Tomb of the Overlord

オーバーロード 元ネタ考察 備忘録

オーバーロード 山小人の工匠 カバーイラスト

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ご存知11巻の表紙だが、なんとなく似ているもの(*個人の感想です)を集めてみた

 

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まずはD&Dベーシック・ルール・セット(1983年クラシックD&D4版、1985年に邦訳)のボックスアート、ラリー・エルモアの手による有名なイラストである。なおこの装丁はD&D4版スターター・セット(2010年、ややこしい)にも同じものが使用された。

 

「財宝を抱えたドラゴンと対峙する冒険者」という構図は、D&Dにおいてはベーシック・ルール・セット第2版(Holmes版、1977)などにすでに見られるが、これについてはトールキンの『ホビットの冒険』におけるスマウグのイメージの影響が大きいものと思われる。

 

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これはクラシックD&D第6版1994年の物、ジェフ・イーズリーによるかっこいいイラストで好きなのだがネットで見かけてから長年、なんの本か知らなかったw

 

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指輪物語の昔の文庫本の表紙、腰の引けっぷりがゴンドのそれを連想させられる。

 

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ついでに日本ファルコムドラゴンスレイヤー1984年。自分はpc-88でソーサリアンファミコンでドラスレ4をやりこんだ口ではあるが、こちらは未プレイ

 

『山小人の工匠』ではオラサーダルクが腹の下に財宝を抱えている点で赤箱オマージュなのか、遡ってスマウグなのか。どちらかが元ネタとなっているのは間違いないだろうが…まあ縦の構図でドラゴンに対峙するようなイラストとなると、どれも同じような物になっちゃうのかもしれない。

 

追加

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ドラゴンクエスト』1986年
なぜかドラクエのこの絵をすっかり忘れていたのだが、魔法陣グルグルを見ていて思い出したw

*国産電源系RPGとして下記『夢幻の心臓』の直系なのは間違いないが、ロゴにドラゴンと剣の意匠をあしらった点は『ドラゴンスレイヤー』と同様である。

 

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夢幻の心臓1984年 PC88版 起動画面
システム含め、ドラクエへの影響が大きい

というかドラクエ、ドラスレに限らず、1983年前後のPC88、和製CRPG黎明期にはやたらとこのような「ドラゴンと対峙する戦士」の構図が多い。(コレとかコレとかコレとかコレ

これら諸々のイメージソースは、おそらく赤箱オマージュではなく『ウルティマ/Ultima』(1981)付属のカバーイラスト(ペラ紙のカラーイラスト及びマニュアルのモノクロイラスト)が源流になっていると思われる。

 

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鏡の国のアリス1871年ジョン・テニエルによるジャバウォックの挿絵
竜退治ではないが、知名度的にこれが一番の源流な気がしてきた。

"竜殺し"の伝説といえば聖ゲオルギオスが有名だが、そちらは馬上から突き下ろしている画が主流だし。

 

さらに追加

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ゴブリンスレイヤーTRPG 限定版』2019年
赤色のボックス入りセットという点からしてD&Dベーシック・ルール・セット(赤箱)のオマージュなのは疑いようがないが、キャラが多い分イラストの赤箱ボックスアート感は薄れてしまっている…のだが。

 

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『D&Dベーシック・ルール・セット』パッケージイラストのラフ画(2017年になって発掘された)
エルモアによると、イメージについてガイギャックスに意見を求めたところ、身を乗り出し両手を爪のように立て、ドラゴンが「あなたに向かって飛び出してくる」ようにと提案、さらに上記水彩ラフ画を戦士とドラゴンをクローズアップした構図に変更させたことにより有名な赤箱ボックスアートが完成した。
ご覧の通り破壊された石柱や杖を持った女性のポーズなどがゴブスレTRPGのイラストと類似している。もしこの没イラストがゴブスレTRPGのオマージュ元なのだとしたら、ずいぶんとまあ狭い所から引っ張ってきたものである。

 

もひとつ追記:『Dungeons & Dragons Art & Arcana: A Visual History』(ごつい400ページ越えのビジュアルガイド本)からの情報によると、D&Dの原型となったミニチュアウォーゲーム『Chainmeil』(1971)ファンタジー追加ルールの章に描かれた「竜に立ち向かう騎士」のイラストは、J.R.R. トールキン著『農夫ジャイルズの冒険』挿絵の模写から生まれたものだという。

*上が『農夫ジャイルズの冒険』(1949)、下が『Chainmeil』(1971)の挿絵

『Chainmail』ファンタジーサプリメントのドラゴンの項目では『ホビットの冒険』に登場するグレート・レッド・ドラゴン(つまりスマウグ)を引き合いに出しており、さらにはウォーゲームという性質上「五軍の戦い」を彷彿とさせるゲームになっているが、
「ドラゴンと対峙する冒険者」というビジュアル系譜の源流については同じ「トールキンの黄金竜」であっても『ホビットの冒険』のスマウグではなく、正確には長者黄金竜(Chysophylax Dives)とジャイルズの遭遇シーンということになる。

 

上記イラストの構図は聖ゲオルギオスの竜退治画によく似たものも見られるが、それらに比べ騎士より竜のサイズがだいぶん大きくなっている。これが「剣と魔法」の小説ブーム及びRPGの興隆によりドラゴンのイメージがさらに強大化していった結果、「巨大なドラゴンの手前に戦士」という赤箱カバーアートのような構図が蔓延るようになったのだろう。

ブレイン・アングラウス

人間のケンセイ5/ソードセイジ2 ECL7 脅威度7

秩序にして中立、中型サイズの人型生物

ヒット・ポイント:54(5D10+2D8+14)

イニシアチブ+7;知覚 暗視60フィート

移動速度:30ft

アーマ・クラス:19、接触15、立ちすくみ17

基本攻撃/組み付き:+6/+10

攻撃:カタナ= +13近接(1d10+8/19-20×2)

全力攻撃:カタナ= +13/+8

セーヴ:頑健+7、反応+7、意志+7

能力値:筋力16/敏捷力15/耐久力14/知力12/判断力14/魅力8(ポイントバイ32)

技能:〈軽業〉+13、〈聞き耳〉+9、〈真意看破〉+9、〈職能:農夫〉+5、〈精神集中〉+12、〈知識:武勇伝〉+6、〈跳躍〉+14、〈平衡感覚〉+8

特技:《イニシアチヴ強化》《回避》《迎え討ち》《特殊武器習熟》《武器熟練》《武器開眼》《クリティカル・ロール強化》

主な装備
カタナ、高品質のチェイン・シャツ、ゴーグルズ・オヴ・ナイト、ヴェスト・オヴ・レジスタンス+1、リング・オヴ・マイナー・スペルストアリング、リング・オヴ・プロテクション+1、ベルトポーチ、ポーション・オヴ・ブルズ・ストレンクス、ポーション・オヴ・キャッツ・グレイス、オイル・オヴ・マジックウェポン

クラス能力:ケンセイ
選択武器(カタナ)の命中、ダメージに+2ボーナス

Rain of Blows:全力攻撃時1回の追加攻撃ができる。最も高い基本攻撃ボーナスで行うが、-3のペナルティ

クラス能力:ソードセイジ
伝承者レベル4
修得武技 7
準備済武技 4
修得構え 2

流派専念/discipline focus(変則):選択した流派武器について《武器熟練》

素早き反応/Quick to act(変則):イニシアチヴ判定に+1ボーナス

ACボーナス(変則):軽装時、ACに判断力ボーナス

 

*基本クラス:Kensaiは、「戦士大全」の上級クラスの方ではなく、Dragon #310出展のスペシャリスト・ファイター。
軽装のみの習熟しか持たないが、選択した一つの武器が強くなるヴァリアント。
技能も通常のファイターから変更され<軽業>も取れるんでアタッカーとして強い。

ブレイン装備の〈瞳の首飾り/ネックレス・オブ・アイ〉について
D&D3.5eには盲目耐性や暗視を与えるアイテムもあるが、どれもアミュレット枠では無い。DMG及びMICの部位スロット変更、能力追加ルールを使えば再現できるがこの手は勢いマンチに走り気味となる為、本に載ってないアイテムは自作を禁止するDMも多い。というわけでとりあえずゴーグルズ・オヴ・ナイトで暗視を付けといた。

キャラデータ的にカタナには能力:キーン(クリティカルレンジ倍化)でも付けたい所だが、〈神刀〉は設定上、魔化されていない様なのでそのままに。マジックウェポンのオイルも持ってるし。

あとソードセイジの武技は流派:ダイヤモンドマインドを中心に選んでいけばそれっぽくなると思う。

セバス・チャンの高速移動

"俺は領域を発動させていたんだぞ? 範囲は狭いが、一直線に走ったのであれば引っかかったはずだ。にも関わらず察知できなかった……? " 書籍5巻-353p

まあバトル漫画とかによくあるパターンではあるが、ここからセバスの尋常でないスピードを読み取る向きもあるようだ。

実際、D&D3.5eの高レベルモンクはとんでもなく足が速い。
モンクは3Lvより特殊能力「高速移動」を得て、これはレベルアップとともに強化される、またモンク系上級クラスでも引き続き強化させれる事が多い。

試しに人間モンク29Lvの移動速度を計算してみると、移動アクション(約3秒)で120フィート、さらに特技《Epic Speed》を習得したこのキャラが「疾走」すると、750ft/6s≒137km/hと、ウサイン・ボルトの3倍ものスピードですっ飛んでいく事ができる。
これは呪文やアイテムによるバフを含まない、純粋に肉体を鍛え上げて得た能力である。

このように確かに人間離れしたスピードではあるが、ブレインが知覚出来ない程かというとまた疑問が残る。
そこでもう一つの可能性として考えられるのがモンク12Lvで得る特殊能力「縮地の法/Abundant step」だ。

この能力は《ディメンジョン・ドア》呪文と同様に効果を表す、つまり高速移動ではなく、瞬間移動となる。

これならコッコドールの懐まで瞬時に近づくことができるし、戦術特技《日輪門派》があればさらにノーモーションで拳を叩き込む事ができる!


ちなみにココまでモンクレベルを上げなくても、おそらく比較的低レベルのドルイドのほうが短時間なら移動速度は上になる。
あいつらはウマに変身した上でチーターの突撃とか使えるから…モンクの血の滲む様な修行も形無しだ…

 

追記:"アルファの姿が霞む。短距離を転移したように、突如目の前に現れた" 書籍6巻-363p

上はユリ姉VSイビルアイのシーンだが、ここでも縮地を使って間合いを詰めたようだ。

"森の賢王" ハムスケ

アウェイクンド・ジャイアント・ジャンガリアンハムスター 脅威度7

真なる中立、大型サイズの魔獣(変性種動物)

ヒット・ポイント:90(9D10+36)

イニシアチブ+4;知覚 暗視60フィート、夜目

移動速度:40ft、登攀20ft

アーマ・クラス:18、接触12、立ちすくみ15(サイズ-1,敏+3,外皮+6)

基本攻撃/組み付き:+9/+19

攻撃:爪= +16近接(1d6+6)または 尾の打撃= +15近接(1d8+6)

全力攻撃:爪+16(×2)及び 尾の打撃+13

セーヴ:頑健+10、反応+9、意志+4

能力値:筋力22/敏捷力16/耐久力18/知力11/判断力12/魅力8

技能:<隠れ身+4>、<聞き耳+9>、<視認+9>、<忍び足+4>、<水泳+11>、<登攀+11>

特技:《鋭敏感覚》《複数回攻撃》《外皮強化》《武器熟練》(爪)

擬似呪文能力(術者レベル9)
 3回/日 ブラインドネス(DC11)
 1回/日 チャーム・モンスター(DC13)

出現環境:温暖/森林

編成:単体


ダイア・ラットをベースに覚醒して魔獣化、HDの強大化、サイズ大型へ
レジェンダリィ・アニマルにでもしようかと思ったが強くなりすぎるので断念。

 

追記:D&D3版系にはハムスターのデータは無かったと思うが(MMのネズミのデータで代用しろと書かれているのが大半)、AD&D2ndのキャンペーン・セッティングの一つ「スペルジャマー」のサプリメントに掲載されたモンスターの中には「ジャイアント・スペースハムスター」という大型サイズのハムスターが存在した。

モンスター解説を見てみると、ハムスターの肉はスパハム(spaham)と呼ばれ美味であり、ノームが巨大な宇宙ハムスター牧場で繁殖させているとか、明らかにギャグとして書かれているのが分かる。


まあ、これだけなら和訳もされてない日本ではマイナーなサプリのモンスターであり、ハムスケとの関係性は薄そうであるが、AD&D2ndをベースとしたコンピュータRPG「バルダーズ・ゲート」シリーズにおいて仲間に出来るレンジャー「ミンスク」が、ミニチュア・ジャイアント・スペースハムスターの「ブー」(どう見てもただのハムスターであるが、おつむが少々アレなミンスクは巨大宇宙ハムスターのミニチュア版と信じているw)を相棒として溺愛し、また彼らコンビはかなりの人気を博した。


うろおぼえだが過去の感想返しで、丸山くがね氏はバルダーズ・ゲートだかネヴァーウィンター・ナイツについても触れており、ここから「ペットに巨大ハムスター」の発想が生まれたのかもしれない…

オバロの魔法名は厨二成分が足りない

という意見に対し、なぜならD&Dがベースになっているから、と答えることは簡単だ。

さらにもう一歩話を進め、D&Dでの呪文名がなぜこのような簡素な英単語の組み合わせになっているかというと、ジャック・ヴァンスファンタジー小説『終末期の赤い地球』(1975 和訳)シリーズや『天界の眼:切れ者キューゲルの冒険』(2016 和訳)をガイギャックスをはじめとする初期デザイナーが愛読しその影響が大きかったためという。

ここまではネットでググっても出てくる情報だが、では上記の小説での呪文名が和訳された小説ではどうなっているかというと、D&Dの和訳された呪文名とも大きく感じの違った、なんというか"味のある"物となっている。


ウチの本棚に『終末期の赤い地球』もあるし、『切れ者キューゲル』も最近になって国書刊行会から和訳されたことだし、せっかくだから備忘録的にこれらの呪文名を書き留めておく。

 

〈よるべなき包嚢の術〉(河出文庫『不死鳥の剣』収録時の訳)
〈孤絶の包嚢術〉(国書刊行会、訳者は上と同じ中村融)"Forlorn Encystment"
*対象を地表から45マイルほどの地下に閉じ込める呪文、D&D《インプリズンメント/幽閉》呪文の元ネタとして知られる

ラグウィラーの〈かゆみ地獄〉"Lug-wiler’s Dismal Itch"

〈裏返しの術〉"the Inside Out and Over"

ザスドルバルの〈目印付き転送の術〉"Thas-drubal’s Laganetic Transfer"

〈遠隔急派の術〉"the Agency of Far Despatch"

〈足指肥大化の術〉"The Spell of the Macroid Toe"

〈フェローヤンの二次金縛り〉"Felojun's Second Hypnotic Spell"

〈ファンダールの渦旋活殺の術〉"Phandaal's Gyrator"

〈ファンダールの魔法のマント〉"Phandaal's Mantle of Stealth"
*D&Dでもこのような魔術師個人の名の付く呪文は多い。

〈活力持続呪法〉"The Charm of Untiring Nourishment"

〈球状排撃術〉"The Spell of the Omnipotent Sphere"

〈時間遅滞の呪文〉"the Spell of the Slow Hour"

〈捻転苦の呪文〉"twisting torment"
*なぜだかこの呪文だけツイスティング・トーメントとルビを振ってある

〈無敵火炎放射術〉"The Excellent Prismatic Spray"
*見てのとおりD&D《プリズマティック・スプレー/虹色のスプレー》呪文の名前の元ネタである。
D&Dのものは七色のビームで対象に盲目効果をはじめエネルギーダメージ、毒、石化、狂気、追放などをランダムで与えるものだが、ヴァンスの作中描写では「四方八方から炎が襲いかかる」「多彩な刺し殺す火箭」とあり、これはどちらかというとファイアーボールやマジックミサイルの方が近いか。


以下、魔術師リアルト『Rhialto the Marvellous』(1984未訳)より

序文
Xarfaggio's Physical Malepsy
Arnhoult's Sequestrious Digitalia
Lutar Brassnose's Twelve-fold Bounty
The Spell of Forlorn Encystment
Tinkler's Old-fashioned Froust
Clambard's Rein of Long Nerves
The Green and Purple Postponement of Joy
Panguire's Triumphs of Discomfort
Khulip's Nasal Enhancement
Radl's Pervasion of the Incorrect Chord

『The Murthe』
spell of Internal Solitude
spell of twisting and torsion
spell in turn of compressions from seven directions
spell of dissolution

『Fader’s Waft』
spell of inanition upon Frole
the Spell of Soft Silence
Spell of Lightsome Striding
the Spell of a Hundred Centuries

『Morreion』(初出は1973)
Houlart's Visceral Pang
Green Turmoil
Galvanic Impulse
Houlart's Blue Extractive
spell of brain pullulations
Instantaneous Galvanic Thrust
Instantaneous Electric Effort
spell of Temporal Stasis
*これこそ《テンポラル・ステイシス》呪文の起源だろうが、作中描写は完全に《タイム・ストップ》呪文そのものとなっている。
作中、魔術師たちは手に入れたアイウーン石を山分けるするため、抽選によって配当を決める事にするのだが、主人公リアルトはテンポラル・ステイシスの魔法で周囲の時間を止め、その間にチップに印を入れるというインチキを敢行。しかし他の魔術師も同様に何時の間にやら時間停止で印を書き換えていた為、リアルトの企みはあえなく失敗…というオチ。『終末期の赤い地球』収録の連作よりは『切れ者キューゲル』シリーズに近い、ヴァンスらしいユーモアの利いたシーンとなっていた。

 

2001年のガイギャックスの記事によると《ローブ・オブ・アイズ/Robe of Eyes》も『終末期の赤い地球』かららしいが、これは〈情無用のチャン〉の着ている寛衣を指しているのか?(原文では"robe of eyeballs threaded on silk")また《アイウーン・ストーン/Ioun stone》も初出は終末期の赤い地球シリーズからだが、これが記載された小説『Morreion』は残念ながら未訳、国書から翻訳されないかなあ。


なお超位魔法のオリジナル&厨二度が高くウィッシュを除くとD&Dに同様の物が見られないというのは、最上位の魔法だからはっちゃけた!という事もあると思うが、発想元となったD&Dのエピック呪文がオリジナル呪文作成の為のルールという側面が強いため、どんな名前のすごい効果の魔法でもアリだろう、とオリジナル度を高めて作った結果だと思われる。


*切れ者キューゲルの和訳について、「40年遅ぇよ」という意見もあるだろうがここはさすが国書!と称えたい、みんなも買おうw
早川も相変わらずマイペースで刊行してるし、長生きする事はSF&ファンタジーオタには必須のスキルである。

"蟲愛でるメイド" エントマ・ヴァシリッサ・ゼータ

レイニアソーサラー4/アラクノマンサー1/ヴァーミン・ロード7/エキゾチックウェポン・マスター1 計16HD ECL20 脅威度18
中立にして悪 中型サイズの魔獣(変身生物)

ヒット・ダイス:4D10+4D4+8D6+64(128HP)

イニシアチブ:+11

移動速度:60フィート、登攀25フィート

アーマ・クラス:27(+4[敏]、+5鎧、+4外皮、+4反発)、接触18、立ちすくみ23

基本攻撃/組み付き:+9/+12

攻撃:噛みつき= +16近接(1d6+3および毒):または 蜘蛛の糸= +16遠隔
または +1リヴィング・チェイン= +18近接(2d4+5)

全力攻撃: +1リヴィング・チェイン= +18/+13近接(2d4+5)

セーヴ:頑健+15、反応+18、意思+15

能力値:筋力16/敏捷力24/耐久力18/知力16/判断力10/魅力22 (精鋭規定値)

主な技能:〈隠れ身〉+14、〈聞き耳〉+8、〈視認〉+13、〈忍び足〉+10、〈呪文学〉+14、〈職能:メイド〉+10、〈精神集中〉+22、〈製作:武器鍛冶〉+6、〈知識:自然〉+7、〈知識:神秘学〉+8、〈跳躍〉+16、〈登攀〉+22

特技:《イニシアチヴ強化》《武器の妙技》《蟲友》《呪文テーマ》《特殊武器習熟》《武器熟練》(スパイクト・チェイン)《鋼の意思》

主な装備
リヴィング・チェイン(+1スパイクト・チェイン、足払い判定に+2、MIC記載)、ミスリルチェイン・シャツ+1(追加能力 トワイライト、グラマード) 、アミュレット・オヴ・ヘルス+4、クローク・オヴ・カリズマ+4、グラヴズ・オヴ・デクスタリティ+4、ヴェスト・オヴ・レジスタンス+3、ブーツ・オヴ・ストライディング・アンド・スプリンギング、リング・オヴ・プロテクション+4、リング・オヴ・フリーダム・オヴ・ムーヴメント、巻物整理器、スクロール各種

種族能力
暗視60フィート、夜目

変身(超常):生来の形態は中型サイズのモンストラス・スパイダー、特定の個体の小型or中型の人形生物、及び中間形態に変身可能

蜘蛛の糸(変則):1日6回、射程単位10ft、最大射程50ft
大型以下のサイズの目標に対して効果を持つ
からみつかれた状態から脱出するには<脱出術>判定(難易度22)又は筋力判定(難易度26)で引きちぎることができる。
蜘蛛の糸は6hpを持ち硬度0、[火]からは2倍のダメージを受ける。

毒(変則):致傷・頑健:難易度22…初期/予後:1d6[筋]/2d6[筋]

*アレイニアは種族能力として3Lvソーサラーとして呪文を発動できる。幻術と心術を好み、[火]の呪文は避ける。

クラス能力
ソーサラー12Lvの呪文発動能力を持つ。

1日の呪文数:6/8/8/7/7/6/4;DC=16+呪文Lv
習得呪文数 :9/5/5/4/3/2/1

主な習得呪文
メッセージ、ウェブ、サモン・スウォーム、スパイダー・クライム、マイナー・イメージ、サウンド・ランス、ファイアーボール、ボール・ライトニング、ジャイアント・ヴァーミン、サモン・ラージ・モンストラス・スパイダー、サモン・ガルガンチュア・モンストラス・スパイダー

ラクノマンサー
蜘蛛との会話(超常)、毒に対するSTボーナス+1

蜘蛛魔法:呪文リストに多数追加

ヴァーミン・ロード
キチン質(変則):外皮+3

蟲の下僕:1HDと4HDの蟲の下僕を得る、使い魔と同等に[知力]は増加。

吸血(超常):噛みつき攻撃時、機会攻撃を誘発せずに組みつきの開始を試みることができる。
これに成功すると顎が犠牲者から血を吸うため毎ラウンド自動的に2d6ダメージ。

スパイダー・ハンド:擬似呪文能力1日1回

群鎧(超常):昆虫、蜘蛛、あるいは蠍の大群を招来し自らの肉体を覆うことにより、あらゆる攻撃によるダメージを1回の攻撃につき10ポイントまで吸収する。
これらの昆虫はこのような攻撃を吸収すると死亡する、1日に合計で35ポイントまで。この者がすでに鎧を着ている場合は、この能力は効果を持たない。

蟲羽根(超常):1日1回1時間のあいだ、自身の背中に巨大なぶんぶんうなる昆虫のような羽根を生やすことができる。
この羽を使用すると、通常の地上移動速度で飛行することができる、機動性は標準。

スパイダー・レッグズ:擬似呪文能力1日1回

スピュー・ヴァーミン(擬呪):1日1回、30ftの円錐形の範囲に、口から蟲の大群を吹き出すことができる。
ブレス攻撃扱い、7d6ダメージ、反応・半減:難易度21
これらの蟲はあたかもサモン・スウォーム呪文によって招来されたかのように、物質界に留まりこの者の命令に従う。

エキゾチック・ウェポン・マスター
連撃術:全力攻撃時、攻撃ロールに-2ペナルティで1回追加攻撃を行えるようになる。

 

エントマの51LvをD&D3.5eに換算すると15Lvくらい、これにアレイニアのレベル調整値も考慮すると種族HD+クラスLvで12程度にするつもりだったのだが、エントマの能力を再現しようと色々積んだらこのLvになっちゃった。
ヴァーミンロードが微妙クラスなのでレベルのわりに強くは無いが、イビルアイで勝つのはきついかな。

クラス:アラクノマンサーを1Lvだけ噛ましたのはクラス:ヴァーミンロード(本来は信仰系ベースでデザインされてる)の前提条件の1つであるジャイアント・ヴァーミン呪文の発動能力を得るため。
なお3.0版ウェポンマスターになるにはどう考えても特技が足りないので、代わりに「戦士大全」のエキゾチック・ウェポン・マスターを1v、変則魔法戦士っぽくなった。

特技《呪文テーマ》には選んだ呪文の発動エフェクトを変える効果もあるので、これで符術の再現が出来る。

 

「Web版イビルアイ」描写から見るルール

改めて読んでみると、Web版のイビルアイ対デミウルゴスからアインズによるレベル推察の一連の流れが非常に分かりにくい気がするので、ちょっと解説してみる。

"デミウルゴスは未知の魔法を使われたことに警戒感はあったため、僅かに威力を殺し、様子を見るという意味での拳をイビルアイ目掛け叩き込む。 ~中略~
「……おや?」 デミウルゴスの拳には、分厚い布団を叩くような感触が伝わってきたのだ。" Web版 王都-14

D&D3.5e版のヴァンパイアは「ダメージ減少10/銀および魔法」を持つ、つまり魔法により強化された(+1とかの部分)銀の武器以外では命中してもダメージが10減る。
この部分の描写はそれを示しているのだろう。

 

"反撃とばかりにイビルアイの拳がデミウルゴスの肉体に突き刺さるが、デミウルゴスの魔法的な守りを突破するには至らない。デミウルゴスの肉体は神聖系の属性武器でなければ、ダメージを軽減する能力を有しているのだから。" Web版 王都-14

デミウルゴスの種族をD&Dのデヴィル(多くはバーテズゥの副種別)と見た場合、使用武器(肉体含む)に秩序属性、悪属性が自動で付くが銀属性はまず無いのでイビルアイは上記のようにダメージを軽減する。
同様にデヴィルもダメージ減少/善、さらには銀とかを持つので、イビルアイのこぶしパンチはデミには効かない。

 

"「私の魔法を無効にできる存在なんか会ったことも無い! 上位ドラゴンでも……魔神でもだ! お前は何者だ!」"

D&D3.5eのデヴィルはおおむねヒット・ダイス(種族レベル)+10~15ぐらいの呪文抵抗(SR)を持つ。
クラスレベルも持つデミのSRがD&D換算でどのくらいか推察するのは難しいが、ベル君アスペクト(脅威度20、オバロ70Lvパーティと戦える強さ)を参考にSR33とすると、5Lv呪文が精一杯=術者Lv10前後のイビルアイが呪文を通すにはD20判定で22を出す必要がある、つまり抵抗突破を強化する手段が無ければ100%不可能である。

*D&Dの歳経りたドラゴンはヒット・ダイスの割には弱い呪文抵抗を持つ。
強化していないピット・フィーンド(上位悪魔)でもSR32もあるし、イビルアイが戦ったという上位ドラゴン&魔神てスゲー弱いんじゃ?

 

"……デミウルゴスの支配の呪言を防いだ段階で、イビルアイが精神系無効のアイテムを所持しているか、それともなんらかの防御魔法を使用したか、はたまたは40レベル以上の存在だということが確定する。" Web版 会談-1

当然ながらヴァンパイアであるイビルアイはあらゆる[精神作用]効果に対して完全耐性を有するのだが。


"ああ。イビルアイは攻撃に武器――ダガーとかを使うのではなく、己の拳を使った。 ~中略~ ここから想定するに私はイビルアイは、スペルキャスター兼モンク職を修めていると判断している」 「おお!」"

D&D3版系のヴァンパイアは肉体武器として「叩きつけ/slam」を得る。
ダメージはライト・メイスで殴るのと同程度、ルール的に未習熟の素手攻撃とは明確に区別されてるし、モンクの素手打撃のようにレベルで強化されたりはしない。
ヴァンパイアは叩きつけに生命力吸収を乗せることも出来るし筋力も上がっているので、イビルアイ的にはいざという時に頼れる武器なのだろう。

アインズ様がティンときた術者+モンクのキャラ構築という判断は、まあこんな上級クラスもあることだし、ちかたないね。


普段からしょっちゅう感情沈静化とかしてるアインズがアンデッドである可能性について頭からすっぽり抜け落ちているくだりは、くがねちゃん的にギャグのつもりなんだろうが…
イビルアイが国堕しという情報が「王都-15」で読者に明かされていたにせよ、D&Dの知識が無い者にとっては分かり難い事この上ないw