Tomb of the Overlord

オーバーロード 元ネタ考察 備忘録

「半森妖精の神人」描写から見るルール その2

"エルフ王の視線自体はわずかに揺れてはいた。シュエンの位置を〈不可視化視認〉などの魔法を使って完壁に捉えていたわけではない。しかしながらその化け物じみた知覚力で〈不可視化〉や〈静寂〉に守られたシュエンを見抜いている。だからこそシュエンは距離を取るのだ。看破系の能力で見抜いていないのであれば、距離はシュエンの味方であり、相手の探知を難しくさせる"  15巻138p

11巻アウラが行っていた<聞き耳>及び<視認>技能による不可視存在の発見と位置特定、それぞれ距離10フィートごとに判定に-1のペナルティが付く(20面体ダイスによる判定なので-1は成功率-5%)。

追記:エルフ王デケムの知覚力について
D&D3.5eドルイドはクラス技能として<聞き耳><視認>を持ち、技能ポイントは4(ファイター以上レンジャー以下)、そして呪文発動に必要な高い能力値[判断力]による修正もある為、しっかりと技能ポイントを振り込んでいるならばレンジャーと同等の高い知覚力を発揮させることも不可能ではない。
しかしながら16巻ではアインズの〈完全不可知化〉に全く気付いておらず(この時点で少なくともアウラよりかはかなり<視認>が劣る)、エルフ王が〈不可視化〉を看破出来るほどの高い知覚力だったかについては疑念が残る。
以上の情報から推測するとエルフ王はシュエンの〈不可視化〉を高い知覚力で見破ったのではなく、第四位階魔法〈トレマーセンス/振動感知〉による振動感知能力で位置を特定していた可能性も高い。
またその場合、シュエンに〈フライ/飛行〉を使うだけの魔力が残っていたならば、逃走には成功していただろう。

 

"誰もいなかったはずだ。それは間違いない。標的以外のエルフの姿はなかった。標的に接近する際には〈不可視化視認〉だって使っていたのだ"  15巻137p

シー・インヴィジビリティで見えないとなると、アインズ愛用の〈パーフェクト・アンノウアブル〉といった上位の不可知化魔法を使用しているか、あるいはニンジャの〈影潜み〉のような隠れ身拡張系のクラス能力で姿を消していた可能性もある。一応3.5eの高レベルレンジャーは影潜み元ネタの《影隠れ/Hide in plain sight》(自然環境限定)を持ってるけど、エルフ王のクラスはドルイド系っぽいし、どうなんだろ。

追記:"デケムの転移は自身と繋がった精霊の元に移動するもの" 16巻260p
この種明かしとアインズ遭遇場面から推測するにプライマル・アースエレメンタルであるベヒーモス〈大地潜り〉により先行偵察させ、精神的リンクにより情報収集。エルフ娘がやられたので武具を回収するためベヒーモスの元へ転移、シュエンは地面に潜っていたベヒーモスに気付いていなかったので突如エルフ王が現れたように見えた、というのが真相のようだ。

一応16巻194pでアインズは"潜伏関係の特殊技術"による可能性についても考えているので、上記の「隠れ身拡張系のクラス能力」というのも大きく的を外れた推測では無かった……と思いたい。

 

"放たれた一本の矢が木々の隙間をうねるように抜けていくのが見えた。 そして空中で拡散。何十本もの矢の雨へと変わった"   15巻132p

弓による遠隔攻撃での遮蔽無視と範囲攻撃、といわれてパッと思いつくのは上級クラス:アーケイン・アーチャーの持つ能力《壁抜けの矢》と《矢の雨》であるが、エルフ娘はネームレベル未満の弓兵のようなのでクラス能力では無く弓の特殊能力に因るものかも。あとは3.5版レンジャーで再現するなら下記の呪文を使うことになるだろう。

《ガイデッド・ショット》1Lv:距離による命中ペナルティと遮蔽ACを無視
《アロー・ストーム》4Lv:攻撃範囲内の全ての敵に対し弓による攻撃1回、ターゲット最大数は自身のレベル数まで制限される
*それぞれ『冒険者大全』収録、アロー・ストームは『呪文大辞典』で3Lvに変更

いかにも漫画ちっくでかっこいいアロー・ストームだが、ターゲット一人に対し矢1本ではどうあがいても同レベル術者の範囲ダメージ魔法に遠く及ばない。
また作中エルフ娘が行っていたような戦法や長距離スナイプを可能にする呪文、クラス能力はD&D3.5eには色々とあるのだが、ダンジョンが主戦場な冒険者になかなかそのような遠距離戦を要する状況は少なく、キャラメイク夢想するも絵に描いた餅になりがちである。

 

"特殊技術を使用して同時に二射する" 15巻258p

特技《束ね射ち/Manyshots》

近くにいるターゲットに対して同時に複数の矢を放つことができる、また弓術レンジャーはこれを6Lvにボーナス特技として取得する。

ややこしいが特技《速射/Rapid Shot》の全ラウンドアクションでのフルアタック時に1回の追加攻撃という効果に対し、束ね射ちの方は「標準アクション」として1回の攻撃ロールで2本の矢を放つ、つまり通常は移動後の攻撃で1本発射のところを2本以上に増やせる、また特技《機動射撃》があれば移動>束ね射ち>移動も可能に。

束ね射ちはBAB(基礎命中)上昇と共に強化され、最終的に4本同時に矢を放つ事が可能、位置取りしやすくなることと併せて弓主体のキャラメイクなら取得必須のように見えるかもしれないが…

まず対象が30フィート以内という距離制限により、敵の突撃射程圏内まで近づく必要がある。また複数射撃ではあるもののローグの急所攻撃などの追加ダメージは1本にしか乗らない。4本同時発射は強く見えるかもしれないが、その場合の命中ペナルティは-8と多大なものとなる(というかローグ系の命中じゃ当たる気しねえ)。そもそも射線が通っていて壁前衛がしっかり仕事してるならフルアタック《速射》で固定砲台すれば良いわけで、束ね射ちの出番は無い。
このように評価の別れる特技ではあるが、それでも「標準アクションの1回攻撃を強化」という効果は貴重であり、呪文による補佐や高価なベイン・アロー(特効矢)をぶっこんで、ここぞという時に確実に束ね射ちを当てにいくようなプレイングも当時は見られた。