『オーバーロード』書籍9巻のカルネ村攻防戦にて、ゴブリンのジュゲムは特殊技術/スキル〈ゴブリンの一撃〉を使用している。
また別作品ではあるが『ゴブリンスレイヤー』書籍5巻においては、小鬼聖騎士(ゴブリンパラディン)が〈只人を討つ一撃/スマイト・ヒューム〉により、ゴブリンスレイヤーの盾を容易く切り飛ばしてみせた。
このように両作品に登場するゴブリンが"一撃"という名のスキルを用いている点は、単なる偶然というわけではないだろう。
その共通点となる背景には、D&D3版系パラディンが持つクラス能力《悪を討つ一撃/Smite Evil》が発想の源にあると考えられる。
過去記事にも書いたが《悪を討つ一撃/Smite Evil》は「悪属性の敵に対し、次の攻撃1回の命中判定に魅力ボーナス、ダメージにパラディンレベルを加算する」という効果を持つ。この能力はパラディンのみならず、同様に善属性限定となっている一部のクラスや、パラディン強化系上級クラスも使用できることが多い。
さらにはD&D3.0~3.5e時代において、基本クラスおよび上級クラスが次々に追加されていく中で、《一撃/Smite》の名を冠した類似のクラス能力も数多く登場するようになった。
ブラックガード:《善を討つ一撃/Smite Good》
ヴィジランテ:《罪人を討つ一撃/Smite the Guilty》
エルフ・パラディン:《悪を射る一撃/ranged smite evil》
ドワーフ・クレリック:《巨人を討つ一撃/Smite giants》
ジャスティシア・オヴ・ティア:《無秩序を討つ一撃/Smite Anarchy》
スカー・エンフォーサー《敵を討つ一撃/Smite Enemy》
ディヴァイン・チャンピオン:《異教徒を討つ一撃/Smite Infidel》
ハンター・オヴ・ザ・デッド:《アンデッドを討つ一撃/Smite Undead》
プラティナム・ナイト:《悪竜を討つ一撃/Smite evil dragon》
ホーリィ・スカージ:《悪を討つ秘術の一撃/Arcane Smite》
モータル・ハンター:《定命の存在を討つ一撃/Smite Mortals》
パイアス・テンプラーまたはオーデインド・チャンピオン:《一撃/Smite》
タトゥード・モンク:獅子の刺青による《一撃/Smite》
サムライ:《気合の一撃/kiai smite》
適当に和訳サプリメントから抜出してみたけど……いっぱい出たね!
これほどまでに"一撃"系能力が氾濫しているD&D3版系を経験していれば、そりゃまあ同様の名称を用いた能力が被ってしまうのも無理からぬことだろう。
(というか〈只人を討つ一撃/スマイト・ヒューム〉という名からも察せられるように、ゴブスレ作中には度々D&D3版系ルール用語がそのままの形で混入。そしてそれにとどまらず、D&DのみならずT&T、ソード・ワールド、シャドウラン、カオスフレア、ダブルクロスといった各種TRPGの用語や、ファイティング・ファンタジー、グレイルクエストといった古典的ゲームブックのネタ多数、さらには90年代の富士見ファンタジア文庫作品、映画および原作のコナン、ウィザードリィやローグライクゲーム、さらにはダンセイニから児童文学に至るまで古今東西のネタが折り重なって、まさに幻想遊戯のマーブル模様とでも言うべき様相を呈しており、これを純粋に「ファンタジー小説」として評価してよいものなのか――色々と考えさせられる作品である)
なおこれら"一撃/スマイト"系能力は一般に「主要能力値ボーナスを命中判定、クラスレベルをダメージに加算」といったルールで設計されていることが多い。しかし『戦士大全』に掲載された基本クラス:サムライの持つ《キアイ・スマイト》は「命中・ダメージともに魅力ボーナスを加算する」だけという内容で、レベルが上がってもダメージは一切伸びないという微妙性能であった。(正直、デザイナーを小一時間問い詰めたい)
さらに余談となるが、AD&D1e OA及びAD&D2eのサムライは《キアイ・シャウト/Kiai shout》という能力により、一時的に筋力が人間の限界値まで上昇するという、なかなか豪快な仕様だった。3.5版サムライのキアイのこともあり、以前は「やっぱりアメリカ人の考えるサムライ像って、どこかズレてない?」などと思っていたものだが、若先生の漫画で「薩摩のぼっけもん」を知ってしまった今となっては、まあそういう解釈もアリだろう。と納得してしまっている今日この頃である。