Tomb of the Overlord

オーバーロード 元ネタ考察 備忘録

クラス考察 その4

〈ローグ〉 双子忍者ほか
技能系基本クラス
豊富な技能(視認に聞き耳、隠れ身忍び足などの偵察能力、罠の発見と解除、軽業に平衡感覚、跳躍などの体術、魔法装置使用など)および急所攻撃が主な成分。
10Lv以上になるといろいろな特殊能力(追い打ち、弱体化打撃、心術破りなど)を追加で得ることが出来るが、大体その前に上級クラスに進むため、そこらへんまで使っている人を見たことはない。

 不意打ちや挟撃して急所攻撃を叩き込めば筋力や《強打》に依存せず大ダメージを出すことが出来るが、装備は軽装になりがちであり打たれ弱く、前に出ないにしても弓や投擲による攻撃では遠隔急所攻撃の条件成立が厳しく、またアンデッドやゴーレム、エレメンタルなどは急所を持たない為、1本伸ばしそのままではダメージディーラーとして活躍し続けることは難しいクラスである。

スクロールの使用についてはここ参照

 

〈盗賊/シーフ〉 web版のみ ロックマイアー?
D&D旧版での技能系基本クラスの名前。
デザイナーが言うには、3版以降は盗賊という名からの狭いイメージ脱却を図り、ローグに変えたそうだ。(シーフ/盗賊という名に引きずられ、事あるごとに盗みを働き、隙あらば仲間のポケットから小銭をくすねようとしパーティ不和を引き起こすような不埒なプレイヤーも多く、これの意識改革が必要だったとも)

またD&Dシーフの起源(ガイギャックスがカリフォルニアのプレイグループからアイデアを盗んだとかいう話)については、オリジナルD&D非公認サプリメント『The Manual of Aurania』の英wikiに詳しい経緯が書かれている。

 

追記:シーフの起源にまつわるエピソード
TSRがオリジナルD&Dを出版して間もないころ、カリフォルニア州サンタモニカでも大規模なD&Dプレイグループが結成され始めていたが、プレイヤーの一人ダニエル・ワグナー/ D. Daniel Wagnerが新クラス:シーフのアイデアを思いつき仲間と共有する

これを見たゲームショップ店長のゲイリー・スウィッツァー/Gary Switzerはガイギャックスに長距離電話し、クラス:シーフのアイデアを話す。
*当時、夜中でもかまわずガイギャックスに電話でルールを尋ねるゲーマーがけっこういた

ガイギャックスは少部数のゲーム雑誌『Great Plains Game Players Newsletter』#9(1974年6月)にクラス:シーフの初期バージョンを掲載し、アイデアを提供してくれたカリフォルニアのGary Schweitzerに謝辞を述べる

後D&DサプリメントI:『Greyhawk』(1975)にファイティング・マン、マジック・ユーザー、クレリックに続く4番目の公式キャラクタークラスとしてシーフを掲載。

スウィッツァーはガイギャックスに電話したことをグループに伝えていなかった為、『Greyhawk』を見たカリフォルニアのプレイグループのメンバーたちはガイギャックスが彼らのアイデアを盗んだと思い込む。また二度と盗まれないようにするためには先に発表するべきだと、自分たちのグループで使用しているハウスルール、クラス(この時点でサムライが含まれているのは注目に値する、Dragon#3掲載のサムライより半年ほど早い)、モンスターなどを纏め、無許可のサプリメント『The Manual of Orania』として1976年に自費出版する。

この後、ダニエル・ワグナーはコンベンションでガイギャックスと直接出会うこととなるのだが…
ガイギャックス「Manual of Oraniaは知的財産の盗用だ、訴えるぞ!」
ワグナー「盗んだのはあなたが先じゃないですか」
ここにきて事の経緯を知る二人。
ガイギャックスは「一つの良い盗みは他の盗みに値する("One good steal deserves another."盗みは人の為ならず、とでも意訳するべきか)、OK、それなら大丈夫だ。法の犬に訴えたりしないぞ!」と言って笑い、Manual of Oraniaは無許可非公式でありながらTSRから訴えられなかった唯一のサプリメントになったとか。

参考文献
wiki記事:The Manual of Orania
ジョン・ピーターソンによる初期D&D研究本『Playing at the World』
サイトOriginal D&D; DiscussionへのDaniel Wagnerのコメント

 


〈暗殺者/アサシン〉シズ、ソリュシャン、双子忍者、番外席次
「ダンジョン・マスターズ・ガイド」記載の技能系上級クラス、悪属性専用。
急所攻撃、毒の使用、致死攻撃による暗殺、影隠れ、アサシン専用呪文など。

オバロ登場アサシンクラス持ちのどのキャラもそれらしい魔法を使用している描写がないので、オーバーロードでのこれはD&D3版系とは違う呪文能力の無いローグ系上級職となっているようだ。

双子忍者の特殊能力についてここに追記

 

〈忍者/ニンジャ〉双子忍者
冒険者大全」記載の技能系基本クラス。
気パワーを消費して特殊能力を発揮する戦闘寄りローグといったところだが、ドロンと消えてからの急所攻撃以外特筆すべき能力もなく、低レベルの内はまだしも透明視能力を持ち急所も持たないようなモンスターに立ち向かうのには厳しい。
さまざまなワザマエを持つニンジャをD&D3版系で再現したいならば、Pathfinder RPG忍者がかなりそれっぽくてカッコいいのでお勧めである。


〈モンク〉
〈シャーマニック・アデプト〉
以前の記事「六腕筆頭"闘鬼"ゼロ」を参照。

追記:D&D3版系のモンクは「お前はもう死んでいる」からのカウントダウンひでぶ(能力《激震掌》)や、二指真空把(特技《矢止め》《矢つかみ》)などを持つことから、北斗の拳に絡めてネタにされることも多い。
(ただ単にジャンプ黄金時代直撃のオッサンゲーマーが多かっただけともいう)

そのD&Dモンクの流れを汲むキャラであるセバス・チャンがアニメ化において、こともあろうに北斗の拳のザコキャラ断末魔の演技で名高い千葉繁氏が演じたことについては、何やら因縁めいたものを感じざるを得ない。

*D厨の間で「ヒャッハー!」と言えばそれすなわちクラス:バーバリアンであることが殆どだが、一方「モヒカン」といえばそれは太陽神の信徒を指す。ここだけは北斗の拳と基本用語が違っているので注意が必要である。

 

さらに追記:AD&D東洋世界サプリメント『Oriental Adventures』(1985)*1によると、D&Dのモンクは当時カンフームービーに入れ込んでいたブライアン・ブルーム*2がアクション小説『The Destroyer』(殺人機械シリーズ)にインスパイアされて生み出したものらしい。*3そしてこの小説で主人公レモがチウン老師より伝承される武術こそカラテでもカポエイラでもない、謎の暗殺拳シナンジュガンダムUCで一躍有名になったアレである。
また一つ無駄なオタ知識がふえるよ!やったねたえちゃん!


〈レンジャー〉アウラほか
プレイヤーズ・ハンドブック記載の基本クラス、指輪物語の野伏(アラゴルン)を原型とする野外向け軽戦士。
一般的な電源系RPGでは弓使いである事が多いが、D&Dでは伝統的に二刀流がメイン能力となっている事が多い(3.5版では戦闘スタイルとして「二刀流」か「弓術」の選択式)。またクラス能力《得意な敵》により選択した特定の種族に対し強くなる(レベルアップとともに選択種族もボーナスも増える)、これにより手数でダメージを増やす方向性のクラスとなっている。

そのほかの能力として、4Lv以上でレンジャー呪文の習得及び"動物の相棒"を得る。
動物の相棒の強さは、同Lvドルイドの得る動物の1/2として算出されるが、上級クラス《ビーストマスター》などに進めば、前衛としての能力を落とさずに「ドルイド並みの相棒+それより弱い3匹」を相棒に出来る、がそれでもアウラの様に多数の強力な魔獣を従えるようには成れない。(いちおう未訳本には魔獣を相棒に出来る上級クラスもある)

レンジャーあるあるとしては、D&D系小説『ダークエルフ物語』の主人公、二刀流レンジャーのヒーロー「ドリッズト・ドゥアーデン」が(D&Dに限らず)海外ファンタジーでトップクラスの人気キャラである為、これを目指して電源系D&Dゲームで二刀流レンジャーを選んだまではよかったがは弱すぎてつらい…という報告が後を絶たない。

これはAD&D1stで無造作に強かったレンジャー(ドリッズトはこれ)が後の版でバランス調整弱体化したゆえの悲劇であり、D&D3.5eでのレンジャーもAD&D2ndやD&D3.0ほどでないにしろわりかし苦行クラスであり、弓術はまだ良いが二刀流前衛キャラとして活躍するには多数の追加ルールの導入と高度なキャラメイクを要求される。

 

追記:「Fate/stay night 」のアーチャー(エミヤ)が、弓兵といいつつ二刀流による白兵戦もこなすのは、D&Dのレンジャーの影響があったのかもしれない。(奈須きのこ氏もD&D好きらしい、というか白髪で肌が黒くて二刀流って書くとかなりドリッズトっぽいな)

 

*D&Dレンジャーの紆余曲折な歴史についてはここ参照


〈ブラッドドリンカー〉シャルティア
「不浄なる暗黒の書」記載のヴァンパイア専用上級クラス《ライフドリンカー》が元ネタっぽい。
吸い取ったエネルギーで呪文を修正強化、特殊能力と防御力を向上することが出来る能力「生命の井戸」は〈ブラッドプール〉か?
10Lvの能力「血宴」が〈血の狂乱〉に近いと言えば近いが、どちらかといえば上級クラス《フレンジード・バーサーカー》の狂乱も参考にしている気もする。

*〈血の狂乱〉についてはココで考察

追記:パスファインダーRPGにそのまんまの名前の「血の狂乱/Blood Rage」がある、これはダメージを受けると自動的に激怒状態(バーバリアンの能力、筋力と耐久上昇、ACにペナ)というもので一部のモンスターが持つ能力。3.5版でも同様の能力を持つ動物などはいたが、パスファインダーRPGでモンスター専用能力として名前が整理された模様。ヴァンパイヤがこの能力を持っていたり、クラス能力として得ることは無い。


〈ブラックガード〉アルベド
「ダンジョン・マスターズ・ガイド」記載の前衛系上級クラス、悪属性専用。
アンチパラディンとしてデザインされており、クラス能力として善を討つ一撃、アンデッド支配、信仰呪文発動(パラディン同様少な目)、絶望のオーラ(周りの敵にセーヴ判定ペナ)、急所攻撃などを持つ。

以前にも書いたが"魔物のしもべ"能力によりフィーンディッシュ・ホース(悪魔馬)を召喚できるのがアルベドのバイコーン召喚の元ネタか?
"暗黒の祝福"能力により、全てのセーヴ(オバロ的に言うとレジストの為の判定値)に魅力ボーナスが乗るので、サキュバスであり魅力がクソ高いであろうアルベドと相性が良いといえる。

追記:パラディンが悪墜ち(クラス能力の殆どを失う)した後、このクラスになると特殊能力の回数などにボーナスが付く。さらに11Lv以上の高レベルパラディンからなら1対1の割合で即座にレベル交換できる。一度その道から外れればレベル上げが出来なくなるという制限のあるパラディンに配慮した再就職先である。

 

〈プリンス・オブ・ダークネス〉 デミウルゴス
オカルト蘊蓄的にグノーシス主義デミウルゴスは悪魔「デモゴルゴン」の語源とされる。
さらにD&Dにおけるアークデーモン、アビス第88階層の支配者《デモゴルゴン》は「プリンス・オブ・デーモンズ」と呼ばれ恐れられている。
まー考えすぎだとは思うけどここら辺から、くがね氏が〈プリンス・オブ・ダークネス〉の名を取った可能性はある。

追記:よくよく考えたらデモゴルゴン以外にも「プリンス・オブ・○○」の二つ名を持つデーモンロードはいるし、グラズトなんかは「ザ・ダーク・プリンス」だし、この考察は間違いっぽい。

さらに追記:Prince of Darknessをオンライン辞書などで調べてもらうとわかると思うがこの熟語自体、闇の君主として「サタン」「ベルゼブブ」「吸血鬼ドラキュラ」などを示す事が多い。英語ではよくある表現のようだが、日本では特に劇場版機動戦艦ナデシコの副題として有名だと思われる。が、おそらくオバロとは関係無い。

*1:最近になってアジアに対する偏見が酷いとかでポリコレ方面の槍玉に挙がっていたが、何を今更な話である。なお記載されているクラスはブシ、ケンセイ、モンク、ニンジャ、サムライ、シュゲンジャ、ソーヘイ、ウーイァン、ヤクザと、3.0版オリエンタルアドベンチャーズ(2001)の顔ぶれとほとんど変わっていない。

*2:初期ゲームデザイナーかつTSR株主の1人。サプリメント『ブラックムーア』(1975)へのモンクの採用は編集者ティム・カスクにえらく反対されたが、ガイギャックスに直訴してねじ込んだようである。またD&Dにおける代表的なリッチ「ヴェクナ」とそのアーティファクト関連を設定したのもブライアン・ブルームの功績。後年のブルーム兄弟とガイギャックスの社内権力闘争がガイギャックスの追放の原因となってしまいD&D史における憎まれ役ではあるが、彼のモンク愛がなければ現在のRPGにおける格闘クラスは存在すらしていなかったのかもしれない。(少なくともファイナルファンタジーのモンクはこの直系である)

*3:ティム・カスクの証言によるとD&Dのモンクに先だってアーネソンのブラックムーア・キャンペーンで登場しテストプレイされていた模様、これを見聞きした西部劇&カンフー大好きブライアンがモンクに夢中になったという経緯らしい