Tomb of the Overlord

オーバーロード 元ネタ考察 備忘録

どうしてRPGとかの異世界って中世ヨーロッパ風ばかりなの?

オリジナルD&Dが「紙と鉛筆とミニチュア・フィギュアで遊べる幻想的な中世ウォーゲーム・キャンペーン*1のルール/Rules for Fantastic Medieval Wargames Campaigns Playable with Paper and Pencil and Miniature Figures」だったからでしかない。

何を今更当然の事をという方もいるかもしれないが、D&Dが成立した当初の状況を調べていくと、面白い事に「そうはならなかった」可能性も決して低いものでは無かったのでは?と思えてくる。


まず当時のウォーゲーム界といえば「タクティクス」に代表されるボードとコマでプレイされるものが主流でありミニチュア・ウォーゲームは少数派、というかミニチュアを売る為のおまけのような扱いもしばしばであった。
さらにミニチュア・ウォーゲーム派閥の中でもナポレオン時代を扱ったものに比べ中世モノは少数派であり、D&Dの原型であるミニチュア・ウォーゲーム「Chainmail」が中世+ファンタジー追加ルールだったのも何分ガイギャックスの趣味に依るところが大きい。

もしもガイギャックスが中世では無くナポレオニック好きだったら……グレイホーク世界を火薬持ち込み禁止にしなかったら……
フルプレートが無くて、サーベルとマスケット銃カノン砲が当然のように流通している異世界となっていた?


視点を変えて次はガイギャックスのお仲間に目を向けてみよう。
D&Dを一般流通させる為に設立したTSR社の株主といえばゲイリー・ガイギャックスとその幼馴染であるドン・ケイ、実家が太いブライアン・ブルームの3人であったが、その内の二人、ドン・ケイ*2とブライアン・ブルーム*3は大の西部劇好きであり、オリジナルD&Dの1年後に3人の共著で西部劇RPG「Boot Hill」を出版している。

もし何かの手違いでD&Dより先にブートヒルが出版され好評を博すようなことがあったなら……
異世界は中世ヨーロッパではなくてアメリカ西部開拓時代が基調となっていたのだろうか?のび太が最強チートキャラ扱いになっていた?


他にもアニー(テンサー)が好きなバルスーム(バロウズが創作した架空の火星)やジム・ウォードのMetamorphosis Alpha(世代型恒星間宇宙船が舞台)はどうだろう、スター・ウォーズブームがもう少し早く来ていたらRPGの主流はSFになっていた?


以上の「もしも」はトールキンブームやガイギャックス周辺以外のゲーマーたち、ミネソタ州ツインシティを中心としたアーンソンのグループの影響、Chainmailにはパクリ元があるとかいった話などについては意図的に除外して話したが、どのみちRPGのルール化と出版、一般流通という大仕事は恐ろしく精力的かつディープなオタクゲーマーのガイギャックスを中心にならざるをえなかったし、ロールプレイングゲームはどうしてこうなった?的疑問の多くについては、結局「ガイギャックスの趣味」が一番簡潔かつ本質を突いた答えとなるだろう。

*1:どーでもいいけど軍事発祥のゲーム用語「キャンペーン」って言葉、電源系ゲームにも地味に生き残ってるよね

*2:ちなみにドン・ケイのD&D持ちキャラ、マーリンドはこんなお姿。カウボーイハットに二丁拳銃と保安官バッジ、通称「大パラディン」、クラスはマジック・ユーザーって、これもうわかんねぇな

*3:一方、ブライアン・ブルームはというとDragon誌#9に「THE FASTEST GUNS THAT NEVER LIVED」という記事を掲載。西部劇のヒーローを演じた実在の俳優14人を長々と紹介解説したうえでBoot Hillに使用できるデータを載せるという……現代日本風に言えば「ぼくのかんがえたさいきょうサーヴァントのミフネ、カツシン、コノエ・ジュウシロウを実装!」みたいな暴挙である