Tomb of the Overlord

オーバーロード 元ネタ考察 備忘録

クラス考察 その10

"はたまた祝福された妖精/シーリーコートとか呪われた妖精/アンシーリーコートを友とするような職業を有しているということだろうか。あれは特殊能力のーつとして、妖精の小道みたいな転移系能力も使用できるクラスだったはずだ" 15巻296p

妖精と仲良くなるクラス、と言えば『魔道師大全』記載の秘術系上級クラス:ワイルド・ソウルが該当する。

主な能力は特定呪文の任意発動能力(各位階1個づつ最大9個追加)と「妖精の眷族招来」によるフェイ、魔獣、人怪、異形類の召喚能力を得る(残念ながら妖精の小道といったテレポ系は見当たらない)。

追加呪文リストや召喚出来る妖精のリストはシーリー、アンシーリーどちらと仲良くなるかで選択する事となるが、強いて言えば良い妖精を選んだ方がメリットが大きいように思われる(6Lvのトゥルー・シーイングと9Lvのタイム・ストップ習得は大きい)。

呪文発動能力の伸びは9/10Lvと、最初に1Lv分遅れてしまうのがちょっと惜しいクラスだが、これら実質習得呪文追加な能力類はソーサラー、ウォーメイジといったクラスの進む先として極めて有益である。特に呪文は多数覚えるけど攻撃呪文しかリストにないウォーメイジの手札を増やしてくれる意義は大きく、なにより「時間停止からDBF*1ずらりと並べ、煮えた台詞吐いて一斉発射」などといったプレイングも可能にするこのクラスはお勧めである。

 

*以下のクラスはオバロ作中で名前は出ているものの詳細は判明していない、あくまでD&D3版系の物として参考程度に。

 

〈サムライ/侍〉

D&Dにおけるサムライの正式ルール採用は1985年のAD&D1st東洋世界サプリメント『Oriental Adventures』とやや遅めだが、ドラゴン誌の記事や各プレイグループのハウスルールまで目を向けてみるとオリジナルD&Dが出て2年経たないうちの1976年頃*2からに既にサムライのアイデアは複数見られ、ニンジャなどと併せて東洋的クラスは古くから人気があったようだ。

これだけ古くからあるクラスならば、ファンタジー世界でも侍の確固たるイメージが確立していそうなものだが、秩序属性限定という点を除けば3版系だけを見てもデザインされるたびにそのサムライ像というのはバラバラである。

3.0版『Oriental Adventures』サムライ
基本は「学のある中装ファイター」といったところ、つまりレベルアップと共に戦闘用ボーナス特技が多くもらえる以外、特殊なクラス能力などは無い。
貰える特技は所属する氏族によってリストが変わり、これにより「二刀流軽装剣士」とか「金棒大鎧戦士」など色々カスタマイズが可能。
他には東洋世界独自の技能として《イアイジュツ・フォーカス》を持ち、立ちすくみ状態の相手に対する斬撃武器の抜き打ちに追加ダメージが乗る。
東洋世界における基本的な戦士/ファイターといったコンセプトでデザインされているが、上記居合術や高い意思セーヴ(心術耐性)などにより、ほぼファイター上位互換なクラスとなっている。

3.5版『戦士大全』サムライ
主なクラス能力はカタナとワキザシ(大小)による二刀流と《眼光》《気合の一撃/Kiai Smite》など。
重装鎧での二刀流+パラディン以外の魅力を使うクラスが欲しかった、といったコンセプトなんだろうが、3.5版前衛基本職の中でもトップレベルに使えない子…

まずレンジャーに比べ二刀流の成長が遅く、逆手2回目攻撃が可能となるのは11Lvになる。ぶっちゃけ重装と二刀流を両立させるコンセプトならファイターベースで盾二刀流のほうがよほど強い。
魅力系特殊能力はどうかというと、弱すぎてキャラメイク時に魅力を切られるレベルである。眼光は周囲の敵に威圧判定できるが、10Lvでやることか?(判定成功しても"恐怖"まで行かないただの"怯え"である)そんな暇あったらさっさと突撃して欲しい。気合の一撃はというと二刀流というコンセプトに合ってないし、なによりパラディンの悪を討つ一撃/Smite Evilと違ってレベルが上がってもダメージが増えたりしない産廃である。

どれだけ頑張ろうが宮本武蔵の再現は無理っぽい3.5サムライ、主な使い道はというと基本ファイターに1Lvだけ混ぜて最短でケンセイやエキゾチック・ウェポンマスターを目指すといった、侍と主張するには少なすぎるサムライ成分となることが殆どだった。

Pathfinder RPG『Ultimate Combat』サムライ
パスファインダー版のサムライはというと、キャヴァリアー/騎兵の代替クラスとしてデザインされている。
すなわち騎士団に所属し馬に乗って旗印を掲げ、弓を撃ったり味方の士気を鼓舞したり気合で自己ブーストして戦うナイトの変種である。
封建社会における軍事貴族といってしまえば以前のものより歴史的に正しいんだろうが…なんというか、ぼくの欲しかったサムライはそうじゃない。

やっぱりトゥー・ヘヴンス・アズ・ワン(二天一流のことらしい)でキアイとかイアイとかカラテとかキ・パゥワーでダイセンプゥ!な超人戦士であり、任務に失敗すれば名誉点を失いセップク!*3ダイショーを奪われてもセップク!それがいやならローニン!おなかが減ったらグンニョキ!
そんなミヤモト・ムサシとミフネが悪魔合体したカンチガイニッポンを体現するかのようなクラスであって欲しい……そう願ってしまうのは我儘(男の罪)だろうか?

 

〈ローニン/浪人〉

『戦士大全』記載の上級クラス:ローニンは主にサムライ向けの再就職先である。
秩序属性以外で刀の習熟とBAB6(戦士系最低6Lv)があれば成れる前衛上級クラスだが、パラディン悪堕ちの時と同じような侍レベル変換特別ルールがあるので、「昔はこれでもマスター侍だったんだけど色々あってな…」などと身の上話を語ればクラス前提を無視したサムライ1/ローニン10Lvからスタートする事も可能である。

主なクラス能力は《悪名》《急所攻撃》《バンザイ突撃/Banzai Charge》といったところ。
悪名は自分の過去を知る人物との交渉などにペナルティが掛かるが、まあ戦闘に関係ないからどうでもいい(マンチ思考)。
バンザイ突撃はそのまんま、突撃時にアーマクラスを下げた分ダメージが増えるという分かり易く強い能力である。
これと急所攻撃を生かすキャラメイクはというと……例えば酔拳の千鳥足*4を使い、挟撃位置への《バンザイ突撃》《二刀の飛びかかり》すれば毎ラウンドけっこうなダメージが出せるはず(ドランケン・ローニン)。

そもそも侍=基本職、浪人=上級職という概念に問題があるような気がしないでもないが、少なくとも3.5版では明らかにサムライよりローニンのほうが強いんだから、ちかたないね。

*1:《ディレイド・ブラスト・ファイアーボール/遅発火球》をDBFと略すと(海外サイトで稀に見られる)なんか厨二感増してかっこいい

*2:Dragon#3(1976年10月号)にSamurai、Dragon#16(1978年7月号)にはNinjaが掲載

*3:AD&D1st『Oriental Adventures』(1985)ではゲームブック『サムライの剣/Sword of the Samurai』(1986)に先駆けて名誉点ルールを採用しており、これによりサムライの個人名誉点が一族の基本名誉を下回った場合、地位を失いローニンとなる。またこのルールではセップクハラキリについては特に書かれていないが「名誉がゼロ以下になったキャラクターはゲームから退場する。プレイヤーはキャラクターの記録用紙をくしゃくしゃにして捨てなければなりません」とあり、つまりはそういうことなんだろうね……(おいは恥ずかしか!生きておられんごっ!→介錯しもす!)

*4:ドランケン・マスター2Lvの能力《千鳥足》は"突撃"の前提である直線移動を行う必要が無くなる。すなわち敵前で前後に10フィートふらふらと移動するだけでも突撃になるし、挟撃位置(急所攻撃の前提)にぐるっと回り込んでの攻撃も突撃扱いとなる