と言われてティンときた人には以降の情報は必要の無いものかもしれない。しかし新和D&D(クラシックD&D4版/メンツァー版/BECMI)のみを経験した人にとってはゴールド・ドラゴンといえばマスタールールセット(黒箱)のカバーアートがまず思い浮かぶだろうし、AD&D系のゴールド・ドラゴンのイラストには触れていない可能性もあるかと思うのでここに補足しておく。
とりあえず以下一連のイラストを見て欲しい。
AD&D1e『Monster Manual』(1977):Gold Dragon (Draco Orientalus Sino Dux)
AD&D2e『Monstrous Compendium』(1989):Gold Dragon
AD&D2e『Monstrous Manual』(1993):Gold Dragon
D&D3e『Monster Manual』(2000):Gold Dragon
一目瞭然だが、AD&D1stゴールド・ドラゴンは東洋の竜をベースとしてデザインされており(というかラテン語でオリエンタル中華の竜ってインチキ学名が書いてある)、以降のAD&Dシリーズのゴールド・ドラゴンでも細長い体とナマズヒゲの特徴を引き継いでいる。
んで、これは何故かというとAD&D1st『Monster Manual』執筆時、各種ドラゴンの追加を行うにあたりガイギャックスは五色の色彩竜(グリーン、ブラック、ブルー、ホワイト、レッド)の対になる強力な存在として、二種類のブレスを持つ善属性の竜、メタリック・ドラゴン(ブラス、ブロンズ、カッパー、シルバー、ゴールド)を設定し、これら善の金属竜は東洋竜に典型的な蛇型の竜と考えた。ところがイラストレーターの気まぐれにより、結局ゴールド・ドラゴンのみが完全な東洋風デザインとして描かれることになったという。*1
(ファンタジーマニアであるガイギャックスは西洋竜は反キリスト、悪の象徴であるのに対し東洋竜は神の使い、信仰の対象であるというオタ蘊蓄も当然知っていたわけだ)
そして次に注目していただきたいのが、 神作画として名高いOVA版ロードス島戦記(1990)のオープニングである。
金竜マイセンにも髭がある
コンプティークに連載されたロードス島戦記初期リプレイはクラシックD&D4版ルールで行われたことは有名だが、実は当時グループSNEの主要メンバーはAD&Dしかプレイしていなかった為、連載にあたりクラシックD&Dのマスタリングが出来る水野良にDMの白羽の矢が立てられたという。*2
更に付け加えると五色の魔竜の強さ順列や、その内メタリック・ドラゴンがゴールドだけというのはクラシックD&D赤箱に準じたのであろうが、古竜/エンシェント・ドラゴンという年齢区分/Age CategoryはAD&Dの方のみにある要素。
『ロードス島戦記OVA記録集②』によると、ヒゲありマイセンのデザインはOVA用に出渕裕氏がラフを書いたようだが、ロードスアニメ化に際しグループSNEからブッちゃんにヒゲを生やすよう指示があったのかもしれない。
マイセンのヒゲは、日本RPG黎明期から輸入海外ゲームをプレイしてきたゲーマーたちのモンスター観を反映した、AD&Dの残滓なのかも?
(だったら「田舎者ホブゴブリン」や「褐色巨乳ダークエルフ」はどっから出てきたんだっつう話であるが)