「異世界かるてっと」という題を初めて見た時、なんとなく『この世の彼方の海』みたいな話なのかなと感じたものだが、改めてアニメを見終わった今考えると騎馬戦=〈一なる四者〉と考えればだいたいあってる(そうか?)
閑話休題。
"モモンガは自分の骨の手を見て、首をかしげる。自分からは自分の体が普通に見えており、不可知化アイコンが出ていないから、どうも自信が持てない" 16p
この部分、不可知化していても自分が見えるのはユグドラから引き継いだ仕様なのか、それとも現地仕様なのかはわからないがD&Dでは対応する能力を持っていなければ自分の姿も装備品も見えない。
よって巻物などを使用するためには一旦地面に置いてインビジを解除し、見えるようになったスクロールを拾い上げた後読み上げる、などといっためんどくさい小技が当時は当然のように行われていた。
他にも視界が損なわれるような状況に対応するため、巻物整理器の何処に何のスクロールが入っているか記憶しているとキャラシーに明記してDMにアピール、ポーションには 結び玉を付けたヒモを巻き付けて手探りで判別出来るように(当然ラベルには効果を書いておく、自分が死んでも仲間が使えるように)とか色々あったなぁ…
これらルールとリアリズムのせめぎ合いから生まれたテクニックの数々、あんまやりすぎるとプレイアビリティを損なう事になりかねないが、TRPG特有の味としてD&D5版なんかにも引き継いでいって欲しい気もする(老害感)
追記:今季アニメ『ゴブリンスレイヤーⅡ』1話においてポーションを「手先で触っただけでも間違えないようにする」為、結び玉を付けたヒモを巻き付けるという、上記の老害ムーブが行われていた。
この行為に対しアニメ感想サイトなどで「RPGのショートカットコマンドをリアルで表現するとあんな風になる」といったコメントも見られたが、別にそのような深い解釈をするまでもない。D&D系では昔から行われてきた小技の一つである。
あらゆる状況に対応出来るようになるためプレイヤーはサプリメント(追加ルール本)を買い込み、ルールとDMが許す限りの強化をPCに施し、またルール外状況に対しても少しでも有利になるべく、知恵をひねって口プロレス……
それらは所謂「和マンチ」と呼ばれる、後ろ指をさされる行為なのであろうが、全ては過酷な環境を生き抜いてきた古強者たちの適応の結果なのである。
"無論、より上位の明かりが灯るアイテムも幾つか持っている。しかしながらここで強い力を持つマジックアイテムを見せる必要はないと考えた。手札を見せるのはもっと後にすべきだ。それにーつは ヴァンパイアにバッドステータスを与える太陽のごとき明かりを作り出す物だったりする" 43p
D&Dでは吸血鬼が日光を浴びるとバッドステータスでは済まされない、たった2ラウンドで灰になっちゃう。よって"太陽光であるかのように"光を発する呪文やアイテムは対ヴァンパイアの切り札となりうる。
アイテムとしてポピュラーな物は《サン・ブレード/太陽剣》(FFにも継承された)など
"恐ろしい形相となった母の表情だが、それは痛みに耐えているだけではない。
上位の魔法になればなるほど、集中力を要するようになる。無論、それらの魔法を使えるようになるころには術者自身の集中力もまた釣り合うように研ぎ澄まされていくので、通常時には何も問題はない。しかし、こういった特別な時だけは集中する必要が出てくる場合がある" 65p
3.5版と違い技能判定では無くなってしまったがパスファインダーRPGでの精神集中ルールはここ
上記の描写やルールから読み取れるように、呪文の発動妨害のために広範囲の持続ダメージ呪文をというのはかなり効果的である。
ちなみに自分とこのプレイグループでは、ウォーメイジがレッサー・エクステンド・メタマジック・ロッドで持続時間延長したアイス・ストーム呪文をザコ集団や術者相手に打ち込むという戦法が一時もてはやされていた。
"キーノは -共に食事を取る父と母も- 右手に嵌めた指輪に視線を送るが、サファイヤを思わせる青の宝石は何も変わらずいつもの色を湛えていた" 53p
まあ指輪に込められたディテクト・ポイズンで毒見をしている描写なんだろうが…
「魔法の存在する世界ならば有って当然の描写」「当然であるが故に詳しくは書かない」というくがね氏のスタンスが良く示されているシーンである。