Tomb of the Overlord

オーバーロード 元ネタ考察 備忘録

HP(ヒットポイント)とは何か

「ヒットポイント 意味」や「ヒットポイント 由来」とかでググっても例によって「ウィザードリィのすべて」の解釈などばかりで、意外と「D&Dの定義」すなわちRPGの基礎知識がすぐには出てこない。
まあオーバーロードとはあんまり関係ないかもしれないけど、知識の断絶を防ぐ為にも書き留めておく。

 
まず「プレイヤーズ・ハンドブック3.5版」6pのキャラクター作成手順のうちのヒット・ポイントの説明を見てみる。

「ヒット・ポイント(hp)は、そのキャラクターの息の根を止めるのがどれだけ難しいかを示す値である」

かなり身も蓋もない言い方だが簡潔かつ解りやすい、しかしえらく抽象的な定義である。


さらにページを進めて143pの説明:ヒット・ポイントが表しているものを見るとこう書かれている。

「ヒット・ポイントはゲームの世界における2つの事象を表している:物理的に痛めつけられながら、それでも元気に動き続ける能力と、普通なら致命的な一撃を受けるところを、何とか軽い傷で済ませる能力である。」

いわゆる体力的な解釈と、Wizでのベニー松山の解釈と同義のものが二つとも書いてある(この部分はパスファインダーRPGでも変わっていない)


さらに読み進めるとこうある

「とあるキャラクターにとって、ヒット・ポイントは信仰の恩寵や内なる力を表わしているのかもしれない。パラディンがファイアーボールから生き残ったのを見た人たちは、彼女に何かの大いなる力の加護があることを確信するだろう。」

ここまでくると解釈次第でなんでもアリという感じがしてくる、べつにSF的厨二解釈(ナノマシン残量云々)や「正しいから死なない@散」みたいなのでも許されるんじゃないかな。


なおヒット・ポイント/命中点(及びアーマクラス*1)という言葉自体は、最初期D&Dの製作者の一人であるデイヴ・アーンソンが南北戦争の装甲艦を扱った海戦ミニチュアゲームのルールから引っ張ってきたものらしい、どうりで体力とはかけ離れた語句になってるわけだ。


*基本ルールブックの記述の詳細は版にもよるのだが、基礎的な知識となると「常識だから」的な態度であまり詳しく書いてないこともあったりする。しかしこと3版コアルールではWotC社がD&Dの仕切り直しと再興を目論んだ為か、各種情報が基本的な部分まで詳細かつ解りやすく、また参照しやすいように巻末索引や用語集にもページを割き、その上フレーバーテキストも豊富ときており文句無しの出来栄えである。
しいて欠点を挙げるなら値段が高い上に、300ページオーバーに細かい字でビッシリが3冊で基本ルール、その上和訳された分だけでも追加サプリが30冊以上本棚を占拠圧迫していると言う「いろんな意味でヘビー級なルール」という部分か、、、

 

追記:D&Dの重要性を説くための記事みたいになってしまったが、実際のところ英語版ウィキペディアでhit pointを検索すると転送されるHealth (gaming)のページではD&D以上にマリオ、ゼルダイース、モンハン、ストリートファイターなどが説明の為の例に挙げられており、あらためて日本産ビデオゲームの世界的影響力の大きさが知れてくる。

 

さらに追記:D&D4版の初心者向けに作られた1Lvシナリオ「茨々峠に潜む闇」では「hp:一般的なゲーム機で遊ぶRPGなんかと同じ。」と説明されている、すげえ投げやりだ…

 

もひとつ追記:

キャラクターが自分のクラスのレベルを向上させると、それに応じて物理的なダメージを受け続ける実際の能力も向上すると考えるのは非常に不合理です。
なぜなら、もし人間が4ヒット・ポイントのダメージを与える剣の突きによって殺されると仮定するならば、同様に、ヒーローは*2殺される前に平均して5つの剣の突きに耐えることができると仮定しなければならないからである。
では、なぜヒット・ポイントが増えたのでしょうか?それは、ヒット・ポイントには、キャラクターがダメージに耐える実際の身体能力(耐久力ボーナスによって示される)と、それに見合った、戦闘や同様の生死に関わる状況でのスキル、不測の事態を警告する「第六感」、運、魔法の保護やあるいは神の保護の幻想的な規定といった分野での増加が反映されているからです。
したがってconstitution/耐久力は、実際に肉体的なダメージに耐えることができるヒット・ポイント(フィジカル)と、第六感や運が関係する計り知れない部分(フィットネス)の両方に影響します。
ラスプーチンの例を挙げると、彼は普通の男性4人を殺すのに十分な肉体的ダメージに耐えることができたと考えてよいでしょう、つまりヒット・ポイントは14以上です。

*AD&D1st Dungeon Master's Guide(1979)、HIT POINTSの説明より抄訳。こういう大事なことはプレイヤーズ・ハンドブックに書いとけよ*3とか、ラスプーチンのそれは例としてどうなん?とかツッコミたい所ではあるが、とりあえず後の版での説明よりかは親切丁寧ですね。

*1:アーネソンがブラックムーア・キャンペーンで使用していたルールからそのままの形でオリジナルD&Dに転用されたものは少なかったようで、D&Dのアーマクラスは明らかにガイギャックス作のミニチュアウォーゲーム『Chainmail』におけるマンツーマン戦闘ルールの近接戦闘判定表(APPENDIX B)が原型となっている。また同表にはClass of armorの言葉が見られる。

*2:ここでいうHero/ヒーローとはファイター4Lvのキャラクターを指す。なお、なぜファイター4Lvの称号がHeroなのかというと、D&Dの原型となったミニチュアウォーゲーム『Chainmail』のファンタジー追加ルールにおいて、ヒーローユニットの性能が歩兵ユニット4体分だったという故事に由来する。さらに余談を付け加えるなら、Chainmailにはヒーローの2倍、歩兵8体分の性能を持つ「スーパーヒーロー」ユニットが存在するが、つまるところこれはオバロでの1ガゼフに相当する。

*3:あとで調べたらちゃんとPHBにも「ヒット・ポイントの大部分は、戦闘技術、運(超自然的な力によって与えられる)、魔法の力を象徴している」と書かれていた…というか、昔のD&Dのルールブックって何処に何が書いてあるのか、わかりにくすぎる!