Tomb of the Overlord

オーバーロード 元ネタ考察 備忘録

「カッツェ平野の幽霊船」描写から見るルール その2

祝『ヴォクス・マキナの伝説』第3シーズン!いやー2期で終わってなかったんか、続きが出て良かった。そして……祝異世界マンチキン』アニメ化決定!!キタ━━(゚∀゚)━━ !大丈夫?WotCに見つかって怒られない?(藁)

これで「D&Dは映像化に恵まれなかった」という認識も最早過去の物、ガイギャックスも草葉の陰で喜んでいるだろうよ。

ところでグロッグがタイタンストーン・ナックルの能力で大型化してるような描写があったんだが、グロッグの種族はゴライアス:人怪/Monstrous Humanoidだからエンラージ・パースンは効かなくない?などと思い調べてみると、5版ではエンパの対象が人型生物のみの制限はなくなり、呪文名もエンラージ/リデュースになってたんだ、知らなかった~!と、些細なことが気になるお年頃なのでした。

以下本題

 

"空を飛ぶ相手との撤退戦など御免だ。というか基本的に空を飛ぶ敵というのは難敵だ。特に空中でホバリングできたり、自由自在に上下移動ができるようなものになると、討伐難易度が一つは跳ね上がる" 上巻68p

討伐難易度はともかく、飛行による3次元移動は旋回半径、旋回角度、上昇量、最小移動速度などが絡み合い処理は非常にややこしくなりる(とDMGに書いてある)。

これらの諸要素は飛行クリーチャーの持つ飛行移動速度と機動性により詳細が算出される。

飛行機動性には「完璧」「良好」「標準」「貧弱」「劣悪」の5段階があり、良好以上の機動性であればその場での上昇、下降、後退、旋回及びホバリングが可能。それ以下の機動性であれば特技《ホバリング/Hover》を取得することでもホバリングが可能となる。

なお巨大サイズを超えるようなドラゴンは飛行移動速度は大きいものの(200ft. 疾走時146km/h)機動性は劣悪であり、飛行しながらブレスの範囲にPCを収めようと大きく旋回し戦場を見下ろすその姿はさながらAC-130ガンシップのようであった。またこの劣悪な機動性を補うためドラゴンが自身にフライ呪文(機動性:良好)をかける、というのもよく使われた小技だ。

プレイヤーキャラクター向け飛行呪文や飛行アイテムの中には標準以下の機動性しか持たない物もあるが、DMとしては「とりあえず空飛びたいならフライ使っとけ、それ以下はめんどくさいから」といったところが本音である。

 

"スケリトル・ドラゴンは空に飛び立つたというよりも浮かび上がつただけだった。そのまま一気に落下してくる。巨体が狙っているのは自分。ヒットアンドアゥエィも嫌だが、押し潰されるのは不味い" 上巻82p

超大型サイズを超えるドラゴンの持つ能力《押し潰し/Crush》は、竜が飛行または跳躍から敵の上に着陸して押しつぶす攻撃で、身体の下に収まるすべてのクリーチャーが対象の範囲攻撃となる。対象は反応セーヴに失敗すると"押さえ込まれた状態"になり、抜け出せなければ継続的に殴打ダメージを受ける。

まあ英雄レベルを超えるような冒険者ならば前衛には事前にフリーダム・オヴ・ムーヴメント呪文を配っておこう(クレリック9Lvなら1時間半持続する)。あとは「押し潰し」や「蹂躙」「急降下突撃」に対しカウンター攻撃できる特技《頭上への突き上げ》もあるが、そのようなややレアな状況に対する使用頻度を考えると、特技が豊富なファイターでも取得は考え物であるし、なにより前提特技2個は重い。

 

"壁系の魔法は大体の場合、使用者の意思で解除できる" 上巻83p
"同時に〈石壁/ウォール・オブ・ストーン〉が幻のように消える" 上巻85p
D&D3版系ではウォール・オヴ・ファイアー、ウォール・オヴ・フォースなどの持続時間が決められている呪文は術者の意思により消去する事が可能だが、ウォール・オヴ・ストーン、ウォール・オヴ・アイアンなどの持続時間が「瞬間」となっている壁系呪文はいったん創造したらずっと石壁そのままであり、術者による消去やディスペルでの解呪は出来ない。ここはD&Dルールとオバロの明確な相違点であり、二次創作者は注意しよう。
 

"モモンは大剣二刀流と聞くが、今は片手にしか剣を持っていない。~中略~(今回の戦いにおいては手数よりは一撃の重さを重視しているということなのだろうか?)" 上巻93p

実例をあげてみよう、筋力18(ボーナス+4)の人間戦士がグレートソード両手持ちの場合、ダメージは2d6+6、期待値13
ロングソードとショートソードでの二刀流の場合、利き手は1d8+4、逆手が1d6+2、期待値合計14

これだけ見れば殆ど変わらないか二刀流の方がチョットだけいいように思えるかもしれないが、二刀での攻撃は特技《二刀流》を取得した状態でも各攻撃命中に-2ペナルティ、特技がなければ利き手-4逆手-8とほぼ当たらない。

更にD&D3.5eで両手持ち武器を有利たらしめている要因としては特技《強打》とダメージ減少の存在が大きい。
特技《強打》は「命中ボーナスを減らした分、ダメージアップ」という効果なのだが、そのダメージ変換率は武器の種別により変化する。
両手武器:減らした命中×2のダメージ、片手武器:減らした命中×1のダメージ、軽い武器:強打不可

つまり「戦士に筋力や命中を上昇させるようなバフ呪文をがっつり積んで両手武器で強打」が3.5版当時一番手っ取り早くダメージを出す手法であったし、敵モンスターのダメージ減少(要するに物理耐性)で二刀それぞれのダメージが引かれるよりは強打の一撃で強引にブチ抜いた方が与ダメ効率は良くなる。

二刀流が両手持ちに与ダメで勝つとすれば、それはダメージを直接上昇させるようなクラス能力やバフ、つまりフレイミングやホーリーなどの武器魔法的強化、ローグの《急所攻撃》、バードの《勇気鼓舞の呪歌》、レンジャーの《得意な敵》ボーナスなどを複数乗せた場合となる。

例えばD&D3.5eをベースとしたMMORPG『Dungeons & Dragons Online』では、エンドコンテンツで矢鱈と高アーマクラスの敵が出現し、こういったモンスターに対しては魔法的強化を複数付けた武器による二刀流、手数で殴りまくった方が両手武器強打より与ダメ期待値が高くなるといった状況で最終的に二刀流レンジャーがアタッカーとして活躍していたそうな……紙版と大違いだ。

なおモモンのようなクソデカ剣二刀流をD&D3.5eで再現しようとすると大型サイズのバスタードソード×2、特技《特殊武器習熟:バスタードソード》《二刀流》《大刀二刀流》《大業物》と特技が大量に必要な上命中に-4ペナと、出来ないことはないが実用性はほぼ無い(でもカッコいいよね)。


"船員スケルトンの力は普通のスケルトンに比べて強いようだが、基本的にクロスボウという武器は 膂力に依存しない固定値ダメージなので、力の強さはあまり意味をなさない" 下巻77p

特定の筋力等級に応じて作られた適切な弓、すなわちコンポジット・ボウ(複合弓)ならば、ダメージに筋力ボーナスを加算することが出来るが、すべてのクロスボウは筋力ボーナスが乗らず、そのダメージは素のダイス分+魔法による強化だけとなる。

3.5eDMG記載のクロスボウはハンド・クロスボウ、ライト・クロスボウ、ヘヴィ・クロスボウの基本3種。続けて射撃するには手を使った装填が必要であり、複数回攻撃には特技《高速装填/Rapid Reload》または『武器・装備ガイド』記載の魔法強化《クイックローディング》(異次元空間の弾倉に100発装填)などが必要となる。

複合弓と比べ筋力乗らないし、連射には特技が必要。サーペンツアローなどの特殊矢による斬撃化とかも出来ない3版系クロスボウはまったく良いとこ無しに見えるかもしれないが、弓と違い伏せ状態でも射撃可能、両手に構えてのクロスボウ二刀流も可能など一応利点が無いでもない。

なお5版になるとクロスボウ関連特技が強化され、近頃ではクロスボウファイターがブイブイ言わしてるようだが、これは特技《射撃の名手/Sharpshooter》の危険度を見抜けなかったデザイナーの失態というほかない。インフレが過去の版より抑えられモンスターのACがそこまで高くないD&D5eで射撃強打とかヤヴァいのは火を見るより明らかじゃん。

 

"アインズは自らが持つアンデッドを支配する能力を船へと向ける。 あまりキャパシティに余裕はないのだが、問題なく支配下に置くことができた。やはりレベル自体はそこまで高くないのだろう" 下巻65p

悪属性のクレリック(または一部ネクロマンサー系クラス)の持つ能力、アンデッド威伏/Rebuke Undeadではクレリックレベル+魅力ボーナスを基本として影響を与えるアンデッドの最高レベル及び総数を算出し、判定結果が対象アンデッドLvの倍もあれば支配も可能。(全部説明するのは大変だからココ見て)またアンデッドを創造したり支配する呪文では術者レベルを係数とした算出となる。もしアンデッドが他のクリーチャーの制御下にあり、命令がなんらかの矛盾や葛藤を引き起こす場合、要するに支配権の奪い合いでは魅力ボーナスによる対抗判定を行う。

今回、幽霊船の支配権をアインズが簡単にネトリしたので、当然のことではあるが船長よりアインズは高い魅力を持っていると言えるだろう、なんというイケメン!

というかアインズが書籍のどこかで自分がアンデッド支配される可能性について考えていたシーンの出典元を調べようかとオバロwikiを見てみたら!閉鎖してるじゃねーか、どうすんだよファンコミュニティが無くなっちゃうよ、クソがぁぁあ!!

 

"私は言ったわよね? あの御方こそが世界の頂点だ、と 。それを圧倒的強者? 言葉が軽すぎるわ" 下巻65p
ナーベラルよ。アインズは圧倒的強者ではあっても絶対的強者では無いし世界の頂点でも無い、それはアインズ自身が最もよく理解しているところだぞ