Tomb of the Overlord

オーバーロード 元ネタ考察 備忘録

アイテム その8

D&D wikiのHomebrew(自作データ)の所でアインズ様のデータを見つけた。

アインズ・ウール・ゴウン
属性:混沌にして中立
領域:死、戦争
神格ランク:下級神

まあ誰でも思いつく程度の物だし、属性はどっちかというと秩序悪じゃまいかとか色々あるんだがとりあえず、「ぼくのかんがえた、さいきょうのぷりきゅあ」キュアフェリーチェ最終決戦Ver.)に比べたら(データ量的に)ザコっすね!

あとどうでもいいけど種族:モモンガってのはどうなんだろうね…
我々日本人がドイツ語だとなんとなくかっこいい、と感じるように外人は「モモンガ」という語感になんとなくエキゾチックな物を感じているのか?
だとすれば、オバロの「モモンガ」及び「モモン」も、それほど奇妙な名前と言う訳ではないのかも。

以下本題

 

〈蛍光棒〉7巻やオバマスに登場
《陽光棒》 2gp
オバロでの蛍光棒は、所謂サイリウムを彷彿とさせる練金アイテムであったが、D&Dの陽光棒は長さ30cmで先端に金の小片がついた鉄の棒という、でっかいマッチのようなアイテムである。

松明と違い風や水で消える事も無く、カンテラほど邪魔ではないので照明として優秀であるが、松明は松明で安いし火が使えたり利点が無いではない。まあ魔法的/非魔法的にかかわらず光源は複数用意しておくのが冒険者の嗜みだろう。

 

"その名も五色聖剣" 14巻216p
D&Dで再現するなら
+1フレイミング・ショック・コロウシヴ・スクリーミング・フロスト・ロングソード
この剣、金72,315gp也。

たかーい!ちいさなお城が買えるね。

火、電気、酸、音波、冷気と5種のエネルギーダメージ揃い踏みといった感じだが、補足させてもらうとこの内、音波だけが他の追加ダメージより弱めになっている。(音波は+1d4、他は+1d6)

これは音波に対する抵抗力を持つモンスターがかなり少ないために、ゲームバランスを考えての事と思われる。

武器追加エネルギー以外の例をとってみても、たとえば音波エネルギーで大ダメージを出せれる高位呪文は存在しなかったり、呪文修正特技《呪文エネルギー変更》でも変換先のエネルギーに音波は含まれていなかったり。

 

パワードスーツ 14巻272pぐらいから

D20 Futureのメカルール使えばパワードスーツをD&D3版系で再現できるな、と思ったが、オバロと違い大型サイズのメカに乗り込んだ時点でHPが+100されるので、アズスが強くなりすぎちゃう。3.5版とモダンのルールをちゃんぽんするのもメンドクサイし、妄想だけでやめておこう。

 

〈ブラスティングスタッフ〉 14巻405p にせアインズ装備
吹き飛ばし効果/ノックバックに特化した杖との事だが、まずD&D3版系の通常ルールにおいて《突き飛ばし/Bull Rush》は標準アクション又は突撃時に近接攻撃の代わりに行なうことができる戦闘オプションの1種である。
筋力ベースの判定に成功する事により敵を思うがままの方向に押しやる事が出来るが、ダメージを与えることはできない為、「崖のすぐ近くで飛行能力を持たない敵とのバトル、自分はモンク」などの特殊なシュチュエーションで「必殺 暗黒流れ星」を狙わない限り使う事は少ないだろう。

しかしクラウニング能力(秘術大全)やノックバック能力(戦士大全)を持った武器、特技《突き押し/Knockback》(石の種族)があれば、〈ブラスティングスタッフ〉のように攻撃ごとに突き飛ばし効果を乗せる事が出来る。

*これらは一般的に術者より壁タンク向きの能力であろうが、未訳サプリ「Dungeonscape」記載のファイター代替クラス特徴《ダンジョンクラッシャー/Dungeon Crasher》とあわせればアタッカーとしての強力なシナジーを発揮する。
大型または優れた体格持ち種族、《突き飛ばし強化》、《突き押し》、ファイター2から6Lv以上、飛行能力、移動してフルアタックする能力と前提が多いが、コンボを決めれば「上空から突き飛ばし効果を乗せたフルアタック、敵は地面にぶつかるたびに追加大ダメージ」というドリブル殺法により瞬殺!…DM様から使用禁止を言い渡される羽目になる。

 

呪文 その30

〈フォーリング・コントロール/落下制御〉
《フェザー・フォール/軟着陸》 ウィザード、バード1Lv呪文

フォーリングコントロールという名前自体は旧ソード・ワールドRPGの魔法が(マンチ悪用が特に)有名だが、どのみちSWの落下制御もD&Dのフェザー・フォール呪文が元ネタなので同じことである。
D&Dでは落とし穴に落ちた時の緊急対処などが主な使い道であるため、スクロールで用意するだけでなく即時詠唱出来る様ウィザードが自己スロットに準備しておくことが重要である…が、呪文リソースの厳しい中マジックミサイルやスリープの替わりにというのも悩ましく、結局自分は小銭を貯めてからフェザー・フォールの効果を持つブローチを毎キャラごとに購入していた。

いかにも冒険者魔法使いの小技といった呪文の為か、攻撃魔法で無いにもかかわらずラノベファンタジーでの登場頻度は多い気がする、最近だとゴブリンスレイヤーとか。

 

〈サンライト/太陽光〉第三位階 信仰系魔法
《デイライト/陽光》 多くのクラスで3Lv呪文

オバロのサンライトは目くらまし効果+アンデッドなどにダメージとの事だが、D&Dのデイライト呪文は日光が苦手なクリーチャーにペナルティこそ与えるものの、目くらましもダメージも無く、ヴァンパイアを塵にすることも出来ない。

ただの光源に3Lvスロットはもったいない、ということでオバロではパワーアップさせたのだろう。

*長時間、広範囲にわたって闇を払う上位の照明呪文で3Lv…これってWizのロミルワの元ネタじゃね?とか考えてAD&D1stのスペルリストも見てみたが、デイライト呪文の初出はD&D3.0版だった。

 

サイコキネシス/念動〉
テレキネシス/念動力》 ウィザード5Lv呪文

D&Dで一部超能力が呪文扱いなのに違和感を感じるかもしれないが、魔法で無い超能力(サイオニック・パワー)の方にも《テレキネティック・フォース》など同様の念動力があるので安心されたし。

呪文効果としては精神集中持続中に離れた物体を動かす、クリーチャーを攻撃(突き飛ばし、武器落とし、組みつき、足払い)、物を一気に投げ飛ばすなどかなり多岐に渡り応用できそうなものである。

なお3.0版の頃に超巨大サイズの手裏剣を大量に用意してテレキネシスで投げつけると超ダメージが出るとか小耳に挟んだものだが、改めて試算すると理論上最大ダメージはともかく命中率が悪くて攻撃呪文としてはイマイチ…ロマンといえば聞こえはいいが、それだけでは生き残れないのがD&Dの日常である。

さらに余談、このテレキネシス呪文に特化した上級クラス「マスター・オヴ・ジ・アンシーン・ハンド」は、最終必殺技でリンク先のイラスト通り敵を天高く放り上げる事が可能となるが、これが使えるレベル帯となるともはや飛べないモンスターなどは雑魚となっており、やはりロマンクラスでしかなかったりする…

 

〈テンポラルステイシス/時間停滞〉第九位階
《テンポラル・ステイシス/かりそめの停滞》 ウィザード8Lv呪文

対象の時間を停止する、D&Dでの効果は永続。作中で書かれていたのと同様に時間停止状態であるため、ダメージなど一切影響を与える事はできない。

敵が複数いるときなどにもっぱら使われる、との事だがD&Dで同様の状況では時間停滞はあまり使われず、メイズ呪文で異次元迷宮に落とし一時的に無力化するパターンが多い(メイズはセーヴ不可、つまり必ず効く呪文なので)。

所謂「封印されていた魔術師」などのファンタジー小説にありがちな状況を再現するシナリオフックのための呪文であり、戦術的に使用することはまれである。

*なお、この呪文の起源は50年くらい昔のファンタジー小説まで遡り、その系譜もジャック・ヴァンス→AD&D1st→D&D3rd→オバロと、途中にトールキンやコンピュータゲームを経由していない、非常に由緒正しきRPGの呪文である。

 

"敵の右手から眩い緑色の光が一直線に飛び、アルベドにぶつかる。" 14巻383p
《ディスインテグレイト/分解》 ウィザード6Lv呪文

まあ緑色の光線、といえばディスインテグレイトだろう。
D&D3版系での分解光線は、対単体の無属性高火力魔法(範囲ダメージ呪文の倍、上限も高い)といった物だが、セーヴ(抵抗)に成功されるとダメージはかなりしょぼくなる。またこの呪文でHP0以下になると塵と化す。
当然穴を掘り抜いたり土木工事にも使える呪文だが、一度に消去できる範囲はそう大きくないため、大きな建造物の破壊には向かない。

オバロ14巻の描写では抵抗成功したアルベドに何の効果も無く一撃必殺系と推測していたので、ひょっとしたら旧D&D仕様の消去orノーダメ両極端Ver.なのかもしれない。

そしてこれも最近ゴブスレで見た…ってまたそのパターンか。
(しかしまあ商業誌で再びファイター呪文『がまんする』を見る事になろうとは!)

装備品に関する疑問アレコレ

まあよく見られる疑問に対しD&D3.5版視点から無理やり理由をこじつけるなら、というアレです

"オバロの魔法使いってあんまり杖装備していないよね"

1:杖は高い

D&Dで魔法的能力の込められた杖状アイテムといえば独特の魔法の力を有しているロッド、複数の呪文を蓄えているスタッフが存在するが、どれもかなり高額である。

まず、ロッドで一番安いレッサー・エンラージ・メタマジック・ロッド(1日3回3Lv以下の呪文を距離延長)でも3000gpもする。
PCの標準資産的にD&Dでは5~6LvのPC、オバロでは白金級冒険者なら手が届くくらいか。

次にスタッフだが、ワンドと違い使用者の能力に応じた威力で込められた呪文を発動できるという特性により、習得呪文数の少ないソーサラーに特に有益なアイテムとなっているのだが、これがまた高い。
一番安い攻撃魔法が込められたスタッフ・オヴ・ファイアーで18,950gp、次のスタッフ・オヴ・フロストが41,400gp。
D&Dでは11Lv前後の伝説級人物、フールーダぐらいの資産が無ければとても手が出せない。

オバロ現地勢ではイビルアイがソーサラーベースの特化型魔力系魔法詠唱者ということで是非とも欲しいアイテムであろうが、作製するにもやはりフールーダ以上の術者Lvを要求される為、そう簡単には入手できないのだろう。

2:冒険者ならば両手は開けておきたい

以前にも書いたがD&Dで呪文発動を行うには様々な要素を満たす必要があり、触媒(物質要素)の取り出しや印を結ぶ(動作要素)などを行うために少なくとも片手は開けておかなければならない。
さらに戦闘中ともなれば状況に応じてワンド、スクロール、ポーションを取り出し使用する必要があり、保持するのに片手、武器として使用するのならば両手を使う杖はかなり邪魔である。

あれもこれも使いたいという高レベル術者ならば、杖を浮かす呪文や腕を生やす呪文によりこれに対処することも出来るが、低レベルならば取捨選択により「杖は装備しない」という状況は大いにありうる。

*これら上記の制限により導き出されるD&Dの冒険者魔法使いは「杖を持ちローブを着た老人(又はエルフ)」といったステレオタイプな魔法使い像からはかなりかけ離れた「鎧は魔法のミスリル・チェインシャツ、その上からベストとクローク、腰ベルトと肩からのたすき掛けにスクロールやワンドなどを多数差し込んだごちゃごちゃ装備」となり、まるで西部劇のガンマンのような出で立ちとなってしまっている。
*なお初心者がやりがちなミスではあるが、ジジイ&エルフ&ウィザードの組み合わせは知力は高いものの低ヒットポイントによりシューティングゲーム状態(被弾即ピチューン)となってしまい、危険が危ない

 

"ぶくぶく茶釜と不動さん(故人)が両手盾だけど、あれって意味あるの"

1:盾は武器として悪くないダメージが出る
ヘヴィ・シールドで殴ると1d4、トゲを付けると1d6、さらにバッシング能力で2d6と、この時点で両手武器グレート・ソードのダメージに並び、さらに大型種族や優れた体格持ちor《大業物》などと絡めれば《特殊武器習熟:カタナ》《大刀二刀流》によるカタナ二刀流(1d10×2)をはるかに超えたダメージが期待できる。

2:特技の制限的に武器二刀流より緩い
二刀での武器攻撃を使いこなすには《二刀流》系特技の取得が必須であるが、これらの特技には前提として高い【敏捷力】能力値が要求され、重装キャラには幾分厳しいものがある。
しかし特技《軽妙なる盾さばき》があれば特技《二刀流》が無くとも逆手で盾殴りが出来るようになるし、前提に敏捷力も必要ない。

またクラス:ファイター主体で《武器熟練:スパイクド・ヘヴィ・シールド》《武器開眼:スパイクド・ヘヴィ・シールド》のように特技を取得し強化していくことを考えれば、主武器と逆手武器を同種盾で揃えるのは効率的である。

他にも盾を使った特殊攻撃特技《盾突撃》と《盾のぶちかまし》を合わせたシナジーや、+5盾1枚より+3盾2枚の方が安いなどの理由もあり、ちょいと毛色の変わった重装二刀流キャラメイクとして両手盾スタイルというのは十分アリな選択肢である。

火を吐く大怪獣のリアリズム

今期アニメ、卓ゲーマー的に『放課後さいころ倶楽部』に注視したいところだが…
ファンタジーブログとしては、やはり異世界×プロレス×ケモナーという異色作『旗揚!けものみち』に触れておかなければならないだろう。

さてこのアニメの2話、サラマンダーがブレスを吐くシーンでちょいと興味深い描写がなされた。

 

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これは…

口の中から炎が出てるんじゃなく、
微妙に口もとからズレて、火が出ている!

昔のアニメだと描けなかった描写!!
つまり、口からは燃料だけを噴出し空気中で炎となる表現!!

リアル!!
SF性!!

  *島本和彦アオイホノオ』2巻100P、サイボーグ009オープニングアニメ解説より抜粋

 わずか10秒にも満たないシーンではあるが、二昔前のアニメマニアならば上記のように絶賛したであろう見事なブレスの表現であった。

 

それはそうと「火を吐く怪物」の代表的存在であるドラゴン、それも何十年にわたって設定を重ね練ってきたD&Dドラゴンのブレス設定ではどうなっているのか。気になる人もいるかと思うが、これがSF・ファンタジーマニアの心配を余所にずいぶんとストレートかつ乱暴適当なモノとなっている。

 

40 :風吹けば名無し@\(^o^)/:2016/08/01(月) 02:20:33.47
>>9
ドラゴンはドラゴン袋
ゼットンゼットン袋から出す

*2chなんでも実況Jスレ「ドラゴンってどういう原理で火を吐いてるんや?」より転載

上記書き込みは一見特撮あるあるネタにみえるが、まごうことなきD&D公式設定であり、そしておそらくこれはD厨による書き込みである。

 

D&D3.5版サプリメント『竜の書:ドラコノミコン』 プレビュー、ブレス攻撃の項目を見てみるとこうある。

ブレス攻撃がいかなる形態をとるにしろ、それはドラゴンの肺の奥深くで、心臓の近くにあるドラゴン袋が作り出したエネルギーを用いて作られる。

 「いかなる形態」ってのが炎のみならず冷気、電撃、酸、果ては力場や分解、老化ブレスまで含むのはアレな話ではあるが、それはともかく「draconis fundamentum」をドラゴン袋と訳したHJ和訳チームD16氏の偉業は、D&Dの名訳/迷訳として「プルトニウム貨」「ワォーハンマー」「ウォーマンマー」「地獄企業の標準的な人足」などと並び、今後も長く語り継がれてゆくことだろう。

魔剣の系譜

1つ前の記事でポール・アンダースンムアコックに触れたことだし、せっかくだから今度はそれに絡んだオバロネタ、魔剣キリネイラムのインスパイア元を順に遡ってみようと思う。


魔剣キリネイラムオーバーロード
「漆黒の剣」四大暗黒剣の一つ
「漆黒の刀身に夜空の星を思わせる輝き」とあり、下記のブラックレイザーと見た目が酷似している。


ブラックレイザー(AD&D、シナリオ:ホワイトプルームマウンテン)
神秘的な星々の煌く夜空を切り取ったような刃を持つ、インテリジェンスソード。

版により性能の詳細は異なるが、知性を持ち使用者に殺害を強制、攻撃した相手の魂を食らい(レベルドレイン)蘇生困難化、吸い取った生命力で使用者の筋力及びHP増強、加速など下記ストームブリンガーの能力をそれっぽくD&Dで再現している。
なおシナリオ作者に対するインタビューによると「露骨にストームブリンガーのパクリでちょっと恥ずかしい」との事。

 

ストームブリンガーマイケル・ムアコックエルリック・サーガ
「黒の剣」とも呼ばれる、詳細はwiki参照
ファンタジーにおける"魔剣"の代表的存在
ムアコックによると下記小説の「折れた魔剣」に大きな影響を受けたとの事だが、直接ティルヴィングを参照した可能性も高い。

*グアサングがストームブリンガーの元ネタではないかと言われる事も多いが、出版時期的にストームブリンガーのほうが先であるし、ムアコックトールキンからの影響を否定している。また両者が共通してインスパイア元に挙げているものに「カレワラ」(フィンランドの神話伝承)があり、ここらがネタ被りの原因となっていると思われる

 

テュルフィングポール・アンダースン作「折れた魔剣」)
小説「折れた魔剣」は北欧やケルトなど多くの神話伝承をベースとして作られた悲劇的英雄譚。作中主人公が手に入れる魔剣の名は下記北欧神話のサガからとられているが、「折れたる剣が、鍛え直される」という点についてはグラムの伝承も影響しているのかもしれない。
なお「折れた魔剣」と「指輪物語」及び「シルマルリオン」には似通った部分が多いが、どちらかがパクったとかいうわけでは無く、元ネタとした伝承が被っただけである。

 

ティルヴィング(上記の表記揺れ、北欧神話、ヘルヴォルとヘイズレク王のサガ)
めんどいのでwiki参照。

ひとたび鞘から抜かれれば血を吸わずにはおさまらず、持ち主の願いを三度まで叶えるが、それによって自身も破滅するという呪いがかかっている。

神話伝承創作ひっくるめて"呪われし魔剣"の原型といえる武器であるのだが…

ファイナルファンタジーシリーズ(3以降)を始め、電源系RPGで武器にその名を採用しているものは多いが、名前だけ北欧神話からとってきたというだけで、上記のような呪われし魔剣としての性質をゲーム上で再現しているものは殆ど無い。

 

このように魔剣の系譜を源流まで辿ってみれば、ナルシル/アンドゥリル、グアサング(指輪物語)やインテリジェンスソード (悪魔城ドラキュラX 月下の夜想曲)、おうじゃのけん(ドラクエ3)までもがキリネイラムの遠い親戚筋という事になる。

ファンタジーRPG必読作家リスト

ファンタジーRPG必読と銘打ってはみたが、以下に並ぶのはAD&D1st『Dungeon Masters Guide』(1979)のケツの方に書かれていた(Appendix N、5版にも似た様なのがあるらしい)ガイギャックスお勧めの作家及び参考書籍リストである。
ファンタジーじゃなくてSF多すぎ、とかクラーク・アシュトン・スミス忘れてない?とか未訳ばかりみたいなのもあるが、とりあえずここに書かれている以上、初期D&Dの成立すなわちRPGの源流に影響を与えている物として非常に重要であることは間違いない。

このブログでも元ネタ作家については以前から色々書いてきたが、いいかげん読んだのも昔でうろ覚えの物も多く、事ある度に海外サイトをググるのも面倒なのでまとめておく。


ポール・アンダースン
『魔界の紋章/Three Hearts and Three Lions』『天翔ける十字軍』『折れた魔剣』

*秩序と混沌の対立構造、異世界転移(タイムスリップ)、現代知識で創意工夫、騎士道物語(クラス:パラディン)、再生能力を持つトロールドワーフ、ニクシー、人狼、スワンメイ(白痴ヒロイン)と、並べて書くとかなり濃いメンツだが現在のRPGにも引き継がれている要素が多い。

 *現代日本において異世界転移の発端といえば「トラックにはねられる」が定番だが、魔界の紋章では「ナチス・ドイツ軍との戦闘中に死にかける」という非常に時代を感じさせるものとなっている。なお、なぜこの作品が(ナイトでは無く)クラス:パラディンの直接の元ネタかを詳しく説明したいところだが、激しくネタバレになっちゃうのでやめておく(わかる人には主人公の名前と原題でピンとくるらしいが…)

 

追記:D&Dのパラディンは『魔界の紋章』の主人公、ホルガーが元ネタなのでは?と昔からよく言われていたが、ガイギャックスによると*1特にそういったわけでもなく普通にシャルルマーニュ伝説における12人のパラディンアーサー王伝説、騎士道の規範などをインスピレーション元にデザインしたとの事。
なお後にパラディンとは別クラスとしてファイターサブクラスのキャバリア/騎兵が追加されるが、これについてはガラハド卿やローランといったパラディンと言えるような高潔な戦士はわずかにしか存在しないからだとか。

 

*『折れた魔剣』ではエルフ族、トロール族、ゴブリン族、ドワーフ、ノーム、レプラコーンなどが登場。ガイギャックス的には、D&Dのエルフはトールキンよりもポール・アンダースンをインスピレーション元としたらしいが…

 

ジョン・ベレアーズ
『霜の中の顔』
*多数のマジックアイテムや魔法書が登場、主人公プロスペロはクラス:ウィザードの原型の一つ…というよりは、ユーモアたっぷりに書かれた本作においては「リアルな魔法使い像」のパロディといった趣が強い。
(プロスぺロの名はシェイクスピアテンペストから採られているし、友人の名はロジャー・ベーコンだし)
なお作中プロスぺロがタロットを用いた魔法で橋を破壊するシーンが「ファンタジー小説における一大スペクタクルシーン」として年季の入ったファンタジーマニアから語られる事はあるが、RPG的世界観とオレツウェイ主人公が普及した現在においてはいささか地味である

*AD&D1st、DMGにおいて呪文システムの解説(別次元からエネルギーが流れ込んでくる、術者は例えるなら電気ヒーターにおけるコンセントでしかない云々)と共に「バックグラウンドとしては、キャンペーン参加者にヴァンスの『天界の眼』と『終末期の赤い地球』、そしてベレアーズの『霜の中の顔』をお勧めする」と書かれていた。


リイ・ブラケット
*スペース・オペラを多数執筆「スター・ウォーズ 帝国の逆襲」の脚本も手がけたが、公開時期的にAD&D1stへの影響は無い

 

フレドリック・ブラウン
*SFとミステリーが主でファンタジーはほとんど無い

 

エドガー・ライス・バロウズ
火星シリーズ、金星シリーズ、地底世界(ペルシダー)シリーズ
*『火星のプリンセス』が異世界転生モノの始祖のように語られることもあるが、それが近年の和製ファンタジーに繋がっているとは思えない

*オリジナルD&D Vol.1『Men & Magic』序文(1973)においてガイギャックスはジョン・カーターが暗い穴ぐら/black pitsを進むシーンについて言及しているが、調査したところこれは『火星の女神イサス』14章「闇に光る目」の事を言っているようだ。
火星の地下牢/dungeons、分岐する通路を手探りで進むと暗闇の中にギラギラと光る目、襲い掛かってくる3匹の怪獣、剣を振り上げるカーター!
これこそガイギャックスの考える「ダンジョンアドベンチャー」の原型といえる場面の1つなのだろう。(まあ地下牢からの脱出時にモンスターと遭遇というのは、コナンやゾンガーなどでもよく目にするお決まりのシーンではある)

なおオリジナルD&D Vol.3『The Underworld & Wilderness Adventures』の野外遭遇表には地形:砂漠(火星)、遭遇するモンスターTharks/緑色火星人などが書かれていたが、これらのバルスーム要素は後の版に引き継がれる事は無かった。


リン・カーター
『World’s End』

*ガイギャックス的に上記シリーズがオススメらしいが未訳である。ヒロイック・ファンタジー(レムリアン・サーガ)ほかクトゥルー関係やアンソロ本編集で活躍

またコナンの模作や下記ディ・キャンプと組んでコナンシリーズの続編を手がけた事もあり、その流れもあってクトゥルー神話にも黒蓮が出てくるのは大体この人が原因である


L.S.ディ・キャンプ
『闇よ落ちるなかれ』『悪魔の国からこっちに丁稚』


L.S.ディ・キャンプ&フレッチャー・プラット

『ハロルド・シェイ・シリーズ』 『CARNELIAN CUBE』(未訳)
*異世界転移して現代知識でチート(雑なまとめ)

*ハロルド・シェイシリーズ第一巻『神々の角笛』は北欧(スカンジナヴィア)神話の世界に異世界転移するお話だが、作中に山の巨人/Hill Giant、霜の巨人/Frost Giant、火の巨人/Fire Giantが登場し、これがD&Dジャイアント種別の直接の参照元となっている可能性が高い。また塩素ガスを吹く竜も登場する。


オーガスト・ダーレス

 

ロード・ダンセイニ
*ハイエナ型獣人種「ノール」の名をダンセイニ著の短編『ナス氏とノール族の知恵比べ/How Nuth Would Have Practised His Art upon the Gnoles』より拝借した模様。
なおD&D系での初出であるオリジナルD&D Vol2『Monster & Treasure』解説では、ノームとトロールの交配種というふざけた設定について「たぶんサンセイニ卿/Lord Sunsanyがはっきりとさせなかったのだろう」といった記述があるが、これはおそらくダンセイニ卿/Lord Dunsanyのタイプミスと思われる(Dの隣のキーがSの為)。


フィリップ・ホセ・ファーマー
『階層宇宙』シリーズ


ガードナー・フォックス
『Kothar』『Kyrik』シリーズ(未訳)
*上記の作品は…まあ名前から察しがつくかもしれないが、コナンの巻き起こしたヒロイック・ファンタジーブームに乗っかった蛮人タイプの主人公である。作者自体はファンタジー小説よりアメコミ方面で有名だが、RPGの歴史的にはリッチの直接の元ネタを書いた人

 

ロバート・E・ハワード
『英雄コナン』シリーズ

*コナンはクラス:バーバリアンの原型であるが、作中のコナンは原始的な直観&パワー描写以外にも、盗賊や海賊を生業とし狡猾な戦士としての立ち回りも多い為、D&Dにおいてキャラ再現される場合はローグ(シーフ)混ぜになることが多い

*上記でコナンはバーバリアンの原型と言い切ってしまったが、D&Dにおけるクラスとしてのバーバリアンは他の物に比べ登場はやや遅く、この作家リストが書かれた時点では実装されていない。また後のAD&D1stファイターサブクラス:バーバリアンの特徴は、魔法とマジックアイテムを嫌悪しそれを破壊する事で経験値を得る、また高レベルになるとバーバリアンの集団を召喚できるようになるという不可思議なもので、コナン再現に向いているとは言い難い。

ともあれ、ガイギャックスはD&D誕生以前のミニチュア・ウォーゲーム『Chainmail』ファンタジーサプリメント冒頭にて「J.R.R.トールキンロバート・E・ハワードなどのファンタジー作家が描いた壮大な戦いを再現」と説明、またデイヴ・アーネソンもBlackmoorキャンペーン(実質最初のRPGセッション)の誕生に関しコナンに言及しているので、どのみちファンタジーRPGのイメージ源泉として最重要な作家であるのは違いない。

 

Sterling E. Lanier
『HIERO’S JOURNEY』
*ポストアポカリプス物らしいが、この作家の著作は全て未訳。サイオニックや後のガンマワールドに影響か?


フリッツ・ライバー
『ファファード&グレイ・マウザー』(二剣士)シリーズ
*剣と魔法/sword and sorcery*2の代表的作品であり、蛮人ファファードと盗賊グレイ・マウザーのコンビによる冒険譚は最もD&Dのプレイスタイルに近いと評される。またグレイ・マウザーはクラス:シーフの原型の1つであり、作中で巻物から呪文を使うシーンがクラス能力である「魔法のアイテム使用」に影響を与えた

*後のAD&D1st神格本『Deities & Demigods』(1980)にはファファードとグレイ・マウザーのキャラクターデータほかネーウォン世界の神々のデータが記載、さらには『Lankhmar–City of Adventure』(1985)以降『ファファード&グレイ・マウザー』シリーズの世界をAD&Dルールで遊ぶためのサプリメントがいくつか出版、TSR公式Dragon誌にライバーの新作短編が掲載されるなどフリッツ・ライバーとガイギャックスは懇意な間柄となっていた
またAD&D1st『Monster Manual』記載のモンスター「Berserker/バーサーカー」のイラストが「ひげもじゃ、おさげ、斧と剣の二刀流の大男」という、かなりファファードっぽい物になっているのも注目すべき点だろう


H.P.ラヴクラフト


A・メリット
『Creep, Shadow! 』『ムーン・プール』『蜃気楼の戦士』
*自分としては『イシュタルの船』を強く推す。異世界転生オレツウェイ、個性的な仲間(ハゲ)、さらわれた巫女(ヒロイン)を救え!、メリケン的マッチョヒーロー!!

*上記『ムーン・プール』を雑誌掲載当時にラヴクラフト怪奇小説史上の傑作と称賛していた、また作中に登場するポナペ島古代王朝の遺跡チャウ・タ・レウル/Chau-te-leur(新訳ではカウ・トゥ・レウル)をオマージュとしてクトゥルフ/Cthulhuが生まれたのでは?という情報がついったちほーに流れていた


マイケル・ムアコック
ストームブリンガー』『魂を盗むもの』ホークムーン・シリーズ(特に最初の3冊の本)
*ダークヒーロー、魔剣(インテリジェンス・アイテム)、法と混沌の対立(上記、魔界の紋章がインスパイア元)、諸神格が多元宇宙にわたって陰謀&抗争を繰り広げる世界観、紅衣の公子コルムに移植した手と目(ヴェクナの手と目)

ここの作品群の中では比較的新しい為か、エターナル・チャンピオンシリーズの総括たるエレコーゼやホークムーンのブラス城年代記はリストに入っていない


アンドレノートン
*ペンネームは男性名だが女性作家。60歳を過ぎてからガイギャックスのD&Dプレイグループに参加した(1976)というからオドロキ、すごいおばあちゃんだ。

なお彼女はその2年後の1978年に小説『Quag Keep』を執筆するが、こいつは「RPGプレイヤーがゲームの世界に異世界召喚される」という、どこぞで聞いたような設定を持つ物だった。(しかもグレイホーク!)

最古のRPG小説からしてこうだった訳で、中々にこのジャンルの因果は深い。

 

*『Quag Keep』冒頭でノートンはガイギャックスに謝辞を述べているが、ここではD&Dことをウォーゲームと説明している。この今までにない全く新しい概念のゲームを「ロールプレイング」と呼ぶようになるのは1975~76年頃であるが、この時点ではまだあまり一般的ではなかったようだ。なお皮肉なことにロールプレイングが世に広く認知されるようになったのは出版1年後のジェームズ・ダラス・エグバート三世失踪事件からである。


アンドリュー・J・オファット
『Swords Against DarknessⅢ』
*SFマガジンなどで短編が少数和訳されたのみ

 

フレッチャー・プラット
『The Blue Star』


フレッド・セイバーヘーゲン
『アードネーの世界』

マーガレット・セント・クレア
『THE SHADOW PEOPLE』『SIGN OF THE LABRYS』
*上記ダンセイニ著作『ナス氏とノール族の知恵比べ』の続編ともいえる短編『The Man Who Sold Rope to the Gnoles』を執筆しているが、こちらの作品もガイギャックスは読んでいたようである。


J.R.R.トールキン
ホビットの冒険』『指輪物語
*スマウグ(財宝を抱えた強大なドラゴン)、エルフ、ホビット(ハーフリング)、ドワーフミスリルバルログ(バロール)、エント(トリエント)、塚人(ワイト)、オーク、ホブゴブリン、ウォーグ、野伏 (クラス:レンジャー)
注意点として『シルマリルの物語』『終わらざりし物語』などの後年になって追加出版された設定は、時期的にAD&D1stへの影響は無い

*オリジナルD&Dの原型となったミニチュア・ウォーゲーム『Chainmail』ファンタジーサプリメント冒頭では「J.R.R.トールキンロバート・E・ハワードなどのファンタジー作家が描いた壮大な戦いを再現」と説明、同ルールのユニットとしてホビット、エルフ、ドワーフ、オーク、エント、レイス(ナズグル)、バルログも登場する。
またドラゴンの項目では、『ホビットの冒険』に登場する強大なレッド・ドラゴン(つまりスマウグ)を例として挙げている。

*ストーン・ジャイアントは夜に岩石を投げて遊ぶのを好み、また他種の巨人より岩投げの射程距離が長くキャッチするのも上手いといった記述が『Monster Manual』に見られるが、これは『ホビットの冒険』にて、トーリン御一行が霧ふり山脈越え時に「石の巨人」を目撃したシーンがおそらく元ネタになっている。

*なおガイギャックスがトールキン、特に『指輪物語』を否定的に扱う理由について「著作権的な問題でD&Dに指輪物語の影響は少ないと強く主張する必要があった」説が根強いが、初期Dragon誌のコラムを読んだ感じでは「トールキンファンに色々言われてニワカうぜぇ!とブチ切れた」といった印象が強く、何よりそれ以上にここに挙げられた作家リストの傾向からして「ホビットの冒険はともかく、指輪物語はガイギャックスの趣味ではなかった」という単純な理由が一番かと思われる。

*トールキンとD&Dの関係性についてはガイギャックスが色々とぶっちゃけているんで、ココを読んで各自判断願いたい


ジャック・ヴァンス
『天界の眼:切れ者キューゲルの冒険』『終末期の赤い地球』
*キューゲルはクラス:シーフの原型の1つ、上記グレイマウザーと同様に作中で呪文書から魔法を使うシーンがある(まあキューゲルは呪文を間違えたりして大変な目に合うのがいつものオチだが)他にもD&Dの呪文関係に多大な影響を及ぼしている

*終末期の赤い地球は「ファンタジー世界だと思ったら、実は科学文明が衰退した遥か遠い未来の地球」という世界観(所謂ダイイング・アース)であるが、コレはC.A.スミスのゾティーク連作にインスパイアされている。なお後年になると今度は『終末期の赤い地球』にインスパイアされたジーン・ウルフ作新しい太陽の書』が生まれるが、この作品の主人公セヴェリアンの持つ剣「テルミヌス・エスト」を元ネタとしてラノベヒロインD&D3.0版で武器マーキュリアル・グレートソード(サプリメント『武器・装備ガイド』収録)が生まれると言う、1930年代から2000年初頭まで続く細くて長い繋がりが見て取れる

*飛ぶように駆けることが出来る魔法の長靴、握れば自動で敵に斬りかかる意思を持った剣、悪意ある魔法を跳ね返す護符、絹で眼球をちりばめたローブ、アイウーン石(未訳morreion収録)、魔法杖などなど直接D&Dに影響を与えたとおぼしきマジックアイテムも多く目につく


スタンリイ・G・ワインボウム


マンリー・ウェイド・ウェルマン


ジャック・ウィリアムスン


ロジャー・ゼラズニイ
『影のジャック』『真世界アンバー』シリーズ
*ジャックもクラス:シーフの原型の1つであるが、後年の上級クラス:シャドウダンサーの元ネタにもなっていると思われる。
神話をベースとしSFとファンタジーを融合させた作品を多く書いたゼラズニイだが、作品ごとの当たり外れが大きい、というか個人の好き嫌いの傾向が大きく出ることが多い。
(アンバーシリーズはファンタジーファンに絶大な人気を誇るが、一部SFファンには低く見られていたり)
個人的にはヒューゴー賞取った『わが名はコンラッド』は大ハズレだが、『ロードマークス』のわけわかんなさが大好き。それと『影のジャック』は「ダークソウル」(特に3作目)との共通点が非常に多い気がするが、マイナーさゆえその点についての指摘考察などは見たことが無い

 

以上の作家の内、ディ・キャンプ&フレッチャー・プラット、ハワード、フリッツ・ライバージャック・ヴァンスラブクラフト、A.メリットが「AD&Dに最も直接的な影響を与えた」との事。(ガイギャックス的にトールキンが含まれていないのは留意すべき点)


なお日本においては翻訳の関係で直接的にはAD&D1stが入ってこず、ザナドゥ、初代ファイナルファンタジーウィザードリィ、バスタードなどからの間接的な影響となってしまったが、それに比べるとマイケル・ムアコックエターナル・チャンピオンシリーズは順調に和訳されていったこともあって、80年代後半の日本ファンタジー界隈に与えた影響は目に見えて大きかった。

*1:EN Worldフォーラム Q&A with Gary Gygaxスレ#403

*2:1961年、ファンタジーサブジャンルに新しい名称が必要だというムアコックの呼びかけに応えて、フリッツ・ライバーがこの用語を提案した

「亡国の吸血姫」描写から見るルール その2

アンデッドになった者の蘇生関係 73pから81pぐらい

どうやらD&D、ユグドラシル、転移後の世界でそれぞれ設定が違うみたい

D&Dでは:倒した後、高位の蘇生呪文であれば生者として復活
ユグドラシルでは:アンデッドからの種族変更はワールドアイテムが必要
転移後では:倒した後、高位の蘇生呪文であればアンデッドとして復活するが、アンデッド化の元凶を取り除けば元に戻ったという記録もある

まあ「亡国の吸血姫」で生者としての復活が不可能だった原因については〈始原の魔法〉やキーノのスキルの絡みもあるので、さらなる検証が必要か。

 

"ちなみにスライムゾンビは存在しない。どんな種族でもゾンビ化、スケルトン化はする。ただし例外的に骨格がない者にはゾンビ化、スケルトン化が起こらないとユグドラシルでは決まっていた" 89p

D&D3版系ではゾンビ及びスケルトン・テンプレートを適用出来る元種族は「(アンデッドを除く)骨格を持つ実体のあるクリーチャー」となっていた。

 

"ゾンビの移動速度は鈍い" 100p

D&D3版系ではゾンビ化すると1ラウンドに1アクションしかとれなくなる。
つまり通常ならば移動後に攻撃orダブル移動、となるところがゾンビだと移動か攻撃のどちらかのみとなってしまう。

このようにゾンビ化はある意味弱体化でもあるため、ヒット・ダイス(オバロでの種族レベル)に対し脅威度(オバロでの難度)は1/3程と他のモンスターに比べるとかなり低い。

 

"信仰系魔法職者の存在が神の力があることを保証している。だからこそキーノは神の力だけを借りるなり、奪うなり、盗むなりして皆を元に戻せないか、という研究も試みた"  92p

キーノちゃんはウルプリーストにでもなるつもりなの?

ソーサラーからじゃ前提条件の1つの<知識:宗教>8ランク以上がかなりきついなぁ。

 

"そんな凄い炎の杖を振り回す炎の巨人の王を倒すなんて出来ないよ"
"剣を棄ててレーヴァティンを取り出した際の余波を食らって" 200p

ユグドラシルではスルトの持っている炎の剣はレーヴァティンでは無く、レーヴァティンは杖という解釈のようだ。
ちなみにD&Dのスルト(神格ランク14、中級神)は超巨大サイズの+5ブリリアントエネルギー・フレイミングバースト・ロングソードを持っている。

 

"装備されているアイテムは、着用者の能力などと結合され、同じだけの抵抗力を持つ。例えば悟がネックレスを装備した時と、地面に落ちたネックレス。同じ耐久力を持っていたとしても簡単に破壊されるのは地面に落ちている方だ" 339p

D&D3.5eでアイテムがセーヴィング・スローしなければいけない状況でのルールはほぼ上記と同じである。
通常、ダメージ魔法を食らっても装備品にそのダメージが及ぶ事はないが、セーヴィング・スローを自動失敗(出目1)した場合、ランダムで所有するアイテム1つにダメージが入る。
この時、所有者のセーヴ・ボーナスを使用してダメージを半減できるかの判定を行えるが、アイテムが地面に落ちていた場合はアイテム自身のセーヴ・ボーナスを使用する。
このボーナス値はマジック・アイテム作成時に必要な術者レベルにより算出されるが、知性を持つアイテム(インテリジェンス・アイテム)などはキャラクターと同様の独自のセーヴ値を持つ。
当然、高位のマジックアイテムはダメージ半減できる確率は増えるし、魔化されてない通常のアイテムはセーヴ出来ない。

これらのルールをそのまま運用すると地面に落ちたアイテムは魔法の品であっても壊れやすい、ネックレスなどの小さなアイテムはHPも硬度も低いのでなおの事である。
武器落とし後にファイアーボールかましてくるようなひどいDMもけっこういるので要注意。

*補足:アイテムのヒット・ポイント及び硬度はアイテムの種類、大きさ、材質、魔法的な強化、ドワーフ造りなどによって決定される、また物理攻撃による武器、盾へのダメージは「武器破壊」ルールによるものでセーヴ半減出来ない。

 

"ユグドラシルの場合、金貨はひとまとめにされ重量はない扱いだった。ゲームだからこそだが、その恩恵は今でも受けている。ではこの世界の貨幣は同じ扱いなのか。それとも一枚一枚に荷重判定があり、合計されていくのだろうか。もし、そうだとすると面倒なことになる" 145p

ウォーゲームの影響が色濃く残るAD&D1st、その後継でありシステマチックに進化したD&D3版系では当然厳密な荷重のルールがあり貨幣ほか諸々のアイテムに重量(3版系ではポンド)が決められている。

貨幣の荷重といえば、財宝の全てが銅貨だった為に重くて持ち帰れなかったとかいう古典的嫌がらせが有名であるが(ガイギャックスが息子相手にやらかしていた)そういった面倒事を別にしても、まず荷重計算がめんどくさい。

「鉛筆と紙」でプレイするRPGでは、これはとんでもなくプレイアビリティを損なうルールに見えるだろうが、21世紀の電脳キッズたる筆者は全てエクセルのキャラクターシートにぶち込んで計算していたので、その点については苦労した覚えは無い。

 

 *重量がらみの余談。あなたがもしD&D初心者なら、キャラメイクする時に名前はすぐに決めなくてもいいが、とりあえず体重は決めておこう。

最初の冒険で君が名の知れた英雄になる事は無いだろうが、死体となって引きずられる可能性は高いからだ。

 

 

追記:リアリズムの追及がゲームを良くするという幻想が残っていた初期RPG(電源、紙問わず)では、プログラム容量の制限などあったにもかかわらず、荷重ルールをシステムに導入したものも多かったと思う。

初期と言うにはちょいと遅いが、1989年にファミコンに移植されたアクションRPGハイドライド3 闇からの訪問者」は、荷重ほか時間の推移、腹減り、睡眠と意欲的にリアル要素を取り入れたゲームであった。

が、しかし、この「リアル」が実際のゲームプレイにどのような影響を与えたかと言うと、
ザコ敵を倒してレベル上げ>やがて小銭が溜まる>重くて動けない>おなかが減って餓死>わたるが死んじゃう!
といった具合に、なんともしょうもない理由でゲームオーバーを迎える羽目に。

そしてこの「小銭による重量制限の圧迫」を解決する手段もあるのだが、それも「草原にポツンと両替機が落ちている」(ノーヒント)といったものであり、勇者が背中に両替機(そこそこ重い)を背負いながら戦闘&両替を続けるという…リアルからはかけ離れた、なによりとてもカッコ悪いものとなってしまっていた。