Dead Cle5
6 ストナ Stone To Flesh M-U6
ダテレポ Word Of Recall Cle6

*テレポは黒魔法なのに上位魔法のダテレポはなぜ白魔法なのか?といえば、元となったものがクレリックの帰還呪文(Wizでのロクトフェイト)だからである。なおAD&D1stPHBにはグレーター・テレポート相当のM-U呪文は存在しないが、UAにてTeleport Without Error (エラー無しテレポート、M-U7Lv)が追加された。

7 ケアルガ Heal Cle6

*FF1でのケアルガはHP全回復及び状態異常も治療という点が、明らかにHeal由来の特性となっている

8 アレイズ Resurrection Cle7
ホーリー Holy Word Cle7
デスペル Dispel Magic Cle3, M-U3

*名称的にはディスペル・マジックなんだろうけど、あらゆる耐性を剥ぎ取る最高位の魔法といった点は、Mordenkainen's disjunction(UA出典,M-U9)の影響も考えられる

LV くろまほう 元ネタ 呪文LV
1 スリプル Sleep M-U1
シェイプ Faerie Fire Dor1
2 ダクネス Darkness 15' Radius M-U2
スロウ Slow M-U3
ストライ ? Striking Cle3(青)

*武器に追加ダメージを与えるストライキング呪文が名称、効果共にストライに似通っているが、これはクラシックD&D系にしか無い呪文。PHB出典で効果や呪文Lvの近いものであれば、筋力増強魔法のStrength(M-U2)呪文が存在する

3 ホールド Hold Person M-U3
4 ヘイスト Haste M-U3
コンフュ Confusion M-U4
5 クラウダ Cloudkill M-U5
テレポ Teleport M-U5
6 デス Death Spell M-U6
クエイク Earthquake Cle7
スタン Power Word, Stun M-U7
7 ブレイク ? Statue M-U7
セーバー Mordenkainen's Sword M-U7
ブライン Power Word, Blind M-U8
8 ストップ Time Stop M-U9
デジョン Maze M-U8
キル Power Word, Kill M-U9

*スタン、ブライン、キルの現在HPが300以下の対象に効果があるという条件は、AD&Dパワーワード系呪文の特性(HPが一定以下であればセーヴ不可)に由来する

*D&D系における石化呪文といえばフレッシュ・トゥ・ストーン(AD&DではStone To Fleshの逆呪文、M-U6)がその代表であるが、一方スタチュー/Statue(彫像化)呪文の効果といえばドラクエでいうアストロンのような魔法であり、通常は攻撃呪文としては使用しないものである。しかしながらStatueの説明文には「石像が欠けても軽傷で済むが、腕が折れるのは別問題」とあり、ここのbreaking off one of the statue's armsの一文からブレイクの魔法名が採られた可能性がある

*FF1の属性攻撃魔法といえばご存じ「ファイア」「ブリザド」「サンダー」の3系統がその中核となっており、その簡素な名前や命名則からは特にどれが直接の元ネタかと特定できる感じではないのだが、一応「冷気属性の魔法が他に比べて上位」(ファイア&サンダーはレベル1だがブリザドはレベル2)(Fireball、Lightning Boltの3Lvに対しIce Stormは4Lv)「黒魔法レベル3習得まではグループ攻撃魔法が無い」といった特徴は、狙ってか偶然かAD&D1stと同様である


以下、アイテム類

FF1 元ネタ 出典
サンブレード Sun Blade UA
アイスブランド Frost Brand DMG
フレームソード Flame Tongue DMG

*FFシリーズにおいてフレイム・タンの初出はFF5、あとからAD&Dに寄せたという珍しいパターン

ウィルムキラー ? Dragon Slayer  DMG

*河津秋敏氏も大好きなドラゴンランスに登場したWyrmslayerがそれっぽい名を持つ対竜特効剣なのだが、ワームスレイヤーはロマサガ2において「虫を集める力を持つ」という謎改変がなされている。細かすぎて伝わらないギャグか何かか?

ちからのつえ Staff of Power DMG
まじゅつのつえ Staff of the Magi DMG
ディフェンダー Defender DMG
まどうしのつえ Staff of Wizardry 
いやしのつえ Staff of Healing
しゃくじょう Jo Stick PHB

*ジョウのぼう、などと和訳してはいけない

シャープソード Sword of Sharpness  DMG

*北米NES版での名称はVorpal、当時の米ゲーマーは大きく名前負けしたその性能に落胆したんじゃなかろうか

ネコのツメ Cat's Claw Le&Lo
エクスカリバー Excalibur Le&Lo
トールハンマー Mjolnir, Thor's +5 magic hammer Le&Lo

*『Legends&Lore』記載のミョルニルはFF1トールハンマー同様に稲妻を呼び出す能力も持つが、これは基礎ダメージが10d10とかいうぶっ飛んだ代物なのであまりFFの元ネタ感は無い

レイズサーベル ? 使用時クラウドキル発動  

*シアリック神の佩刀Razor's Edgeが元ネタではないか?といった情報がネット上で散見されるが、自分が調べた限りRazor's EdgeはD&D3版サプリ『Faiths and Pantheons』(2002)以前に出典が見当たらない上、能力的にもレイズサーベルと似たところが無い。またAD&D1stの頃にシアリック神の詳細な設定が存在したとしても、FF1発売とフォーゴトン・レルムのキャンペーン展開開始は同年だった為、どの道これを元ネタとするのは時期的にやや無理がある。

きょじんのこて Gauntlets of Ogre Power及びGirdle of Giant Strength DMG
うでわ類 Bracers of Deflection DMG
まもりのマント Cloak of Protection  DMG
まもりのゆびわ Ring of Protection DMG
イージスのたて AEGIS Le&Lo
しろのローブ Robe of the Archmagi (white) DMG
くろのローブ Robe of the Archmagi (black) DMG

*AD&Dのこのローブはその名の通り魔法使い向けの物であり、色による区分けは白(善属性)、灰色(中立属性)、黒(悪属性)といった、着用者のアライメントに対応する

ワープキューブ Cubic Gate DMG

*他次元への転移門を開くことが出来るキューブ

アイテム類に関してはAD&Dの再現というよりも、特殊能力や属性耐性を持つ武器防具を多数実装することを優先した、当時のファミコンRPGとしては先進的なシステム重視のゲームデザインがうかがえる。

M-U=クラス:マジックユーザー
Cle=クラス:クレリック
PHB=Player's Handbook(1978)
DMG=Dungeon Masters Guide(1979)
Le&Lo=Legends&Lore(1984)
UA=Unearthed Arcana(1985)

追補:ファイナルファンタジーのモンスター出典一覧

FF1とAD&D1stのデータを比較して、どのように実装したのか見てみるのも面白いよ。

FF1 元ネタ 出典
ゴブリン GOBLIN MM p.47
ゴブリンガード  *guards(ホブゴブリン相当)の記述有り MM p.47
ウルフ Wolf MM p.101
ウォーグウルフ Wolf, Dire (Worg) MM p.101
ウェアウルフ LYCANTHROPE, Werewolf MM p.63
ウィンターウルフ Wolf, Winter MM p.101
リザード LIZARD, Giant MM p.61
ファイアリザード LIZARD, Fire MM p.61
バシリスク BASILISK MM p.8
ヒルギガース Giant, Hill MM p.45
アイスギガース Giant, Frost MM p.44
ファイアギガース Giant, Fire MM p.44
サハギン SAHUAGIN MM p.84
サハギンチーフ SAHUAGIN, chieftain MM p.84
サハギンプリンス *baronの記述はあるが、princeは無し MM p.84
かいぞく Buccaneer 青、MM p.67
パイレーツ Pirate 青、MM p.67
シャーク SHARK MM p.87
ホワイトシャーク Megalodon *Giant white sharkと説明 MM p.88
ビッグアイ EYE, Floating MM p.40
ディープアイ EYE OF THE DEEP MM p.41
ケルト SKELETON MM p.87
ブラッディボーン *Bloody Bonesの初出データは『Polyhedron#18』 (1984)に記載されているようだが、この雑誌はRPGA(D&Dゲーマーのコミュニティ)会員向けの季刊誌であり、当時の日本で入手することは極めて困難だったと思われる
ギガースウォーム    
クロウラー CARRION CRAWLER MM p.13
ハイエナドン HYENA, Giant (Hyaenodon) MM p.54
ヘルハウンド HELL HOUND MM p.51
オーガ OGRE MM p.75
オーガチーフ OGRE, chieftain MM p.75
オーガメイジ OGRE MAGE (Japanese Ogre) MM p.76
コブラ Spitting cobra MM p.89 , 赤
アナコンダ    
シースネイク SEA SNAKE, Giant MM p.89
サソリ SCORPION, Giant MM p.85
うみサソリ    
ミノタウロス MINOTAUR MM p.72
ミノタウロゾンビ    
トロル TROLL MM p.97
シートロル TROLL, MARINE (Scrag) MM2 p.121
シャドウ SHADOW MM p.86
レイス WRAITH MM p.102
スペクター SPECTRE MM p.89
ゴ-スト GHOST MM p.43
ゾンビ ZOMBIE MM p.103
グール GHOUL MM p.43
ガスト GHAST MM p.43
ワイト WIGHT MM p.100
パープルウォーム PURPLE WORM MM p.80
サンドウォーム *D&DではDark Sunキャンペーンセッティングなどで見られるが、どれもFF1発売以降?おそらく『デューン砂の惑星』が元ネタか。
ラーバウォーム *これもAD&D2eデータは発見したが、FF1発売以前の初出は不明
ビホルダー BEHOLDER MM p.10
デスビホルダー Beholder, Undead *アンデッド・ビホルダーとして有名なDeath tyrantは2e以降?
メデュ-サ MEDUSA MM p.66
アースメデューサ メデューサの本来の故郷はEarth elemental Plane/地の次元界であり、そこでの姿は触手の生えた醜い蠢く塊である、といった記述がみられる
ウェアタイガー LYCANTHROPE, Weretiger MM p.63
ラクシャーサ RAKSHASA MM p.81
アンクヘッグ ANHKHEG MM p.6
レモラーズ REMORHAZ MM p.82
キティタイガー TIGER MM p.94
サーベルタイガー Sabre-tooth (Smilodan) MM p.94
バンパイア VAMPIRE MM p.99
バンパイアロード    
ガーゴイル GARGOYLE MM p.42
ホーンドデビル DEVIL, Horned (Malebranche) MM p.22
アースエレメント Elemental, Earth MM p.38
ファイアー Elemental, Fire MM p.38
ホワイトドラゴン White Dragon (Draco Rigidus Frigidus) MM p.34
レッドドラゴン Red Dragon (Draco Conflagratio Horriblis) MM p.33
ドラゴンゾンビ *ドラゴンゾンビ初出はAD&D2e以降であり、ありふれた発想ながらFF1オリジナルと思われる
グリーンスライム GREEN SLIME MM p.49
グレイウーズ GRAY OOZE MM p.49
オーカーゼリー OCHRE JELLY MM p.75
ブラックプリン BLACK PUDDING MM p.10
ブラックウィドウ Black Widow
タランチュラ Tarantella
マンティコア MANTICORE MM p.65
スフィンクス SPHINX MM p.89
バレッテ BULETTE MM p.12
デザートバレッテ *どの遭遇表を見てみても砂漠にブレイは出現しない
マミー MUMMY MM p.72
キングマミー *D&DでMummy Lordが定番化したのは3e以降
コカトリス COCKATRICE MM p.15
ピロリスク PYROLISK MM2 p.103
ワイバーン WYVERN MM p.102
ウィルム AD&D1st,Dragon誌でのWyrmは、ドラゴンの遠い親戚であり翼は無く6本足、毒ガスのブレスを吐く爬虫類といったモンスターであったが、AD&D2nd以降はWyrm/ワーム(長虫)とはエインシャント(太古)を超える年齢区分の終盤、歳経りたとてつもなく強大な竜を指すようになった Dragon #94(1985)
アロザウルス Antrodemus (Allosaurus) MM p.24
チラノザウルス Tyrannosaurus Rex MM p.28
ラニ QUIPPER *cold-water piranhaと記述 FF p.74
レッドピラニ    
クロコダイル CROCODILE MM p.15
ホワイトダイル *おそらく『ストップ!! ひばりくん!』(1981~83)により広く知られるようになった白いワニの都市伝説が元ネタ
オチュー OTYUGH MM p.77
ネオチュー NEO-OTYUGH MM p.73
ヒドラ HYDRA MM p.53
ファイアヒドラ Pyrohydra MM p.54
ガーディアン    
ソルジャー    
ウォーター Elemental, Water MM p.38
エアエレメンタル Elemental, Air MM p.37
ウォーターナー NAGA, Water MM p.72
スピリットナーガ NAGA, Spirit MM p.72
キメラ CHIMERA MM p.14
ゴーキメラ GORGIMERA MM2 p.70
ピスコディーモン Piscodaemon (Lesser Daemon) MM2 p.30
マインドフレイア MIND FLAYER MM p.70
ガーランド    
グリーンドラゴン Green Dragon (Draco Chlorinous Nauseous Respiratorus) MM p.33
ブルードラゴン Blue Dragon (Draco Electricus) MM p.31
クレイゴーレム Clay Golem MM p.47
ストーンゴーレム Stone Golern MM p.48
アイアンゴーレム Iron Golem MM p.48
ブラックナイト    
デスナイト DEATH KNIGHT FF p.23
アストス ? Drow (Dark Elf) FF p.33
ダークウィザード

*FF記載の標準的ダークエルフのデータでは、ここまで強力な呪文能力は持っていない

ダークファイター    
クレイジーホース HORSE MM p.53
ナイトメア NIGHTMARE MM p.74
デスマシーン    
リッチ LICH MM p.61
マリリス DEMON, TypeV (Marilith, etc.) MM p.19
クラーケン KRAKEN MM2 p.79
ティアマット Chromatic Dragon (Tiamat) MM p.32
カオス    
バハムート Platinum Dragon (Bahamut) MM p.33
フェニックス(没) Phoenix MM2 p.100

追記:天野喜孝氏によるファイナルファンタジー1のモンスターデザイン画を見てみると、ラクシャーサが獣人になっているなど他系統のRPGでは見られないAD&Dクリーチャーの特色が良く出ている物も多いが、その中でも異色さが特に際立つのがダークエルフ(アストス)のイラストである。

吊上がった大きな目、垂れ下がった舌、昆虫じみた手足と尻尾、長く伸びた角、バイアランのごときいかり肩……
明らかにD&D系のドロウやそこから発展した褐色巨乳エルフの系譜ではない、どちらかというとFF1ゴブリンを凶悪にしたようなデザインに見える。

これについては恐らく当時スクウェア側が天野喜孝氏に用意した資料が基本ルールの『モンスター・マニュアル』のみであったため、追加ルールのMM2記載であるドロウ(ダークエルフ)のイラストを参照することが出来ず、AD&Dからのパクリではない天野喜孝オリジナルデザインの物となってしまったためと思われる。
(追加ルールであるMM2及びFF出典のモンスターは殆どが色違いモンスターに当てられていた為、ダークエルフを除くとD&D系との差異が目立って問題となることは無かった)

 

注:Dragon誌やモジュール、オリジナルD&Dまで遡って初出を調べている訳ではありません。また頁数はエラッタ修正重版などにより前後している可能性があります。

FF1=ファイナルファンタジー(1987)
MM=Monster Manual(1979)
FF=Fiend Folio(1981)
MM2=Monster Manual2(1983)
赤=ベーシック・ルール・セット(1983)
青=エキスパート・ルール・セット(1983)
緑=コンパニオン・ルール・セット(1984
黒=マスター・ルール・セット(1985)

スクウェア製RPGにおけるAD&D(とクラシックD&D)要素

スクウェアゲーと書いたが、主に初代ファイナルファンタジー(1987)を始めとする河津秋敏氏が関わったゲーム、ロマサガまでのお話です。


最近のRPG(雑な括り)作中において元ネタD&Dの要素が見られる事があっても、それらはほぼ先行する作品群からの孫引きというだけであって、その点にあえて注視する必要性はない。
(例えば多くのRPGに登場するモンスター「ミミック」は特定の神話伝承に由来しない純然たる創作、ガイギャックス謹製のモンスターであるが、これをD&D由来と意識し採用しているゲームデザイナーは少ないだろう)

しかしながら、これが初代ファイナルファンタジーとなると少々事情は異なり、あまりに多くの要素をAD&D1stから直接引っ張ってきている為、通常ならばD&D由来の品と見做されない様なものでも、そうでないことに注意する必要が有る。


特に顕著なのがモンスター関係。
例えばスフィンクスヒドラといったギリシャ神話由来のもの、北欧神話または指輪物語由来のウォーグウルフ、さらにウルフやチラノサウルスといった単なる動物や恐竜の類まで、一見D&Dと無関係に見えるこれらモンスターもすべてAD&D1st由来とみるべきである。
なぜなら上記含めたFF1のモンスターは、そのほとんどがAD&D1stのモンスターデータ集『Monster Manual』(1979)、『Fiend Folio』(1981)、『Monster Manual2』(1983)出典のものだからだ。(ココを参照)

*このようなファイナルファンタジーへのD&Dの影響については日本語wikipediaの記事には特に書いてないが、英wikipediaではウルティマウィザードリィと共に触れられており、さらにはFF1及びサガシリーズ主要スタッフの一人、河津秋敏が記事リンク先のインタビューで「出来るだけD&Dに近づけるのが私の目標だった」とはっきり語っている。


それらAD&D1st要素とオバロを絡めたネタでひとつ記事でも書けないかと思い、今回ファミコン版FF1のデータを改めて見返していたわけだが…

ひょっとして「ちからのつえ」って《スタッフ・オヴ・パワー》が元ネタじゃね!?

今の今まで「ちからのつえ」をFFオリジナルと思い、AD&Dのスタッフと結びつけて考えなかったのには訳がある。
スタッフ・オヴ・パワーは所謂、魔法使いの杖として多彩な呪文のチャージや特殊能力を持つかなり強力なマジックアイテムであるのだが、一方それがFFの「ちからのつえ」となると特殊能力が全く無い、ほんとうにただの(ちょっと)ちからの(つよい)つえ、だった為だ。

 

まあ名前が何となくそれっぽい、だけでは元ネタ根拠として今一つなので北米NES版のアイテム名をチェックしてみたところ…

FFファミコン 北米NES 元ネタ
ちからのつえ POWER STAFF スタッフ・オヴ・パワー
まじゅつのつえ MAGE STAFF スタッフ・オヴ・ザ・マギ
まどうしのつえ WIZARD STAFF スタッフ・オヴ・ウィザードリィ
いやしのつえ HEAL STAFF スタッフ・オヴ・ヒーリング

他の杖までも…これもう元ネタで間違いないじゃん!

そして注目してほしいのが、まどうしのつえ/スタッフ・オヴ・ウィザードリィ及びいやしのつえ/スタッフ・オヴ・ヒーリングの存在である。
これらの魔法の杖は、AD&D1stには存在しないオリジナルD&D初出、クラシックD&D系掲載の品。少なくとも初代ファイナルファンタジーのD&D要素は全てAD&D1st由来と思い込んでいた為、これは驚きの発見だった。

 

FF1を始めとした元ネタD&Dの品々はこれ以降、FFシリーズやGBサガシリーズに細々と受け継がれていくわけだが、GBサガからSFCロマサガに移る際にD&D要素は大幅に減少してしまい、ついでにGBサガシリーズまでは漂っていた初期FF的空気感もというか、以降のロマサガシリーズはファイナルファンタジーシリーズとは別の流れとして、そのオリジナリティを深めていく。

しかしながらSFCロマサガ時代になってからでも、新たに追加されたD&D由来の品が無いでもない。


ロマンシング サ・ガ』:メイジスタッフの固有技ファイナルストライク
クラシックD&Dのスタッフ・オヴ・ウィザードリィを折ったら大爆発するという能力、ファイナル・ストライクに由来。
AD&D系においてもスタッフ・オヴ・パワー及びスタッフ・オヴ・ザ・マギはほぼ同じ能力を持っているが、名称は異なりこれはRetributive Strike(3版和訳では"応報の一撃")となっている。


ロマンシング サ・ガ2』:ヴォーパルソード
AD&D系の首切り武器能力、クラシックD&Dには存在しない。


ロマンシング サ・ガ3』:ドラゴンルーラー
クラシックD&D系における最高位のドラゴンであるが、この区分はAD&D系には存在しない。


これらのD&D要素ほか「ネコのツメ」(グレイ・マウザーの佩刀)やサガ2秘宝伝説の「モーンブレード」(エルリック・サーガより)といった「剣と魔法」の小説由来のものも、おそらく河津秋敏氏の影響なんだろうね。

 

追記:2020/12/16、スクエニ公式Twitterアカウント動画(海外向け)で河津秋敏がD&Dファンに向けてサガシリーズの魅力をお話しといいつつ、サガの話はそっちのけで私物のD&Dルールブックを紹介していた。
動画に出ていたのはクラシックD&Dルールセット(赤、青、緑、黒)、AD&D1stサプリメント『Legends&Lore』(1984)、『Fiend Folio』、ランクマーセッティング用モジュール『Swords of Deceit』(1986)、ドラゴンランス用地図集『The Atlas of the Dragonlance World』(1987)……しかしまあクラシックD&Dを除くと全部未訳かつ濃ゆい本ばかりだなぁ。それとランクマー(フリッツ・ライバー作ファファード&グレイ・マウザー シリーズの世界)にまで手を出してたってことは、ネコのツメも河津秋敏氏がFFに入れたってことでほぼ間違いないだろう。

この動画でさらに注目してもらいたいのは、『Legends&Lore』について「これかなり実は、ゲーム……スクウェアにはいってからね、いろいろお世話になったりしてます」と語る部分だ。
この本は世界中の神話伝承に出てくる神々及び英雄たちをD&Dで再現、データ化するという版ごとに恒例の追加ルール集なのだが、当然有名どころの武器防具データも記載されている。

Excalibur/エクスカリバー(+5 ローフルグッド ソード・オヴ・シャープネス、鞘の効果でアーサーは刺突及び斬撃によるダメージ半減)

AEGIS/イージス(+5 シールド、周囲にフィアー呪文の効果、ディスプレイサー・クロークへと変化可能)

Cat's Claw/猫の爪(素ダガー

つまりは、長年にわたってFFシリーズに引き継がれた最強クラスの装備であり、誰もが神話伝承から直接拾ってきたネタと信じて疑わないであろう「エクスカリバー」及び「イージスのたて」すらも、AD&D1st神話本がネタ元という可能性が濃厚となったのである。

アイテム与太話 ビキニアーマーについて

D&Dのビキニアーマーの話となると、D&D系小説やD&D系電源ゲームのイラストで見た!*1とかAD&D2ndのレルムのサプリにあっただの、ファイナルファンタジーマリリス*2はビキニだの、映画『ダンジョン&ドラゴン』におっぱいアーマーが出てただの、色々と収集がつかなくなるのでここではD&D3版系に絞った話にさせてもらう。

 

いきなり真面目な話となるが、ビキニアーマーのデータをデザインするというのはとても難しく、気を遣う物である。
現実的な線で行けばアーマクラスが無きに等しい軽装鎧、またはローブ扱いとするのが妥当なところなんだろうが、それだと弱すぎで肝心の女戦士が着てくれないデータになってしまい無意味だし、これを動きやすいため重さによるペナルティや呪文失敗率が無い鎧というデザインで多少なりとも実用価値のある物とすれば、間違いなく世のウィザードの大半がビキニアーマーを着込む事になるのは想像に難くない(パワーゲーマーとはそういった人種である)。

 

例えばD&D3.5e未訳サプリメント『Dungeon Master's GuideⅡ』記載の武器防具作成用ルール《グローリーボーン・テンプレート/GLORYBORN TEMPLATE》を適用すればビキニアーマー他、今時のRPGによくある実用性皆無な外観の武具作成も可能となるのだが……

イスガルドの原住民は戦いにおいて英雄的な無謀さを重視しており、このテンプレートを持つ武具はその哲学を反映している。
 英雄的なプロポーションで作られ、派手な装飾が施されているが、グローリーボーンの鎧や盾はしばしば重要な防御の部分を欠いているように見える。 
全体的な外観は見る者を畏怖させ、着用者の敵を恐怖に陥れるかもしれないが、そのアイテムはしばしば不完全なものに見える。
例えばグローリーボーンの革鎧は、胴体の一部を完全に露出させ、着用者の膨れ上がった筋肉を見せるために、精巧な革紐のセットに過ぎないかもしれない。グローリーボーンの鎧は、大斧はおろか包丁も止められないように見えるかもしれないが、そのデザインの何かが攻撃を保護された部分に引き寄せるようで、他の次元で作られた鎧と同じように効果的である。またグローリーボーンのロングソードは、柄の部分から奇妙で威圧的なトゲがたくさん突き出ていて、まるでバランスが悪いように見えるかもしれない。しかしグローリーボーンの鎧や盾と同様に、見た目のデザインの悪さによってアイテムの実用性が損なわれることはない。

要するにこのルールで作ったビキニ・プレートアーマーは通常のプレートアーマーと基本性能に違いは無いよといった物。所謂「相当品ルール」「ルール優先、演出後付け」を上手くD&Dの世界観に落とし込んだとも言えるが、ある意味ゲームデザインを放棄していると捉えることもできる。

 

同様の問題は近年のパスファインダーRPGでも起きていた。コミック『Pathfinder Worldscape』シリーズにクロスオーバー企画として「ジャングルの王者ターザン」「火星の大元帥カーター」「レッドソニア」といった古典ファンタジーの露出度高めヒーローが次々と登場し、これらをデータ化することとなったのだが……特にレッドソニアビキニアーマー着用の代表的キャラという事もありデザイナーはデータ化に四苦八苦していたわけだが最終的にビキニのデータ化は諦め、あれは鎧じゃ無いということにして裸だとアーマクラスにボーナスが付くような各クラスアーキタイプ*3を用意することによってこれに対応した。

 

結局、ビキニアーマーを前衛キャラが着用する必要性及び実用度をバランスを崩さない程度にでっち上げてゲームに実装するには、鎧のデータだけで無くそれなりの追加ルールを導入するしか手段が無かったようだ。
といったところで本命E.N. Armouryのd20サプリメント『ビキニ大全/Chainmail Bikini』の紹介である。

美しさは力
このサプリメントは美しい女性剣士たちの標準装備として、そしてその実用性に疑問符がついていることで知られているビキニアーマーについての本であり、

*ビキニアーマーの性能、歴史、およびビキニアーマーのルール上の扱い
*女性と男性の為のセクシーな鎧
*高性能のビキニアーマーの制作について
*美人コンテストの開催ルール
*エレアの司祭の早着替えの鎧の物語
そのほか、特技、上級クラス、マジックアイテムなど、ノールの売春婦も昇天するような素晴らしい内容となっている

チェインメイル・ビキニはヒロイック・ファンタジーの古典的イメージだが、それが具体的にどのように戦場で女性を守るのかを説明する科学的な解明(とルール)が出来たのは最近のことなのだ。この秘密はあなたのゲーム体験に革命を起こし、ひょっとしたら恋人に振られるかもしれない。

このPDFには栞が入っており、あなたのファンタジーD20キャンペーンですぐに使用できます。ただしあまりに頻繁にこのルールを使用すると、あなたが心配になりますよ。

*サプリ序文及び販売サイト説明より抄訳

この悪名高い追加ルール集は各種ビキニアーマーのデータ*4と《裸身防御/Naked Defense》の選択追加ルールがその中核となっている。
裸身防御ルールでは鎧(ビキニアーマーは下着扱いで除外)やローブ、胸部、脚部に何も装備していない場合キャラクターは「裸身状態」と見なされACに+1のボーナスが付く(全裸状態なら+2)。
さらにビキニアーマーは通常とても低いACしかもっていないが、これに習熟し裸身状態であるキャラクターはその真価を発揮させ、通常の鎧と変わらない程度の防御力を持つようになる。
ただしこれらアーマーボーナスの効果が適用されるのは外見的特徴の近いクリーチャーに対してのみであり、通常の視力以外で知覚している生物も見た目に惑わされないため裸身防御は無効。

多様なモンスターを相手とする冒険者には厳しい代物といえるこれらのルールだが、人型生物が主な対戦相手の剣闘士や裸身モンク(坂東ミミ)などならば実用性とコストのバランスがロマンによって傾く事もあるだろう。

まあ伊達や酔狂を貫くのにコストはわないというのであればPDFも安いしパスファインダーRPGへの適合も容易なのでゲームに導入してみてはどうだろう?

 

*下記にその楽しいルールの一部を記しておく

特技《恵まれすぎた肉体》:立派な「持ち物」により敵が攻撃するのに躊躇してしまい-2状況ペナルティ

特技《露出戦闘》:戦闘中に服を脱いでフェイント、セクシーコマンドー

特技《胸の谷間》及び《悶絶攻撃》:おっぱいアタック&締め付け窒息、これはやるっきゃ騎士

特殊遠隔武器《バレーボール》:非現実的なデータだが、そーいう事は考えずに設定したのだから察しろ。と諦め気味に書いてある

ビキニ魔法《エンドゥー/恵み》 ウィザード、バード1Lv
一時的にバストアップする呪文、服も破れちゃう。甚だ残念ではあるがゼーヴ:頑健・無効なのでアンデッドであるシャルティアには効かない

追加ルール:もしプレイヤーが裸身防御を行っているキャラクターの美しい姿のイラストを用意しているのならば、ACに+1のボーナスを与えても良い、等々。

 


最後に一つ。もう十数年前のことだが『ビキニ大全/Chainmail Bikini』という表記から察せられるように、これには和訳版が存在した。
原本『Chainmail Bikini』はd20ロゴのついた、つまりちゃんとライセンス通してるサードパーティ製のPDFサプリメントであったが、どこぞのサークルがこれを独自に翻訳、製本して勝手にコミケとかで販売してたという完全に著作権アウトな代物。*5

そしてそのなかでも特筆すべきは和訳版カバーアートの存在である。
原本イラストはメリケン特有のバタ臭いものでカバーアートも簡素なものだったが、『ビキニ大全』ではこれが改変され、D&D3.5版ルールブックと同じような体裁にパロった凝った作りの物となっていた。

………

……

 

見よ!股間に燦然と輝くd20systemロゴマークを!!

*1:大抵はラリー・エルモアの趣味で書かれた物であり、正規ルールの物品にはなってない

*2:D&Dでは基本真っ裸だが、乳首は剣の陰になるようにして隠すなど古典的奥ゆかしさを持つイラストとなっている

*3:3版モンクや5版バーバリアンと類似した能力を持つ、レンジャーやファイターの代替クラス

*4:紐/ストリングからビキニ・フルプレートまでの13種が掲載してあるが、ビキニ・テンプレートにより他種の鎧のビキニ化も可能

*5:他にも『ピストル大全』や『ツーブレード大全』とかも売っていた

どうしてRPGとかの異世界って中世ヨーロッパ風ばかりなの?

オリジナルD&Dが「紙と鉛筆とミニチュア・フィギュアで遊べる幻想的な中世ウォーゲーム・キャンペーン*1のルール/Rules for Fantastic Medieval Wargames Campaigns Playable with Paper and Pencil and Miniature Figures」だったからでしかない。

何を今更当然の事をという方もいるかもしれないが、D&Dが成立した当初の状況を調べていくと、面白い事に「そうはならなかった」可能性も決して低いものでは無かったのでは?と思えてくる。


まず当時のウォーゲーム界といえば「タクティクス」に代表されるボードとコマでプレイされるものが主流でありミニチュア・ウォーゲームは少数派、というかミニチュアを売る為のおまけのような扱いもしばしばであった。
さらにミニチュア・ウォーゲーム派閥の中でもナポレオン時代を扱ったものに比べ中世モノは少数派であり、D&Dの原型であるミニチュア・ウォーゲーム「Chainmail」が中世+ファンタジー追加ルールだったのも何分ガイギャックスの趣味に依るところが大きい。

もしもガイギャックスが中世では無くナポレオニック好きだったら……グレイホーク世界を火薬持ち込み禁止にしなかったら……
フルプレートが無くて、サーベルとマスケット銃カノン砲が当然のように流通している異世界となっていた?


視点を変えて次はガイギャックスのお仲間に目を向けてみよう。
D&Dを一般流通させる為に設立したTSR社の株主といえばゲイリー・ガイギャックスとその幼馴染であるドン・ケイ、実家が太いブライアン・ブルームの3人であったが、その内の二人、ドン・ケイ*2とブライアン・ブルーム*3は大の西部劇好きであり、オリジナルD&Dの1年後に3人の共著で西部劇RPG「Boot Hill」を出版している。

もし何かの手違いでD&Dより先にブートヒルが出版され好評を博すようなことがあったなら……
異世界は中世ヨーロッパではなくてアメリカ西部開拓時代が基調となっていたのだろうか?のび太が最強チートキャラ扱いになっていた?


他にもアニー(テンサー)が好きなバルスーム(バロウズが創作した架空の火星)やジム・ウォードのMetamorphosis Alpha(世代型恒星間宇宙船が舞台)はどうだろう、スター・ウォーズブームがもう少し早く来ていたらRPGの主流はSFになっていた?


以上の「もしも」はトールキンブームやガイギャックス周辺以外のゲーマーたち、ミネソタ州ツインシティを中心としたアーンソンのグループの影響、Chainmailにはパクリ元があるとかいった話などについては意図的に除外して話したが、どのみちRPGのルール化と出版、一般流通という大仕事は恐ろしく精力的かつディープなオタクゲーマーのガイギャックスを中心にならざるをえなかったし、ロールプレイングゲームはどうしてこうなった?的疑問の多くについては、結局「ガイギャックスの趣味」が一番簡潔かつ本質を突いた答えとなるだろう。

*1:どーでもいいけど軍事発祥のゲーム用語「キャンペーン」って言葉、電源系ゲームにも地味に生き残ってるよね

*2:ちなみにドン・ケイのD&D持ちキャラ、マーリンドはこんなお姿。カウボーイハットに二丁拳銃と保安官バッジ、通称「大パラディン」、クラスはマジック・ユーザーって、これもうわかんねぇな

*3:一方、ブライアン・ブルームはというとDragon誌#9に「THE FASTEST GUNS THAT NEVER LIVED」という記事を掲載。西部劇のヒーローを演じた実在の俳優14人を長々と紹介解説したうえでBoot Hillに使用できるデータを載せるという……現代日本風に言えば「ぼくのかんがえたさいきょうサーヴァントのミフネ、カツシン、コノエ・ジュウシロウを実装!」みたいな暴挙である

「半森妖精の神人」描写から見るルール その5

今回はクラス関係のお話が多めです

 

さて、まずは番外席次のクラス構成の雑感。
ファイター主体にローグ系少々、それに信仰系と纏まりがない感じが少々勿体なくもあるが、これはタレントにより六大神の遺産を活用するため多方面のクラスを取る必要があったのと、もう一つは法国の切り札、火消し役としてワンマンアーミー的な運用をされてきた経歴もあるので致し方ないか。

初見の印象では「サイズ/大鎌持ちでインクィジターってこれジェイサルじゃん!」とか考えてたわけだが、巻末キャラクターシート見た感じそうでもなかったし、そもそも番外席次の初出は2013の書籍4巻、キングメーカーのリリースは2018と5年も後で元ネタにはなり得なかった(というか雑感とか見るにかなり以前から番外席次の設定はすでに固まっていたっぽい)。

 

次に番外席次の使用武器、D&D3版系におけるサイズ(大鎌)の特徴
ダメージ2d4 両手持ち軍用武器 足払い可能 ダメージタイプ:刺突または斬撃(オバロのように切替可)
基本クリティカル率は5%と低いがクリティカル時のダメージ倍率は4倍とやけに高い。一種のロマン武器とも言えるが、クリ4倍の両手軍用武器はPHB記載ではサイズのみであり、なかなかの高性能である。

*そもそもこの形状の大鎌って草刈り用であって軍用武器ってのはおかしくね?という意見もあるだろうが、ルールブックには「このサイズは同じ名前のありふれた農機具と似ているが、つりあいも頑丈さも戦向きに作ってある。鋭い切っ先に力を集中させるだけでなく、刃の部分でも渾身の力を込めた斬撃を放てる作りになっている」とあり、ファンタジー世界に存在するそういった設定の武器、と納得してもらう他ない。

番外席次はこれをクラス〈エクスキューショナー〉の能力で、斬撃及びクリティカルを強化し使用しているようだが……

D&D3.5eの上級クラスにあるエクスキューショナーは、格下を急所攻撃でいたぶって恐怖のうちに殺すようなクラスであり、オバロとはおそらく関係ない。
D&Dではウェポンマスターの方がクリティカル強化能力をもつクラスとなっている。


上級クラス:ウェポンマスターの特徴
指定した武器での攻撃、特にクリティカル系能力が通常ルールの限界を超えて強くなる
具体的には気のパワーでクリティカル率増加+10%、及びクリティカル倍率増加。
特技《クリティカル強化》と併せてサイズの達人となれば20%の確率でダメージ5倍!

*なお余談であるがウェポンマスターのクラス能力にKi Damage,Ki Critical,Ki Whirlwindなどと、やたらと気/ki推しが目立つのは、このクラスが元々AD&D2ndのケンセイ/kensaiを3.0上級クラスにリデザインしたものであるという事情がある。

このようにクラス能力で強化されたサイズのクリティカルが炸裂すれば番外席次が一撃でマーレを(…倒すのは《強打》入れる余裕無いから無理だよなぁ、最低でもクリティカル二撃で)倒す可能性もありえたが、今回そのロマンはマーレの〈エレメンタルフォーム・アース〉で早々に塞がれてしまったわけで、色々と台無しである。

 

Q:マーレが番外席次の一撃を腹に食らってヒールの巻物を使用してたけど、それだけ大ダメージだったって事?それともブラフ?

A:今戦闘において明らかにアインズの戦い方を意識しているマーレにブラフの意図があったかどうかについては判断が難しい所だが、D&D的見地からすれば治癒呪文の回復量バランスが悪すぎるが故のヒール一択だった、という可能性が考えられる。


以下D&D3.5版における治癒呪文のHP回復量(ドルイド巻物からの使用)

7Lv《ヒール/大治癒》:130(3.0版以前は全回復)
5Lv《キュア・クリティカル・ウーンズ/致命傷治療》:期待値27
*クレリックの場合はドルイドより習得Lvが1づつ低くヒールは6Lvとなる

見ての通りヒールに比べその1段階下位の単体回復魔法であるキュア・クリティカル・ウーンズの回復量はかなり心許ない。
マーレは呪文でクリティカルと急所攻撃に耐性を得ている以上、ダイス目爆発で瀕死の大ダメージということはまず無いが、ヒールより下位の呪文では回復しきれいほどのダメージは出ていたのでは?そのため大事を取ってヒールで回復したのではなかろうか。

勿論これらAD&Dから続くキュア系呪文の貧弱さは後の版になる程バランス改善されてゆくので、未来のMMOであるユグドラシルにそんな古臭い伝統が生き残ってるわけ無いだろう。と考えることも出来るのだが、これが現代のRPGにおいても深く考えずに元ネタD&Dまで遡れる仕様を引き継いでいる物も無いわけじゃないし…(メガヒールとかいう大層な名前の割に2d8しか回復しないWiz外伝など)。

 

Q:今回デケムの取得しているクラスにエレメンタリスト(アース)があるけど、今までのナーベラルやイビルアイの前例から見てこれって魔力系術者クラスじゃなかったの?ドルイド(信仰系)のデケムが魔力系魔法も使えるって事?

A:エレメンタリストの元ネタと思しきD&D3.5e上級クラス:エレメンタル・サヴァーント(『秘術大全』記載)は特定一種の元素(エア=電気、アース=酸、ファイア=火、ウォーター=冷気)を選び、そのエネルギー属性の呪文が強化されたりエレメンタルの耐性を得たりする上級クラスであるが、クラスの前提は<知識:神秘学>8ランク以上、<知識:次元界>4ランク以上、呪文修正特技《呪文エネルギー変更》、3Lv以上のエネルギー属性を持つ呪文(秘術とは指定されていない)を使用可能、などとややウィザード向けにデザインされてはいるものの、これらはクレリックドルイドなど信仰系の術者でも前提を満たせるうえ、このクラスの呪文詠唱能力は「1Lvごとに既存の呪文詠唱クラスに+1」のように算出されるので、おそらくオバロでもエレメンタリストは前提さえ満たせば魔力、信仰の区別なく累積して魔法能力を伸ばせる上級職であり、デケムはドルイド系術者1本伸ばしと考えてよいだろう。