Tomb of the Overlord

オーバーロード 元ネタ考察 備忘録

「半森妖精の神人」描写から見るルール その4

エレメンタルの特徴について 16巻209pぐらいから

"また敵と自分の双方が土に触れている限り、僅かではあるが全ての能力に対してボーナスがある"  16巻210p

アースエレメンタルの持つ特殊能力《地の体得》、自分と敵の双方が地面に接している場合、攻撃の命中判定とダメージに+1のボーナスを得る。また相手が空中または水上にいる場合は-4のペナルティを被る。


"土に潜る能力"
11巻でも出てきた〈大地潜り〉=《地潜り》の事


"つまりは酸などに弱く、そして――もう一つ、弱点属性がある" 16巻211p

D&D3版系のアースエレメンタルにはこれといった弱点属性は存在しないが、作中ではアインズがカコフォニック・バースト(音波)とマジックアロー(力場)でベヒーモスを撃破しているので、オバロでは酸と音波属性が弱点と考えられる。
通常エネルギーによる攻撃は物体に対しダメージが半減するが、音波はガラスや結晶質の物体に対して完全なダメージを与えるという補足ルールがあるので、ここからイメージを膨らました設定なのだろう。


"血を流さず急所が存在しない精霊はやっかいな相手だ" 16巻324p

種別:エレメンタルは種族能力として急所攻撃及びクリティカル・ヒットに完全耐性を持つ。


"高位の精霊は物理攻撃に対しての耐性を持つ"

D&D3.5eにおいて大型サイズ以上のエレメンタルはダメージ減少(物理耐性)を持つ。
例えば、エルダー・アース・エレメンタルは《ダメージ減少10/-》を持つが、これは物理攻撃を被弾するたび受けるダメージが10減ることを指し、さらに後ろ側の/-の部分はこの耐性の種別が無印であり、善とか殴打とか銀などで抜けるような属性は基本的に無いことを指す。

 

なにかの参考になるかもしれないのでD&Dエレメンタル4種の特徴をば。

アース・エレメンタル:高いヒット・ポイントと筋力を持ち壁として安定した使用感はあるのだが、外皮ACは高くとも低い敏捷によるペナルティのせいで実はアーマクラスは一番低くタンクと言えるかは微妙なところ。上記地潜りの他、突き飛ばしや武器破壊といった特殊能力も持つ。

ファイアー・エレメンタル:叩きつけ攻撃に火属性の追加ダメージが乗るので単純なドツキ合いなら一番高火力であるが、火抵抗を持つモンスターの多さや見るからに冷気が弱点など、使いどころを考える必要がある。

エア・エレメンタル:まずもって高い飛行移動速度を持ち使い易い。また竜巻形体に変身する事が可能であり、これによりサイズの大きくない雑魚を巻き込んで吹き飛ばすなど戦場コントロールにも優れる。

ウォーター・エレメンタル:泳げるし(当たり前)、特殊能力《水浸し》により周りの非魔法的な炎を消せるよ!(今初めて知った)。あとは水の体得、渦潮変身とかあるので水中戦闘では強いんじゃないでしょうか(使ったこと無い)。

 

 

"奇怪な杖から生えた刃が足に引っかかっていた。足払いされたのだ" 16巻264p
"バランスを崩して転倒させることが狙いだ" 298p

《足払い/Trip》は近接戦闘時に行える基本的な戦闘オプションの1つであり、足払い可能な形状の武器または素手戦闘でもって、仕掛けた相手に足払いを行い転倒させ伏せ状態にすることが可能である。
(番外席次の使用するサイズ/大鎌は足払い可能な武器、また例外的にだが遠隔足払い可能な武器やクラス能力も存在する)
判定は仕掛けた側の筋力と対象の筋力または敏捷力、どちらか高い方の抵抗判定で成否が決するが、これには体の大きさ(サイズボーナス)や足の本数などの修正が加わる。
また特技《足払い強化》があれば隙なく足払いを仕掛けることが可能であり判定に+4のボーナスが付く上、足払いに成功して転倒した相手にすぐさま追加の攻撃が可能となる。
また足払いに失敗すると、足払いし返される可能性がある(番外席次がバランスを崩しかけたように)。その場合は足払いに使用した武器を手放せば転倒は免れる。


と、今更3.5版足払いの基本をおさらいしたわけだがせっかくオバロに足払いが出てきたんだし、ここらで3.5版環境において一世を風靡していた前衛キャラメイク類型「トリッパー/Tripper」ビルドについて解説しておこう。

 

まずはコンボの基本パーツ
特殊武器スパイクト・チェイン、特技《特殊武器習熟:スパイクト・チェイン》、特技《迎え撃ち》、特技《足払い強化》(前提:《攻防一体》、知性13以上)

以上を揃えれば、とりあえずは以下の戦法が可能となる。
1:敵が攻撃あるいは突破しようと近づいてくる
2:スパイクト・チェイン(間合いの広く足払い可能な武器)の攻撃範囲内を横切る
3:機会攻撃発生により足払い、転倒したら特技の効果で追い打ち攻撃
4:次ラウンド、敵が立ち上がろうとする時にも機会攻撃発生、とりあえず殴る
5:敵の立ち上がりに待機アクションで再び足払いも可能

このように上手くいけば群がる敵どもを押しとどめ一方的に殴り倒すことも可能、長いリーチを生かした面の制圧能力という壁前衛として非常に有効なコンボだった。

このコンボをさらに強固なものとするためには以下の基本クラスがお勧めである。
ファイター:ボーナス特技が多いので早い段階でコンボが可能となる、他クラスに2Lvだけ混ぜるのもアリ
バーバリアン:クラス能力《激怒》で一時的に筋力アップするので、足払い成功率があがる
サイオニック・ウォリアー:ファイター程ではないがボーナス特技は多いし、超能力パワー《エクスパンション》でサイズ大型化し、さらなるリーチ拡大&足払い成功率アップ
ナイト:クラス能力《防御の砦》の攻撃範囲内を移動困難にする効果が戦場コントロールとしてスパイクト・チェインと相性が良い

次はお勧めの種族、下にいくほど強力だがレベルにペナルティが付く
ドワーフ:種族能力《踏ん張り》により足払い返しされにくい
ハーフオーク:筋力上がる、バーバリアン向け
チェンジリング:前衛向けステータスでは無いが変身能力者専用上級クラスに直行でき、リーチ拡大及び肉体能力値の上昇
ハーフジャイアント:《優れた体格》で筋力判定にボーナス、サイオニック・ウォリアー向け
ゴライアス:《優れた体格》及び種族専用のバーバリアンオプション《山の激怒》で激怒時サイズ大型化
ハーフオーガ:初めから大型サイズ、当然肉体能力値も高い
禁則事項》ハーフミノタウロス《です》:3版から3.5への移行時ぐらいに一部のパワープレイ環境でよく使われていた印象のある出典Dragon誌のやべーやつ。
種族テンプレートなので他の種族にくっけて混血のハーフミノ種族が色々と作れる。特に中型種族に使用すると莫迦みたいに筋力耐久が盛られサイズも大型に変化する。てかこれ、デザイナーはサイズの変更時に能力値が変化するって基本ルール、絶対失念してたよね…


なお後発サプリメント『プレイヤーズ・ハンドブックⅡ』再訓練ルールの章には、戦士レグダーが愛用のグレート・ソード(両手剣)からスパイクト・チェインへと乗り換えるイラストが掲載され、「レグダーよ、お前もマンチの道を歩むのか…」と、各方面からこれを嘆く声があがることとなった。

その後時は流れD&D4版でのチェイン弱体化、ついには5版で消失。足払い特化ビルトの話を聞くことも久しくなったが、どこぞの異世界では今でもこれを元気に振るっているパラディン娘が居ると伝え聞く……

「半森妖精の神人」描写から見るルール その3

今回も隙あらば3.5版語り、いくよー

 

"〈魔法の矢〉を選択したのは報復のためではない。範囲魔法などの場合、レンジャーのような敏捷性に長けている相手だと、確実なダメージにつながらない時がある。 ~中略~ 仲間がいるのだから確実にダメージを与えられる魔法を選んだのだ"   15巻136p

以前にも解説したが、範囲ダメージ魔法の多くは反応セーヴングスローの判定に成功することにより受けるダメージを半減する事が可能である。
そしてクラス:レンジャーは頑健及び反応セーヴ値が良好で伸びやすく、弓術レンジャーは能力値[敏捷力]も高い為、さらにこれにボーナスが付くことになる。
またレンジャーは高レベルで得るクラス能力《身かわし》により、反応セーヴ成功で本来半減のダメージがノーダメとなる。
一方、マジック・ミサイル呪文はダメージこそ低いもののセーヴ不可、絶対命中、力場属性という特性により確実にダメージを与えられる魔法と言える。

火滅聖典は今回〈インヴィジビリティ〉と〈マジック・アロー〉を習得した術者を揃えることで大物食いに成功したわけだが、D&Dの場合は《シールド》呪文やマジックアイテム《ブローチ・オヴ・シールディング/盾のブローチ》など低レベルの内からマジック・ミサイル呪文を防ぐ手段は色々とあるし、何より上位モンスターともなれば呪文抵抗を持っていることも珍しくないのでマジック・ミサイル一本でどうにかなる程甘い環境では無い。
なおこれは逆説的ではあるが、英雄レベルであってもマジック・ミサイル(に限った話ではなく各種の)対策を怠ればたやすく死に至る可能性がある、という教訓を含んでいる。

 

"最初に起こったのは音波の爆発。続いて生じたのは天使の翼"
"ベヒーモスを衝撃波の嵐が襲い、先ほどの豪雨もかくやという光の雨がその巨体を蹴踊する" 16巻237p

分かりにくいので補足しておくが、「爆発」や「衝撃波」と書かれた部分はカコフォナス・バーストによる音波属性攻撃だが、「天使の翼」及び「光の雨」の部分は〈魔法三重無詠唱化・上位魔法封印〉より解放された〈魔法三重最強位階上昇無詠唱化・魔法の矢〉のエフェクト描写、力場/フォース属性攻撃となる。

書籍3巻のシャルティア戦に比べるとずいぶんと描写を省略してるけど、アインズ様お気に入りの確実にダメージを与える手段の1つなんだろうね。

 

"範囲攻撃魔法も、拡散するのか、爆発するのか、はたまた放射するのかで、少しずつ違う" 16巻228p

こーいう3版ルールまんまな事を書かれると一通り解説しなきゃいけないんだろうけど、簡潔かつわかりやすく纏めるのには骨が折れる上、知ってる人には当たり前すぎて面白みが無いという困ったアレでもある。
まあ以前に「ファイアーボールの爆発は爆発じゃないよ」の所にも書いたが、ゲームプレイ上必要なルール要点としては、「効果範囲:拡散は遮蔽を回り込む」「ファイアーボール呪文のダメージによって障壁が砕け穴が開くと、効果範囲が許す限りその先へ炎は広がって行く」の2点ぐらいで、それ以上詳しく知りたい人はSRDかPRDJの「ファイアーボール/Fireball」「呪文の狙いをつける Aiming a Spell」「範囲/Area」「爆発、放射、拡散/Burst, Emanation, or Spread」あたりを読んでみてね。

要するに今回、エルフ王デケムが三重骸骨壁に対し効果範囲:拡散のダメージ呪文を選択すべき場面で効果範囲:爆発のシャイニング・バーストを使ってしまったのは、今まではベヒーモスの力押しだけで事足りてしまい、高位魔法が必要となるような強敵はいなかったという戦闘経験不足による選択ミスであり、さらにはこのシーンを書くに当たってくがねちゃんは丁度いい爆発の呪文が無いかドルイド習得呪文リストを精査しサン・バーストにしたんだろうなぁとか色々想像が付く。

 

"木を魔法的に加工してとてつもなく硬くして使っている" 16巻13p

D&D3版系では《アイアンウッド/鉄木》ドルイド6Lv呪文が相当する他、「ダスクウッド」「ブロンズウッド」といった金属素材とある程度の互換性を持つ木材がいくつか追加ルールに存在する。
これらは主に金属鎧を装備できないという誓いを持つクラス:ドルイドに強固な鎧を作成し与えるためや、手間はかかるものの通常金属の武器防具よりかは軽量化が可能といった点が本来デザイナーが想定した使い方だったんだろうが、甘い……見通しが甘すぎる!

3.0版『Defenders of the Faith』及び3.5版『信仰大全』登場の呪文、《ブランブルズ/野バラのとげ》及び《スパイクス/スパイク生やし》が色々と危険すぎた。(ブランブルズはクレリックドルイド2Lv、スパイクスはクレリックドルイド3Lvの呪文)

ブランブルズ呪文は木製の打撃面を持つ近接武器にしか効果がなく、武器の表面にトゲトゲを生やす事によりダメージに最大+10のボーナスが付く。
またスパイクスの方は持続時間が延び、追加効果でクリティカル率が2倍といった点が異なる上位呪文になっている。
まあクオータースタッフ使いのモンクやドルイド強化用にちょっと強めの効果にしたよ。てなデザインコンセプトだったんだろうけど…。

なにが問題かというと、ダメージに付くボーナス種別が書いてない。つまりルール的に無名ボーナスとなり、これらは全て累積しちゃうのである。

まずは前衛戦士のメインウェポンを前述の素材や呪文を使って作成する、これで木製グレート・ソードなんかが可能となる。出来上がった木刀にブランブルズ&スパイクスをかけれてやれば、みるみるトゲが生えてアラ不思議!2D6+20ダメージ武器の完成。これにさらに《グレーター・マジック・ウェポン》(強化ボーナスを与える呪文)も累積しちゃうんだから、目も当てられないバランスブレイカーとなった。

どんな祭りもいつかは終わりがくる……
事態を重く見たWotCデザイナー陣は後発サプリメント『呪文大辞典』で両呪文を改訂、呪文持続時間をラウンド単位へと思いっきり短くしたうえ、ボーナス種別を強化ボーナスへと変更しブランブルズ、スパイクス、マジック・ウェポンは全て累積しなくなった。これにより強いといえば強いけど、ダメージ減少(物理耐性)対策も考えるとわざわざ前衛の武器を木製にする程でもないバランスの呪文へと落ち着き、改造木製武器は下火となった。

今になっても後生大事に、古びた木刀や木製の鎖なんかを持ち歩いているファイターがいたら察してあげよう。
グッバイ ブランブルズ、フォーエバー スパイクス。
トゲトゲ呪文、版が変わっても決して君たちの事は忘れないよ

呪文 その32

〈エレメンタルフォーム/精霊形態〉 第9位階 
《エレメンタル・ボディ/元素の体》 ウィザード7Lv 『次元界の書』出展
術者は自分の肉体を特定種類の元素物質へと変成させ以下のエレメンタルの特徴を得る
暗視60フィート、挟撃状態にならない、毒および睡眠および麻痺および朦朧化および急所攻撃およびクリティカル・ヒットに完全耐性。さらに選択した元素に応じて以下の特殊能力を得る
風:飛行能力、風の体得
地:地の体得、突き押し、外皮強化
火:[火]に対する完全耐性、着火
水:水泳移動、水の体得、水浸し

盛りだくさんの能力を長時間得るバフ呪文、オバロで9Lvに変更されたのも納得の性能である

 

〈エレファント・イヤー/象の耳》 第2位階
《リスニング・ロアコール/聞き耳の奥義》 ウィザード、ドルイド、レンジャー2Lv 『冒険者大全』出典

技能<聞き耳>の判定にボーナスを得る。また術者が高い<聞き耳>ランクを持っているならば、非視覚的感知などの特殊能力も追加される。

 

〈トレマーセンス/振動感知〉 第4位階
《トレマーセンス/振動感知》 ウィザード3 レンジャー2Lv 『アンダーダーク』出典

残念ながらD&D3.5eではドルイドの習得リストには入って無い。
半径30フィートの振動感知能力を得る呪文だが、オバロ作中ではもう少し感知範囲は広いような描写となっている。

 

テンペスト/暴風雨〉第9位階
《ストーム・オヴ・ヴェンジャンス/天罰の嵐》 クレリック9 ドルイド9Lv

巨大な嵐の黒雲を空に作り出し、雷鳴、酸性雨、稲妻、雹、暴風雨を起こす呪文。
オバロ作中描写では直接ダメージを与えるような効果は無く、嵐による風力効果を重視した魔法の様だ。
視界制限及び移動の阻害、遠隔攻撃不可、呪文発動妨害(精神集中判定)など

 

〈カコフォナス・バースト/不快音の爆裂〉
《カコフォニック・バースト/不協和音の爆発》 ウィザード、バード呪文5Lv 『呪文大辞典』出典

以前に音波属性は耐性を持つモンスターが少ない為、ゲームバランスもあって大ダメージを出せれる呪文は無いとか何処かに書いたが、この《カコフォニック・バースト》こそ使い易い効果範囲を持ち、かつそれなりにダメージが出る数少ない音波ダメージ呪文である。
一応これより上位の音波属性呪文といえば《グレーター・シャウト》8Lvが存在するが、聴覚喪失と朦朧化の副次効果及び結晶状の物体に特効という特徴があるもののダメージ魔法としてみればかなり低く、《カコフォニック・バースト》の方が術者レベルによって増えるダメージ上限が高くなっている。

まあ要するに…最初の基本ルールに載った呪文とかよりかは、それより後に出版されたものの方が強いデータが多いというアレですよ、商業的な理由(販売促進)のために生まれた呪文の一つと言っていいだろう。

 

"神官などであれば死亡した直後にかければレベルダウンしない蘇生魔法などもあるし" 16巻213p
《リヴィヴィファイ/緊急復活》 クレリック5Lv 『呪文大辞典』出典

死んで1ラウンド以内の死体に発動すればレベルダウンせずに蘇生できる復活呪文である、触媒に必要なダイヤモンドも1,000gp相当で《レイズ・デッド》に比べ1/5とお得。
「いやいや、1ラウンド以内って使いにくいよ。生き返っても意識不明の重体(HP-1)じゃまたすぐに死ぬし…」と心配するクレリックの方もいるだろうがご安心。
これといくつかの呪文を組み合わせ使いこなせば「トゥルー・リザレクションのスクロールは28,825gpもするし使うにしてもレベルが足りない、買えるだけの金があっても田舎町には売ってない」という諸問題ともおさらば、安心して死のペナルティを回避することが可能だ。
まずは仲間が死んだら数ラウンドのうちに《ジェントル・リポウズ/安らかな眠り》*12Lv呪文を死体に使っておく。オイル(ポーション)にしておけば誰にでも使用可能だし、戦闘中にも使いやすい。これで《リヴィヴィファイ》よりは時間的余裕があるし、数日間は死体が腐らないので運搬時に不快な思いをしなくて済む(ルールブックにそう書いてある)。安全な街に辿り着いたらまずは《レヴナンス/一時復活》(クレリック4Lv、呪文大辞典)と《リヴィヴィファイ/緊急復活》呪文を仕込んでおく。次にレヴナンス呪文を使うわけだが、これは死んでからレベルラウンド以内の死体にのみ効果を発揮する呪文で、一時的に数分間バフ付き蘇生されるという火事場のクソ力的呪文である。ジェントル・リポウズのおかげでこの時間制限を伸ばしているわけで仲間は無事蘇生され、数分後レヴナンスの効果が切れた途端に再び死ぬ。そこで待ち構えていたリヴィヴィファイ呪文を使い、安全安価にレベルダウン無し復活するというマンチ技高度なテクニック、やはりサプリメント‥‥!!  追加ルールは全てを解決する‥‥!!

 

〈アース・マスター/大地の支配者〉
"土か……。んー。読み違えると勿体ないけど……" 16巻202p
《アンダーマスター/地下を統べるもの》 ドルイド9、ウィザード9Lv 『アンダーダーク』出典

術者は地面に立っているか地中にいる限り、大地を統べる力を獲得する。具体的にはアンダーマスター呪文の持続時間の間、石や土に関する以下の呪文が使い放題となる。
「地潜り、地震、掘削、重力反転、石への溶け込み、大地鳴動、石の軟化、石像化、石材形成、石の球体、石の語り、石を肉に、岩を泥に、泥を岩に、石の壁」呪文発動には触媒としてディープ・ブルー・スピネル(500gp以上の価値)が必要。

今回アインズは土で覆われた室内を見て、何らかの土を使った攻撃や戦場コントロールでくると想定し土や石、大地の操作に特化した魔法〈アース・マスター〉をスクロールから発動したのだが、エルフ王デケムがベヒーモスの戦闘形態移行に伴い部屋中の土を集めてしまった為、魔法の効果は発揮されなかったよ勿体ない……というオチが筆者の推測である。

*1:オバロにおけるマジックアイテム〈シュラウド・オブ・スリープ/安眠の屍衣〉と同じ効果

クラス考察 その10

"はたまた祝福された妖精/シーリーコートとか呪われた妖精/アンシーリーコートを友とするような職業を有しているということだろうか。あれは特殊能力のーつとして、妖精の小道みたいな転移系能力も使用できるクラスだったはずだ" 15巻296p

妖精と仲良くなるクラス、と言えば『魔道師大全』記載の秘術系上級クラス:ワイルド・ソウルが該当する。

主な能力は特定呪文の任意発動能力(各位階1個づつ最大9個追加)と「妖精の眷族招来」によるフェイ、魔獣、人怪、異形類の召喚能力を得る(残念ながら妖精の小道といったテレポ系は見当たらない)。

追加呪文リストや召喚出来る妖精のリストはシーリー、アンシーリーどちらと仲良くなるかで選択する事となるが、強いて言えば良い妖精を選んだ方がメリットが大きいように思われる(6Lvのトゥルー・シーイングと9Lvのタイム・ストップ習得は大きい)。

呪文発動能力の伸びは9/10Lvと、最初に1Lv分遅れてしまうのがちょっと惜しいクラスだが、これら実質習得呪文追加な能力類はソーサラー、ウォーメイジといったクラスの進む先として極めて有益である。特に呪文は多数覚えるけど攻撃呪文しかリストにないウォーメイジの手札を増やしてくれる意義は大きく、なにより「時間停止からDBF*1ずらりと並べ、煮えた台詞吐いて一斉発射」などといったプレイングも可能にするこのクラスはお勧めである。

 

*以下のクラスはオバロ作中で名前は出ているものの詳細は判明していない、あくまでD&D3版系の物として参考程度に。

 

〈サムライ/侍〉

D&Dにおけるサムライの正式ルール採用は1985年のAD&D1st東洋世界サプリメント『Oriental Adventures』とやや遅めだが、ドラゴン誌の記事や各プレイグループのハウスルールまで目を向けてみるとオリジナルD&Dが出て2年経たないうちの1976年頃*2からに既にサムライのアイデアは複数見られ、ニンジャなどと併せて東洋的クラスは古くから人気があったようだ。

これだけ古くからあるクラスならば、ファンタジー世界でも侍の確固たるイメージが確立していそうなものだが、秩序属性限定という点を除けば3版系だけを見てもデザインされるたびにそのサムライ像というのはバラバラである。

3.0版『Oriental Adventures』サムライ
基本は「学のある中装ファイター」といったところ、つまりレベルアップと共に戦闘用ボーナス特技が多くもらえる以外、特殊なクラス能力などは無い。
貰える特技は所属する氏族によってリストが変わり、これにより「二刀流軽装剣士」とか「金棒大鎧戦士」など色々カスタマイズが可能。
他には東洋世界独自の技能として《イアイジュツ・フォーカス》を持ち、立ちすくみ状態の相手に対する斬撃武器の抜き打ちに追加ダメージが乗る。
東洋世界における基本的な戦士/ファイターといったコンセプトでデザインされているが、上記居合術や高い意思セーヴ(心術耐性)などにより、ほぼファイター上位互換なクラスとなっている。

3.5版『戦士大全』サムライ
主なクラス能力はカタナとワキザシ(大小)による二刀流と《眼光》《気合の一撃/Kiai Smite》など。
重装鎧での二刀流+パラディン以外の魅力を使うクラスが欲しかった、といったコンセプトなんだろうが、3.5版前衛基本職の中でもトップレベルに使えない子…

まずレンジャーに比べ二刀流の成長が遅く、逆手2回目攻撃が可能となるのは11Lvになる。ぶっちゃけ重装と二刀流を両立させるコンセプトならファイターベースで盾二刀流のほうがよほど強い。
魅力系特殊能力はどうかというと、弱すぎてキャラメイク時に魅力を切られるレベルである。眼光は周囲の敵に威圧判定できるが、10Lvでやることか?(判定成功しても"恐怖"まで行かないただの"怯え"である)そんな暇あったらさっさと突撃して欲しい。気合の一撃はというと二刀流というコンセプトに合ってないし、なによりパラディンの悪を討つ一撃/Smite Evilと違ってレベルが上がってもダメージが増えたりしない産廃である。

どれだけ頑張ろうが宮本武蔵の再現は無理っぽい3.5サムライ、主な使い道はというと基本ファイターに1Lvだけ混ぜて最短でケンセイやエキゾチック・ウェポンマスターを目指すといった、侍と主張するには少なすぎるサムライ成分となることが殆どだった。

Pathfinder RPG『Ultimate Combat』サムライ
パスファインダー版のサムライはというと、キャヴァリアー/騎兵の代替クラスとしてデザインされている。
すなわち騎士団に所属し馬に乗って旗印を掲げ、弓を撃ったり味方の士気を鼓舞したり気合で自己ブーストして戦うナイトの変種である。
封建社会における軍事貴族といってしまえば以前のものより歴史的に正しいんだろうが…なんというか、ぼくの欲しかったサムライはそうじゃない。

やっぱりトゥー・ヘヴンス・アズ・ワン(二天一流のことらしい)でキアイとかイアイとかカラテとかキ・パゥワーでダイセンプゥ!な超人戦士であり、任務に失敗すれば名誉点を失いセップク!*3ダイショーを奪われてもセップク!それがいやならローニン!おなかが減ったらグンニョキ!
そんなミヤモト・ムサシとミフネが悪魔合体したカンチガイニッポンを体現するかのようなクラスであって欲しい……そう願ってしまうのは我儘(男の罪)だろうか?

 

〈ローニン/浪人〉

『戦士大全』記載の上級クラス:ローニンは主にサムライ向けの再就職先である。
秩序属性以外で刀の習熟とBAB6(戦士系最低6Lv)があれば成れる前衛上級クラスだが、パラディン悪堕ちの時と同じような侍レベル変換特別ルールがあるので、「昔はこれでもマスター侍だったんだけど色々あってな…」などと身の上話を語ればクラス前提を無視したサムライ1/ローニン10Lvからスタートする事も可能である。

主なクラス能力は《悪名》《急所攻撃》《バンザイ突撃/Banzai Charge》といったところ。
悪名は自分の過去を知る人物との交渉などにペナルティが掛かるが、まあ戦闘に関係ないからどうでもいい(マンチ思考)。
バンザイ突撃はそのまんま、突撃時にアーマクラスを下げた分ダメージが増えるという分かり易く強い能力である。
これと急所攻撃を生かすキャラメイクはというと……例えば酔拳の千鳥足*4を使い、挟撃位置への《バンザイ突撃》《二刀の飛びかかり》すれば毎ラウンドけっこうなダメージが出せるはず(ドランケン・ローニン)。

そもそも侍=基本職、浪人=上級職という概念に問題があるような気がしないでもないが、少なくとも3.5版では明らかにサムライよりローニンのほうが強いんだから、ちかたないね。

*1:《ディレイド・ブラスト・ファイアーボール/遅発火球》をDBFと略すと(海外サイトで稀に見られる)なんか厨二感増してかっこいい

*2:Dragon#3(1976年10月号)にSamurai、Dragon#16(1978年7月号)にはNinjaが掲載

*3:AD&D1st『Oriental Adventures』(1985)ではゲームブック『サムライの剣/Sword of the Samurai』(1986)に先駆けて名誉点ルールを採用しており、これによりサムライの個人名誉点が一族の基本名誉を下回った場合、地位を失いローニンとなる。またこのルールではセップクハラキリについては特に書かれていないが「名誉がゼロ以下になったキャラクターはゲームから退場する。プレイヤーはキャラクターの記録用紙をくしゃくしゃにして捨てなければなりません」とあり、つまりはそういうことなんだろうね……(おいは恥ずかしか!生きておられんごっ!→介錯しもす!)

*4:ドランケン・マスター2Lvの能力《千鳥足》は"突撃"の前提である直線移動を行う必要が無くなる。すなわち敵前で前後に10フィートふらふらと移動するだけでも突撃になるし、挟撃位置(急所攻撃の前提)にぐるっと回り込んでの攻撃も突撃扱いとなる

「半森妖精の神人」描写から見るルール その2

"エルフ王の視線自体はわずかに揺れてはいた。シュエンの位置を〈不可視化視認〉などの魔法を使って完壁に捉えていたわけではない。しかしながらその化け物じみた知覚力で〈不可視化〉や〈静寂〉に守られたシュエンを見抜いている。だからこそシュエンは距離を取るのだ。看破系の能力で見抜いていないのであれば、距離はシュエンの味方であり、相手の探知を難しくさせる"  15巻138p

11巻アウラが行っていた<聞き耳>及び<視認>技能による不可視存在の発見と位置特定、それぞれ距離10フィートごとに判定に-1のペナルティが付く(20面体ダイスによる判定なので-1は成功率-5%)。

追記:エルフ王デケムの知覚力について
D&D3.5eドルイドはクラス技能として<聞き耳><視認>を持ち、技能ポイントは4(ファイター以上レンジャー以下)、そして呪文発動に必要な高い能力値[判断力]による修正もある為、しっかりと技能ポイントを振り込んでいるならばレンジャーと同等の高い知覚力を発揮させることも不可能ではない。
しかしながら16巻ではアインズの〈完全不可知化〉に全く気付いておらず(この時点で少なくともアウラよりかはかなり<視認>が劣る)、エルフ王が〈不可視化〉を看破出来るほどの高い知覚力だったかについては疑念が残る。
以上の情報から推測するとエルフ王はシュエンの〈不可視化〉を高い知覚力で見破ったのではなく、第四位階魔法〈トレマーセンス/振動感知〉による振動感知能力で位置を特定していた可能性も高い。
またその場合、シュエンに〈フライ/飛行〉を使うだけの魔力が残っていたならば、逃走には成功していただろう。

 

"誰もいなかったはずだ。それは間違いない。標的以外のエルフの姿はなかった。標的に接近する際には〈不可視化視認〉だって使っていたのだ"  15巻137p

シー・インヴィジビリティで見えないとなると、アインズ愛用の〈パーフェクト・アンノウアブル〉といった上位の不可知化魔法を使用しているか、あるいはニンジャの〈影潜み〉のような隠れ身拡張系のクラス能力で姿を消していた可能性もある。一応3.5eの高レベルレンジャーは影潜み元ネタの《影隠れ/Hide in plain sight》(自然環境限定)を持ってるけど、エルフ王のクラスはドルイド系っぽいし、どうなんだろ。

追記:"デケムの転移は自身と繋がった精霊の元に移動するもの" 16巻260p
この種明かしとアインズ遭遇場面から推測するにプライマル・アースエレメンタルであるベヒーモス〈大地潜り〉により先行偵察させ、精神的リンクにより情報収集。エルフ娘がやられたので武具を回収するためベヒーモスの元へ転移、シュエンは地面に潜っていたベヒーモスに気付いていなかったので突如エルフ王が現れたように見えた、というのが真相のようだ。

一応16巻194pでアインズは"潜伏関係の特殊技術"による可能性についても考えているので、上記の「隠れ身拡張系のクラス能力」というのも大きく的を外れた推測では無かった……と思いたい。

 

"放たれた一本の矢が木々の隙間をうねるように抜けていくのが見えた。 そして空中で拡散。何十本もの矢の雨へと変わった"   15巻132p

弓による遠隔攻撃での遮蔽無視と範囲攻撃、といわれてパッと思いつくのは上級クラス:アーケイン・アーチャーの持つ能力《壁抜けの矢》と《矢の雨》であるが、エルフ娘はネームレベル未満の弓兵のようなのでクラス能力では無く弓の特殊能力に因るものかも。あとは3.5版レンジャーで再現するなら下記の呪文を使うことになるだろう。

《ガイデッド・ショット》1Lv:距離による命中ペナルティと遮蔽ACを無視
《アロー・ストーム》4Lv:攻撃範囲内の全ての敵に対し弓による攻撃1回、ターゲット最大数は自身のレベル数まで制限される
*それぞれ『冒険者大全』収録、アロー・ストームは『呪文大辞典』で3Lvに変更

いかにも漫画ちっくでかっこいいアロー・ストームだが、ターゲット一人に対し矢1本ではどうあがいても同レベル術者の範囲ダメージ魔法に遠く及ばない。
また作中エルフ娘が行っていたような戦法や長距離スナイプを可能にする呪文、クラス能力はD&D3.5eには色々とあるのだが、ダンジョンが主戦場な冒険者になかなかそのような遠距離戦を要する状況は少なく、キャラメイク夢想するも絵に描いた餅になりがちである。

 

"特殊技術を使用して同時に二射する" 15巻258p

特技《束ね射ち/Manyshots》

近くにいるターゲットに対して同時に複数の矢を放つことができる、また弓術レンジャーはこれを6Lvにボーナス特技として取得する。

ややこしいが特技《速射/Rapid Shot》の全ラウンドアクションでのフルアタック時に1回の追加攻撃という効果に対し、束ね射ちの方は「標準アクション」として1回の攻撃ロールで2本の矢を放つ、つまり通常は移動後の攻撃で1本発射のところを2本以上に増やせる、また特技《機動射撃》があれば移動>束ね射ち>移動も可能に。

束ね射ちはBAB(基礎命中)上昇と共に強化され、最終的に4本同時に矢を放つ事が可能、位置取りしやすくなることと併せて弓主体のキャラメイクなら取得必須のように見えるかもしれないが…

まず対象が30フィート以内という距離制限により、敵の突撃射程圏内まで近づく必要がある。また複数射撃ではあるもののローグの急所攻撃などの追加ダメージは1本にしか乗らない。4本同時発射は強く見えるかもしれないが、その場合の命中ペナルティは-8と多大なものとなる(というかローグ系の命中じゃ当たる気しねえ)。そもそも射線が通っていて壁前衛がしっかり仕事してるならフルアタック《速射》で固定砲台すれば良いわけで、束ね射ちの出番は無い。
このように評価の別れる特技ではあるが、それでも「標準アクションの1回攻撃を強化」という効果は貴重であり、呪文による補佐や高価なベイン・アロー(特効矢)をぶっこんで、ここぞという時に確実に束ね射ちを当てにいくようなプレイングも当時は見られた。

目指せエルフの魔法戦士(ロマン枠)

みんなはRPGのエルフにどんなイメージを抱いてる?
弓を持ったレンジャー?ああ、ウッドエルフだといい感じだね。
それとも魔法使い?グレイエルフだと知力伸びるし総合魔術*1や、にわか使い*2は強いよねぇ。
えっ、シャーマン?おっとごめん、ソード・ワールドは詳しくないんだ。

エルフも色々あるけれど、でもやっぱり僕はエルフのドラゴンナイト*3魔法戦士*4が好きだなぁ……

 

たわごとは程々にして以下本題。

 

"そんな環境で生活していれば、エルフの多くがレンジャーかドルイドとしての実力をつけているというのも当然のことだろう"   15巻87p

オバロはともかく、D&D3.5eにおける各エルフ種の適正クラス*5は次のようになっている。
ハイエルフ:ウィザード、ウッドエルフ:レンジャー、ワイルドエルフ:ソーサラー、グレイエルフ:ウィザード、ダークエルフ:ウィザード

ほかPHBの記述によるとエルフの間ではファイター/ウィザードはごく当たり前の存在である*6とされている。またサプリメント『自然の種族』では森に生きるエルフはレンジャーが多く弓術を学ぶ者が多い、バードは共同体でたいそう尊敬される、ローグはエルフにとって良い選択肢でかなり一般的、少なからぬエルフがドルイドの道を歩むといった記述が見られる。

遡ってあらゆるRPGの源流、AD&D1stにおいてデミヒューマン各種のクラスレベル制限は過酷であったことが知られているが、エルフではどうだったかというと…
ファイター:7Lvまで
マジックユーザー:11Lvまで*7
シーフ:Lv上限無し*8
クレリック:7Lvまで、ただしNPCのみ
アサシン:10Lvまで
レンジャー、ドルイド含む他のクラス:なれません

AD&D1st基本ルールにおいてファイター/マジックユーザーのマルチクラス*9が可能な種族はエルフ及びハーフエルフのみであり、またモンスターマニュアル記載のNPCエルフ集団遭遇データもクラス構成の多くがファイター/マジックユーザーであるなど、この頃のエルフはファイター/マジックユーザー、俗に言う魔法戦士が最も一般的だったと考えられる。またクラシックD&D系のクラスと種族を統合したエルフも、このAD&D1stのファイター/マジックユーザーを簡易的にしたものと言えるだろう。

以上のように古いD&D系ではエルフのレンジャーやドルイドはあまり想定されていないようなのだが、これらエルフのクラス制限に関してはガイギャックスが興味深いコメントを残している。*10

Q:エルフのマジックユーザーが人間よりLv上限低いのに納得がいきません!
A:ファンタジー小説にエルフの魔法使いなんていないよ。

エルフの魔法使いだのレンジャーだの精霊魔法を得意とするといったイメージはほぼRPGが生れて以降に作り上げられたものであり、古典ファンタジー*11ひいてはそれらを参照した初期D&Dにおいて、そのような類型は未だ成立していなかったという事実は心に留め置くべきだろう。

*1:エルフ・ウィザードのクラスオプション、使用可能なもっとも高いレベルの呪文を1つ追加して準備出来る

*2:召喚術士のクラスオプション、割り込みでの短距離瞬間移動という強烈な回避技が可能となる

*3:RPGのエルフではなく、エルフのRPG

*4:3.5版では基本クラス:ダスクブレードがまさにエルフ魔法戦士の設定を持つクラスだが、エルフでなくともなれるし、なんならエルフじゃない方が強い

*5:マルチクラス時に経験値ペナルティを受けにくい

*6:3版マルチクラスルールでは色々と問題だらけで早々に魔法戦士系上級クラスに進む必要があり、この記述には多くのゲーマーからツッコミが入った

*7:魔法使い上限11Lvは低く見えるかもしれないが、エルフとハーフエルフ除く他のデミヒューマンはそもそもマジックユーザーになれないことを考えると、これでもエルフは魔法適正がある方と言える

*8:シーフは全ての種族でレベル上限が無い、あらゆる文化圏に泥棒は存在するからだとか

*9:3版のものとはかなり異なり、レベルの遅れや低いHPという不利はあるものの実用的な範疇。またAD&D1stでは鎧による呪文失敗のルールは無く、ファイター/マジックユーザーであるならばプレートメイルを着用しての呪文発動も可能であるが、AD&D2ndでは鎧はエルヴンチェイン着用でのみ呪文発動が可能となった

*10:EN Worldフォーラム Q&A with Gary Gygaxスレ#2567 あたりを参照。改めて読み返してみるとエルフの原型についての反論というよりは、ヒートアップする議論に対し「ゲームデザインにリアルを持ち込むな」と釘を刺した、といったニュアンスか。なおこの後には「作り話の足が速い種族のことなんか忘れて、君も人生と向き合う時なんだ」という畜生度の高い煽りコメントが続く(笑

*11:RPGの成立以前に人型種族としてエルフが登場した作品といえばロード・ダンセイニ『エルフランドの王女』、ポール・アンダースン『折れた魔剣』、J・R・R・トールキンホビットの冒険』『指輪物語』が著名な物だが、この中で明確に「エルフの魔法使い」と言えるキャラとなると、『エルフランドの王女』のエルフ王ぐらいか?

「半森妖精の神人」描写から見るルール その1

下巻もすぐに控えているし、ルール関係は後回しにして種族まわりの与太話を先にしとこう。さてと……やりますかー

 

〈オーク/豚鬼〉について

豚顔オークの起源については諸説入り乱れているが、はっきりとその流れを決定づけたものといえば、やはりAD&D1st『Monster Manual』(1979)記載のデイヴ・サザーランド3世によるオークのイラストであろう。
和製RPGでオーク=豚人の不文律がまかり通っているのは、RPG自体が目新しく作成も手探りだった80年代初頭に多くのゲームデザイナーがこのモンスターマニュアルを参照したからに他ならない。
豚オーク@サザーランドはAD&D1stモンスター・マニュアル以降描かれることは無く本家D&Dにおける豚顔オークの血脈は絶たれたが*1、これが40年経った今でも和製RPGラノベファンタジーに引き継がれていることは感慨深い。

さて、D&D3.5e環境でのプレイヤー種族としてのオークはどうかというと、これは文字通り最強である。
LA0、種族HD1以下、よーするにPC1Lvからスタートできて経験値ペナルティのない種族は和訳された範囲でおよそ30種、これが未訳サプリやドラゴン誌、3.0アップデートにワールドセッティングによる差異まで含めると200オーバー(途中で数えるのをやめた)と、まさに甚大な選択肢があるわけだが、この中でオークは「筋力への修正+4」を持つ唯一無二の種族であり他は全て+2以下であった。

まあ実際のところは基本悪属性だとか日光が苦手とかPCとしては使いにくい面もあり、レベル調整値0で筋力高い種族使いたいならクラスオプションも豊富なハーフオークにしとけって意見が大半だったが。

 

追記:『ゴブリンスレイヤー』関連の記事がまとめ系サイトに載るや否やすぐさま書き込まれる荒しコメントの中には「RPGオークを豚鼻にしたのはPORKとORKをかけたD&Dルールブック改訂版のダジャレイラストがルーツ」といったコピペが含まれている事が多い。
この「D&D起源」と「ポークにかけたジョーク」が合わさった風説は恐らく中つ国Wikiのコメント欄あたりが情報元なんだろうが、ほぼ誤情報と言える。

まず「D&Dルールブック改訂版」というのは上記AD&D1st『Monster Manual』のことを指しているのであろうが(AD&D1stMM以前にも少数ながら豚オークのイラストはある)これは断じてダジャレイラストではない。

このイラストについてはガイギャックスが語っていた「イラストレーターとのコミュニケーション不全が原因」という理由が良く知られているが、後に掲示板で*2「サザーランドにオークは豚みたいな顔って言ったら、文字通りそのまんまにしちゃったよ!」という面白エピソードとしてこれを述懐している。しかしながらこの話にPORKは出てこないしそもそも何故ガイギャックスが「オークは豚みたいな顔/pig-like faces」と言ったかの理由も不明である。

この他にも豚顔オークの起源には、「ディズニーアニメ『眠れる森の美女』に登場した下っ端悪役が起源」説や「ヒルデブラント兄弟が書いた指輪物語カレンダーのイラストが起源」説などがあるが、これらがD&DすなわちRPGのオークに影響をあたえたのかどうかに関してはどれも推測の域を出ず、ただはっきりしとているのは(オークに限らずRPGのモンスター全てに言えることだが)AD&D1st『Monster Manual』の影響力がとにかく大きかった、という事実だけである。

 

〈ハーフエルフ/半森妖精〉について

ハーフエルフはエルフと人間の能力が半分ずつあるみたい。 
つまり森でも都会でも半分不自由な毎日を送る

コピペはさておき、ハーフエルフといえば不幸な生まれと相場が決まっており(偏見である。最近のはそうでもない)、幼少期より厳しい世間の荒波に揉まれた為か、D&D3.5eのハーフエルフは交渉と情報収集に+2の種族ボーナスを持つ。その他の利点はというとどれもパッとしないというか...エルフのような尖った能力修正があるじゃなし、人間のようにボーナス特技があるじゃなし、パワーを求めるならわざわざハーフエルフをPCに選ぶ必要性は無い。
一応ハーフエルフ専用上級クラスなんかもあるけど、親の血が憎い暗殺者って重いよ!...この興味深いロールに挑戦する事は君にとって良い経験となるだろう(ルールブック記述風投げやり)。

 

メカ天使
秩序属性であり神の教義に盲目的に従うその姿や裁定者としての性質からか、天使に機械的なイメージを持つものはオバロアニメ版に限らず日本のオタ界隈では古くから見られる。
(漫画BASTARD!!や、真女神転生における金子一馬デザインの天使など)
これがD&Dの天使(エンジェル)ではどうなっているかというと、その姿は「でっかいハゲ」が主流だが、おしおき天使「イネヴァタブル」などはメカヌス出身ということもあり、かなり機械的なデザインとなっている。
しかしながらこのメカメカしい@吾妻ひでおデザインは3.0版(2000年)以降からの物であり、私見だがこれには日本のアニメ漫画からの影響があったんじゃないかなぁと思う。

 

ツンゴグァ様 185p

クラーク・アシュトン・スミス著の幻想小説『七つの呪い』に登場する旧支配者、ツァトゥグァが元ネタであると思われる。クトゥルフ神話大系作品におけるツァトゥグァの設定解説云々はよそに任せるとして、ここではD&D3版系サイトに求められるだろう情報、つまりD20化されたデータを載せておく。

ツァトゥグァ 超大型サイズのグレートオールドワン
神格ランク4(半神)中立にして悪 35HD 脅威度39
領域:知識、破壊、魔術
(オバロ換算するとレベル122難度409ぐらいになる)

知識*3と魔術*4の領域が魅力的な神様だが、まーわざわざこんなの信仰しなくてもボカブでいっかぁ。誘拐エルフ君には悪いけど。

*1:3rdのオークは「猪の牙に似た下の犬歯が目立つ豚のような顔をしている」とMMにて描写されているが、イラストはそこまでストレートな豚顔ではない

*2:Q&A with Gary Gygaxスレ#8398 2007/10/31

*3:特典:全ての知識技能がクラス技能になる、占術呪文を術者Lv+1で発動

*4:特典:クレリックLv/2のウィザードとして巻物やワンドを使用可能