Tomb of the Overlord

オーバーロード 元ネタ考察 備忘録

「半森妖精の神人」描写から見るルール その5

今回はクラス関係のお話が多めです

 

さて、まずは番外席次のクラス構成の雑感。
ファイター主体にローグ系少々、それに信仰系と纏まりがない感じが少々勿体なくもあるが、これはタレントにより六大神の遺産を活用するため多方面のクラスを取る必要があったのと、もう一つは法国の切り札、火消し役としてワンマンアーミー的な運用をされてきた経歴もあるので致し方ないか。

初見の印象では「サイズ/大鎌持ちでインクィジターってこれジェイサルじゃん!」とか考えてたわけだが、巻末キャラクターシート見た感じそうでもなかったし、そもそも番外席次の初出は2013の書籍4巻、キングメーカーのリリースは2018と5年も後で元ネタにはなり得なかった(というか雑感とか見るにかなり以前から番外席次の設定はすでに固まっていたっぽい)。

 

次に番外席次の使用武器、D&D3版系におけるサイズ(大鎌)の特徴
ダメージ2d4 両手持ち軍用武器 足払い可能 ダメージタイプ:刺突または斬撃(オバロのように切替可)
基本クリティカル率は5%と低いがクリティカル時のダメージ倍率は4倍とやけに高い。一種のロマン武器とも言えるが、クリ4倍の両手軍用武器はPHB記載ではサイズのみであり、なかなかの高性能である。

*そもそもこの形状の大鎌って草刈り用であって軍用武器ってのはおかしくね?という意見もあるだろうが、ルールブックには「このサイズは同じ名前のありふれた農機具と似ているが、つりあいも頑丈さも戦向きに作ってある。鋭い切っ先に力を集中させるだけでなく、刃の部分でも渾身の力を込めた斬撃を放てる作りになっている」とあり、ファンタジー世界に存在するそういった設定の武器、と納得してもらう他ない。

番外席次はこれをクラス〈エクスキューショナー〉の能力で、斬撃及びクリティカルを強化し使用しているようだが……

D&D3.5eの上級クラスにあるエクスキューショナーは、格下を急所攻撃でいたぶって恐怖のうちに殺すようなクラスであり、オバロとはおそらく関係ない。
D&Dではウェポンマスターの方がクリティカル強化能力をもつクラスとなっている。


上級クラス:ウェポンマスターの特徴
指定した武器での攻撃、特にクリティカル系能力が通常ルールの限界を超えて強くなる
具体的には気のパワーでクリティカル率増加+10%、及びクリティカル倍率増加。
特技《クリティカル強化》と併せてサイズの達人となれば20%の確率でダメージ5倍!

*なお余談であるがウェポンマスターのクラス能力にKi Damage,Ki Critical,Ki Whirlwindなどと、やたらと気/ki推しが目立つのは、このクラスが元々AD&D2ndのケンセイ/kensaiを3.0上級クラスにリデザインしたものであるという事情がある。

このようにクラス能力で強化されたサイズのクリティカルが炸裂すれば番外席次が一撃でマーレを(…倒すのは《強打》入れる余裕無いから無理だよなぁ、最低でもクリティカル二撃で)倒す可能性もありえたが、今回そのロマンはマーレの〈エレメンタルフォーム・アース〉で早々に塞がれてしまったわけで、色々と台無しである。

 

Q:マーレが番外席次の一撃を腹に食らってヒールの巻物を使用してたけど、それだけ大ダメージだったって事?それともブラフ?

A:今戦闘において明らかにアインズの戦い方を意識しているマーレにブラフの意図があったかどうかについては判断が難しい所だが、D&D的見地からすれば治癒呪文の回復量バランスが悪すぎるが故のヒール一択だった、という可能性が考えられる。


以下D&D3.5版における治癒呪文のHP回復量(ドルイド巻物からの使用)

7Lv《ヒール/大治癒》:130(3.0版以前は全回復)
5Lv《キュア・クリティカル・ウーンズ/致命傷治療》:期待値27
*クレリックの場合はドルイドより習得Lvが1づつ低くヒールは6Lvとなる

見ての通りヒールに比べその1段階下位の単体回復魔法であるキュア・クリティカル・ウーンズの回復量はかなり心許ない。
マーレは呪文でクリティカルと急所攻撃に耐性を得ている以上、ダイス目爆発で瀕死の大ダメージということはまず無いが、ヒールより下位の呪文では回復しきれいほどのダメージは出ていたのでは?そのため大事を取ってヒールで回復したのではなかろうか。

勿論これらAD&Dから続くキュア系呪文の貧弱さは後の版になる程バランス改善されてゆくので、未来のMMOであるユグドラシルにそんな古臭い伝統が生き残ってるわけ無いだろう。と考えることも出来るのだが、これが現代のRPGにおいても深く考えずに元ネタD&Dまで遡れる仕様を引き継いでいる物も無いわけじゃないし…(メガヒールとかいう大層な名前の割に2d8しか回復しないWiz外伝など)。

 

Q:今回デケムの取得しているクラスにエレメンタリスト(アース)があるけど、今までのナーベラルやイビルアイの前例から見てこれって魔力系術者クラスじゃなかったの?ドルイド(信仰系)のデケムが魔力系魔法も使えるって事?

A:エレメンタリストの元ネタと思しきD&D3.5e上級クラス:エレメンタル・サヴァーント(『秘術大全』記載)は特定一種の元素(エア=電気、アース=酸、ファイア=火、ウォーター=冷気)を選び、そのエネルギー属性の呪文が強化されたりエレメンタルの耐性を得たりする上級クラスであるが、クラスの前提は<知識:神秘学>8ランク以上、<知識:次元界>4ランク以上、呪文修正特技《呪文エネルギー変更》、3Lv以上のエネルギー属性を持つ呪文(秘術とは指定されていない)を使用可能、などとややウィザード向けにデザインされてはいるものの、これらはクレリックドルイドなど信仰系の術者でも前提を満たせるうえ、このクラスの呪文詠唱能力は「1Lvごとに既存の呪文詠唱クラスに+1」のように算出されるので、おそらくオバロでもエレメンタリストは前提さえ満たせば魔力、信仰の区別なく累積して魔法能力を伸ばせる上級職であり、デケムはドルイド系術者1本伸ばしと考えてよいだろう。