Tomb of the Overlord

オーバーロード 元ネタ考察 備忘録

俺より強い奴に会いに行く

「データがあれば、そいつは倒せる」

D&D3版系サイト【CDS:PE】の記事「伝説の英雄、そして神々」より 07/04/03


D&Dの場合だとデータさえあれば神だって殺してみせるを地でいきますからね。

丸山くがねの活動報告 - 小説家になろうソードワールド」の感想返しより 13/04/17


「どんなバケモンであれ、相手の実体(データ)があるってことは、だ!」
「神さまだろうが、ぶっ殺せるってことだ!!」

蝸牛くもゴブリンスレイヤー」6巻:第6章より 17/09/14


上記のような言説がTRPG界隈で言われるようになったのは何時頃からだろうか?
自分は3版から始めた人間であり、当時影響力のあった上記【CDS:PE】の記事以降、ぐっと増えたように記憶しているが、ひょつとしたらもっと昔より言われていたのかもしれない。(なお途中からTYPE-MOON空の境界」の「生きているのなら、神様だって殺してみせる」が混ざってきているのが興味深い。)

 

それはさておき実際問題として、倒せるとは言ってみたものの3版の神格はとても強い。

ダゴンクトゥルフ神話の方)みたいな半神クラスならまだしも、中級神以上ともなれば、その強さはぶっ飛んだ物になる。これらは数値の大きさだけを見てレベルを上げればどうにかなるだろ的発想でどうにかなる代物では無い。神格ルールにより与えられる特殊能力は無限ウィッシュとか絶対先制攻撃とか攻撃全部がトゥルー・ストライクとか知覚がマイル単位とか判定すべて出目20みたいなチートくさい能力山盛りであり、一体どんなトリックを使えばコイツらと真っ当な戦いになるのやら、自分には想像も出来ない。

当然これらの強すぎ神格データ(その能力を分化した化身/アヴァターでも強すぎる)は大部分のゲーマーにとって使いどころのない物であったが、それはそれとして悪神みたいな有名所と戦いたいという欲求もまたD厨には多く、これを満たすために本体よりかなりマイルドに弱体化した「アスペクト」という存在の設定及びデータが未訳サプリメント「Miniatures Handbook」に掲載された。(D&Dリスペクトラノベでは「最果てのパラディン」に《木霊/エコー》として出ているのがそれである)

これは強大な存在がその力の一部を用いて作りだした化身のようなものであり、脅威度10~20程度でいわゆる英雄越えレベルのキャンペーンのシメにラスボスとして丁度よい強さとなっている。

* まあこれらのアスペクトに対し「ピット・フィーンド(最上位悪魔)より弱いなんて」「もっと強い本体のデータが欲しい」というわがまま意見も多少あったわけだが…

その中でも敵の大将格として各デーモン・ロードとアークデヴィル(九大君主)は特に人気があったようで「不浄なる暗黒の書」、「魔物の書1&2」、公式サポート誌「Dragon」、未訳シナリオ「Savage Tide」、公式web記事とアスペクト及び本体が何度もデータ化され、上を見れば脅威度30前後と結局インフレ気味になりつつもラスボスのデータには困らない状況となった。

 

以上、D厨のデータに対する飽くなき欲求を垣間見る一幕でした。

 

追記:最近のMTGとD&Dのクロスオーバーについての記事に以下のような文言があった。

(Therosの神々にステータスブロックを持たせないというWotCの判断について)
ここに最も適切と思われる、RPG界隈の古い格言がある。 "能力値があると、殺される"
There is an old saying in the RPG community, and one that seems most apt here: "if you stat it, they will kill it."*1


さらに色々ググってみると、次のような言葉も昔から言われているようだ。

"ヒット・ポイントを持つのなら、殺せる"
"If it has hit points, we can kill it"

上はDM視点で下はPC視点といった感じだが…wいつ頃、どのような媒体を通してこれらが日本に伝わってきたのやら、まだまだ興味は尽きない。

*1:この指摘についてはやや疑問視。少なくとも3rdの頃の神格は凶悪な強化ルール(それでいてSRDに書いてあるので基本ルールの範疇である)を積み上げ、「殺れるもんならやってみろ」というのがWotCの方針だったはず。これはD&D出版部門が縮小整理されたために何でも出す余裕が無くなった、あるいは神格データなんてけったいなものはいらない(3版の神格データ本は販売が振るわず投げ売りされていた)という真っ当な判断が出来るまでWotCが正気になった、と見るべきだろう。

「聖王国の聖騎士」描写から見るルール その2

"狂乱していると致命傷を与えても、倒れない事があるからな" 書籍12巻-321p

「戦士大全」記載の上級クラス:フレンジード・バーサーカーは、4Lvで得る能力《不死身の狂乱》により狂乱中はどれだけヒットポイントが減ろうが、-100とかになっても死ななくなる。
だがこれは決して[即死]効果を防いでくれるわけではなく、他には「ヒットポイントが0以下になると塵になる」効果の分解光線などでも死亡してしまう。
このルールを鑑みて作中で「頭蓋を砕く」という描写をしたのだろう。

*さらに3版的ルール解釈をするならば、「頭蓋を砕く」は「とどめの一撃」による即死判定とみなす事ができる


"上位死霊/ハイレイスというのがどれだけの強さを持つのかさっぱり分からないが" 書籍12巻-328p

参考になるかわからないがパスファインダーRPGのレイスのデータはココ(3.5eでの上位レイスであるドレッド・レイスは16HD、オバロ換算で種族レベル56程度)
御覧のように接触による耐久力吸収が主な能力であり、恐怖関係の特殊能力は対動物しか持たない。
この点は同様な非実体アンデッドのゴーストの持つ能力を参考にしたのだろう。

なお、D&D3.5eでは上位死霊術呪文でも召喚できるのはレイス1体であり、上位レイス複数とかは不可能である。
これは敵モンスター側がプレイヤー達とは違い非実体モンスター対策を持つことなど殆どなく、相手を選べばレイスでも充分無双できる為、ゲームバランスを考えてのことと思われる。

 

"武器に直接ダメージが入る武器破壊だが、そのダメージは材質の差や武器の持つダメージ量に大きく影響を受ける" 書籍12巻-333p

武器破壊 /Sunderは攻撃時に行える基本的な戦闘オプションの一つだが、ペナルティ無しに行うには特技《武器破壊強化》が必要である。
特技が豊富なファイターが取れば戦術に幅が出そうなもんだが、実際のところ敵の武器=未来の戦利品であり貴重な収入源を破壊すれば悲しみがマッハであり、あまり活用するPCは少ないように思われる。

なお敵モンスターの方といえば《武器破壊強化》を持っている者は少ないが、あらゆる金属製品をボロボロの錆にして食べてしまう有名怪物とか、武器を奪ってクシャポイしちゃうのが大好きな闇巨人とかろくでもない奴らがいるので、危険なことには変わり無くダメージ減少対策と併せて予備武器の携帯は必須である。

*参考になりそうなPRDJのルールはココココ

 

以下、新登場のモンスター亜人など。

鉄鼠人/アーマット
おそらく「モンスター・マニュアル3」アーマンドが元ネタ。
敏捷と耐久に+6、適正クラスがモンク、特殊能力として「防御の構え」など、耐久型モンクを推奨しているように見えるが、小型サイズに種族HD5、レベル調整値3(8Lvスタートになる)と、とても実用に耐えない。
まー脅威度が低いんで、組み付きモンク(装備無し)として敵に出せば嫌がらせには使えるか。

山羊人/バフォルク
名称的には「アンダーダーク」記載のバフィタウロスが近いが、こちらはデーモンと人間とミノタウロスの混血(現住の来訪者)という、あんまり亜人ぽくない種族。
容姿的には「モンスター・マニュアル3」のゴートフォークのような気がするが、獣人系はよくある発想なので元ネタとは言い切れない。

洞下人/ケイブ
地下種族としてメジャー所のグリムロックかな?

人蜘蛛/スパイダン
D&Dにはアレイニアにエターキャップ、ドライダーなど蜘蛛系の種族も多いが、「フェイルーンのモンスター」及び「アンダーダーク」記載のキチンが4本腕で、口から出す糸で軽装鎧を作れたりとオバロ描写に合致する。

レッドキャップ
D&D3.5eでは「モンスター・マニュアル3」に記載。
イングランドの伝承にある悪い妖精であり、別にD&Dのデータが元ネタとは限らないだろうが、一応強大化したエルダー版レッドキャップの種族ヒットダイスが12(3.5倍で42)と、ユグドラシルでのレベル43にかなり近い。

オーガソーサラー 7巻フォーサイト討伐リスト
オーガ・メイジが元ネタで間違いないかと。
D&Dのオーガメイジは氷結波をはじめとする豊富な呪文能力や人に化ける能力など、オーガに比べかなり強力なモンスターであるが、これは伝統的に日本の「オニ」をモチーフにデザインされている。グーグルのイメ検を見てもらえれば、なんとなくわかってもらえると思う。

藍蛆/ゼルン
3.5版未訳「Monster Manual4」記載のZern Blade Thrall(ゼルン・ブレード・スロール)が元ネタっぽい。
しかしググっても情報が少ないし、出典元はモンスターマニュル4だけで他の版にはいないみたいだし、グーグルのイメ検でもヒットするまともな画像は1つだけという、かなりのマイナー怪物。

この種族はZern(ゼルン)という邪悪な種族(他の種族を攫ってきて好奇心により改造する、肉体の変化や変成術が得意)によって奴隷として生み出された種族であり、元は人型生物とワームの混血であるという。
種別:人怪(モンストラス・ヒューマノイド)、属性は常に中立にして悪、種族HDは5(オバロ換算17Lv)、ゼルンの護衛として現れ、特殊武器ネットに習熟。

 

 他にもアレンダーグロストとかスラーシュみたいな、やたら特徴的な奴には元ネタ有りそうなんだけど、わからんなー。

 

追記:アレンダーグロス Web版「至上命令
アレンダグロスト《Arendagrost》はDungeon誌で展開された大長編キャンペーン「Savage Tide」終盤に登場する拠点防衛用巨大生物兵器である。
D&D3.5版末期シナリオのオリジナルモンスター*1ということもあり、25HD CR23 火冷酸の三連ブレス(合計60d6)、即死の凝視など砲台として異常に殺意火力が高い。その外見は触手の生えた三つ首竜だが、デモゴルゴン(プリンス・オヴ・デーモンズ)とマルカンテト(サキュバスの女王)の息子という設定であり、種族は竜では無く来訪者/アウトサイダー(デーモン系)となる。これがアウラ配下であるあたりはD&Dの影響が色濃く残るWeb版といったところか。

…てかね、未訳ダンジョン誌のモンスターが元ネタとか、正直調べきれないよ!

*1:ここで言うオリジナルモンスターとは、モンスターマニュアルに記載されたモンスターやそれをベースにカスタマイズされたものでは無い特定シナリオ登場のユニークなモンスター、ぐらいの意であるが、その多くは「ぼくのかんがえたさいきょうモンスター」的やべえ能力を盛られており、プレイヤーに忌諱される傾向にある

"ゴブリンスレイヤー"

人間のファイター6/レンジャー1 ECL7 脅威度6

真なる中立、中型サイズの人型生物

ヒット・ポイント:48(6D10+1D8+10)

イニシアチブ:+2

移動速度:30ft (中荷重につき20ft)

アーマ・クラス:15、接触12、立ちすくみ13

基本攻撃/組み付き:+7/+9

攻撃:ショート・ソード=+9近接(1d6+2/19-12)

またはダガー= +9近接or遠隔(1d4+2/19-20)

またはスリング=+9遠隔(1d4+2)

ほかクラブやショート・ボウなど

*特技とクラス能力により対ゴブリン+5ダメージ

全力攻撃:ショート・ソード= +9/+4

セーヴ:頑健+8、反応+6、意志+3

能力値:筋力14/敏捷力15/耐久力12/知力13/判断力12/魅力8(ポイントバイ25)

技能:〈隠れ身〉+4、〈聞き耳〉+5、〈視認〉+4、〈忍び足〉+4、〈生存〉+2〈装置無力化〉+3、〈知識:自然〉+2、〈知識:ダンジョン探索〉+4、〈知識:地域〉+5〈知識:地理〉+3〈跳躍〉+5、〈登攀〉+7

特技:《早抜き》《迎え討ち》《攻防一体》《無視界戦闘》《トンネル戦士》《万能投擲術》《Weapon and Torch》《得意な敵強化》《追跡》

装備
ショート・ソード、ダガー×3本、スリング、クラブ、ショート・ボウ、矢筒(アロー×10、ドラゴンブレス・アロー×10)、スリング、レザー・アーマ、バックラー
背負い袋、ベルトポーチ、保存食、水袋×3、チーズ、松明×5、覆い付きランタン、油(1pt.ビン入り)×2、火打ち石と打ち金、有毒発煙棒×3、
麻製のロープ (長さ50ft)、ひっかけ鉤、ピトン×8、金槌、シャベル、チョーク、砥石、盗賊道具(高品質)、
耐毒剤×4、錬金術師の火(ビン入り)×3、ポーション・オブ・キュア・ライト・ウーンズ×2、火薬樽(15lb.のスモークパウダー入り)


基本クラス:ファイター
ファイターボーナス特技×4

基本クラス:レンジャー
得意な敵:人型生物(ゴブリン類)
対ゴブリンにおいて<聞き耳>、<視認>、<真意看破>、<生存>、<はったり>の技能判定、および武器ダメージ・ロールに+2(特技で強化されダメージ+5)

野生動物との共感:動物の態度を魅力判定で向上させることが出来る

 

TRPGやらゲームブックネタ満載のファンタジー小説、「ゴブリンスレイヤー」より主人公をキャラメイク再現してみた。
Web版ではH.F.Oネタも振られていたが、さすがにファイター1本だとキビしいというか、寂し過ぎるのでレンジャー1混ぜで対ゴブリン特化を再現。
まあ作中描写を見るに3版系で再現するのが適切かどうか?という問題も有るのだが、自分はファイティング・ファンタジーですらd20版しか知らないし…
(一応、ゴブリンパラディンがスマイト使ってきたり3版的な描写もあるのだが、それにしては術者系の呪文使用回数が少なすぎる)

でまあ出来あがったデータだが、同レベルのブレインと比べるとあまりに弱い…
3版系はレベルが上がってもアーマクラスが良くなったりはしないので金か呪文で防具を強化することになるんだが、ゴブリンスレイヤーさんは常に最低レベルの装備。仕方ないので特技《攻防一体》により命中を下げてその分ACを稼ぐようにしてみたのだが…
あと雑装備の類が重い、レベルに見合った金持ってんだろうから、さっさとミスリル・チェインメイルとバッグ・オヴ・ホールディングを買おう。

他に特筆すべき点と言えば武器スタイル特技《Weapon and Torch》(未訳サプリ「Dungeonscape」出典)がキラリと光る。
これは全力攻撃時に片手武器1回攻撃と松明による火1d6ダメージ+目くらましを与えるという作中再現が可能なイカす特技だ、前提条件も無いので低レベルから使えるぞい。

おっと、両手武器の方が強いは禁句だ、ちくしょう!(ガイギャックス)

 

追記:ゴブリンスレイヤー外伝2話において、新人として冒険者ギルドに登録された時の主人公の力量レベルが描写された。
これによると戦士ファイターが1、野伏レンジャーが1とあり、とりあえず予想したクラス構成と変わらず一安心(まあソードワールド的な技能振り分けなんだろうけど、ゴブスレTRPGではどうなることやら)。

それと、もう一つ気になる記述があったのでちょいと検証してみる。
"確か紫色の長虫パープル・ワームといえば、かなりの手強さだったはず。これはまずいと慌てて怪物辞典モンスターマニュアルを取り出し、頁をめくった。「えと、脅威度は十二か。で、竜の場合、孵化したてなら基本値で、緑鱗だと……四?」"

D&D3.5eモンスターマニュアルのパープル・ワームのデータは脅威度12で問題無いのだが、グリーン・ドラゴンのワームリング(雛竜)の方は3.0版及びSRDが脅威度2、D&D3.5版が脅威度3と作中描写と微妙に合致しない。
気になって5版の方とかも調べていたのだが、結局パスファインダーRPGでのグリーン・ドラゴン、ワームリングが脅威度4であった。

…Monster ManualじゃなくてBestiaryじゃん、というツッコミはさておき、ここらへんのモンスターの強さの感覚は完全にD&D3版系だねぇ。

 

呪文 その27

アインズがアウラに対し"精神的な結びつきを魔法で作っておこう" 書籍3巻318p
《テレパシック・ボンド/テレパシー結合》 ウィザード5Lv

この呪文で一旦精神的リンクを繋いでしまえば、どれだけ距離があろうと意思疎通が出来る(別次元にいるとかで無ければ)


"〈透明化〉という魔法があるのは知っているが、それがどんな魔法で、どうしたら効果が切れるかなどは知らないからだ" 書籍12巻-78p

ウィザード2Lv呪文《インヴィジビリティ》では、対象が何らかのクリーチャーを「攻撃」した瞬間に不可視状態が解ける。また間接的に害をなす行動は攻撃とはみなされず、モンスターを召喚して攻撃させたり、縄を切って敵を落とすなどでは不可視状態は解けない。
さらには上位呪文の《グレーター・インヴィジビリティ》4Lvでは、攻撃的な行動をとっても不可視状態は解けない。

追記:13巻の描写では〈完全不可知化〉の魔法であっても、攻撃する度に透明化は解けるようだ。


"一応、聖騎士の使う魔法の中にも飛行の魔法は存在するんだが、あれらはかなりの高位魔法だ" 書籍12巻-273p

D&D3.5eのパラディン呪文には、自身に飛行能力を与えるような呪文は無いが、4Lv呪文《ウィングド・マウント》では自身の「特別な乗騎」1体に飛行能力を与える事ができる。

なお注意して欲しいのはパラディンは専門術者クラスとは違い呪文習得は遅く、最大の呪文Lvが4ということである。
この《ウィングド・マウント》を習得するのに最低14Lv、他クラスの7Lv呪文以上に相当すると思って良い。


"私が知っているのは、ありとあらゆる系統の魔法に置き換えられるということだな。分かり易く言えば、それを使うことによって死者すらも蘇らせることができる" 書籍12巻-354p

幻術系統の最高位呪文《シェイズ/高位影の召喚術》ウィザード9Lvでは影界のエネルギーから半ば実在する幻影を作り出す。実際の効果としてはウィザード8Lv以下の召喚術(創造or招来)をどれでも再現することができる。
だが蘇生呪文はクレリックの召喚術(治癒)であり、シェイズで再現は出来ない。

数日に一度という描写からもこれはユグドラシルでの幻術系超位魔法か幻術特化クラススキルのことを指しているのだろう。

なお「あらゆる系統の魔法に置き換えられる」という点はD&Dでの《ウィッシュ》呪文の効果と同一だが、ウィッシュの基本概念は「世界を騙す」では無く「現実改変」となっている。

「聖王国の聖騎士」描写から見るルール その1

"安寧の権天使が低位の信仰系魔法を操り、悪意に対する加護、悪を討つ一撃、全体沈静化などの特殊技術を持っているのは知っている" 書籍12巻-77p

D&D3版系のハーフセレスチャル(半天使)など善の来訪者の血を引く者は特殊能力《悪を討つ一撃》を標準として持つが、肝心のセレスチャル自体はなぜか《悪を討つ一撃》は持っていない。
この能力は悪属性の敵に対する近接攻撃に追加ダメージというもの。なおクラス:パラディンも《悪を討つ一撃》を基本的な能力として持つが、オバロのこれは〈聖撃〉となっているようだ。

*セレスチャルはアルコン、エラドリン、エンジェル、ガーディナルの4種に分かれており、この内のアルコンとエンジェルが比較的日本人のイメージする天使に近い...とか書こうと思ったのだがヘタな先入観を持たれるとマズいので、まずはD&D系のサイトとかで画像を確認して欲しい。「みすずちん」の例もあるしね。

 

追記:悪意に対する加護
おそらくココに書いたプロテクション・フロム・イーヴル呪文の効果


全体沈静化:カーム・エモーションズ呪文(クレリック2Lv)の効果?
半径20フィートの対象は沈静化され、攻撃的な行動を行うことが出来なくなる。また恐怖効果、激怒/Rageや狂乱/Frenzyの能力、混乱、士気ボーナス(主に呪歌)などが抑止される。
呪文の維持に精神集中が必要なのであまり使ったことが無い呪文だが、高レベル狂戦士や一部の上級クラスの能力には、仲間全員を狂乱化させるような危険な物もあるので、そういったヒャッハー!な蛮人集団には有効かな。

 

"悪魔は炎などに耐性を持つ者が多いが、聖炎は炎と聖属性を併せ持つので炎耐性では半分までしか防ぐ事ができない" 書籍12巻-85p
《バーテズゥ》の副種別を持つクリーチャー、所謂デヴィルは[火]に対して完全耐性を持つ。また《タナーリ》の副種別を持つクリーチャー、デーモンは[酸][火][冷気]それぞれに抵抗10を持つ。

さらに「聖炎は炎と聖属性を併せ持つ」という部分はココで紹介した呪文《フレイム・ストライク》が相当する。

 

"巨人の亜種といえるトロール" 書籍12巻-163p
"ふーん、巨人とは戦ったことがないからなぁ。いや、オーガとかなら別だけど" 書籍12巻-166p

前に"グ"の所でちょっと書いたが、D&D3版系ではトロール及びオーガは共に種別:巨人となる。

 

"上位死霊だ。非実体の存在であるがゆえに、壁などを通り抜けて行動する事ができる。……無論、無限に通り抜けることができるというわけではないのだが……" 書籍12巻-314p

非実体クリーチャーは固体に侵入したり固体を通り抜けることができるが、物体の外縁に隣接し続けていなければならず、よって自身より大きいスペースの物体を完全に通り抜けることはできない。また[力場/フォース]効果を通り抜けられない。

以上からわかるように、この手のモンスターは壁の中で待ち伏せしていて冒険者が通りかかると「こんにちわ」という戦法をとる事が多い。
この場合だと《シー・インヴィジリティ》呪文を掛けていても壁の中までは感知できないからだ。

 

オーバーロード英訳版のアレコレ

12巻発売大盛況につきサイト訪問者も増えてるとこ悪いが記事に纏めるにはまだまだかかりそうなので、読み進めていたオバロ英訳版のネタを投入。我ながらイヤな読者だなぁとは思うが、気になるゲーム用語を中心にどのような訳となっているかをチェック!
いつものように〈オーバーロード英訳版〉《D&D3版系》での並びになっています。


ミスリル〈mythril〉ミスラル《mithral》
ちなみに本家トールキンだと綴りはMithrilになる、間違い探しかよ

精神作用〈psychic effects〉《Mind-Affecting》

即死〈instadeath〉《Death》

刺突武器〈Stabbing Weapon〉《piercing weapon》
斬撃武器〈Cutting Weapon〉《slashing weapon》
殴打武器〈Battering Weapon〉《bludgeoning weapon》

魔法の掛けられた武器〈enchanted weapons〉《magic weapons》
一般的なRPGでは物品に呪文を掛ける強化などにenchantが使われることが多いが、D&D3版系では人の心に掛ける呪文(恋のおまじない、魅了)としての英語の使い方からenchant=心術という分類になっている。


闇視/ダークビジョン〈Night Vision〉《Darkvision》

視認困難〈bad visibility〉《Concealment》

外皮〈skin〉《Natural Armor》

 

魔力系魔法詠唱者〈magical-type magic user 又は arcane-type magic caster〉
秘術術者《arcane spellcaster》

信仰系魔法詠唱者〈faith-type magic caster〉
信仰術者《divine spellcaster》

死霊術系統〈ghost tree〉《Necromancy School》

高速治癒〈rapid healing》《Fast Healing》

生命力吸収〈absorbing life force〉《Energy Drain》

清浄投擲槍〈Purifying Lance〉
不浄衝撃盾〈Impure Shock Shield〉
前にシャルティアの所で書いたがD&Dだと《清浄/Sacred》《不浄/Unholy》となる。

気〈chi〉《ki》
諸外国では中国での発音に近いqiやchi表記が主流のようだが、D&Dでは伝統的にkiである。だからといってデザイナーが日本文化に精通しているとはとても言えないオリエンタルアヤシゲ用語ごちゃまぜ状況だが

聖印〈sigil〉《holy symbol》

アンデッド退散〈undead exorcism 又は Cast out〉《Turn Undead》

非実体〈ghostly 又は insubstantial 又は incorporeal〉《incorporeal》
表記揺れが多い。

 

正のエネルギー〈justice energy〉《Positive energy》
正義のエネルギーっすか…
3巻に負のエネルギー〈negative energy〉の対になるものとして効果の説明があるが、ここまできて訳者は自分の犯した間違いに気付いたのではなかろうか。


盗賊/ローグ〈thief〉《Rogue
ローグってわざわざルビ振ってあるのに。
一般的な意味からクラス名って分かりにくいと判断したのかな。


オバロ 総称:悪魔〈Demon〉 
魔鬼/デーモン〈fiend〉 魔人/デビル〈devil〉

D&D 総称:魔物/フィーンド《fiend》
魔鬼/デーモン《Demon》 悪魔/デヴィル《devil》

D&D用語>D&D和訳>オバロ>オバロ英語版という過程を経てフィーンドとデーモンが入れ替わってしまっている。


攻性防壁〈reactive barrier〉
またしてもバリアーである(攻殻英語版と同じ訳)
この訳で攻性防壁という言葉の持つカッコ良さが伝わるのかなあ?
…もう某エロゲ*1みたいにBlack ICEでいいじゃん!


ケンセイ〈Saber Sage〉
いや、メリケンのオタにはKensaiで通じるよ?

*1:士郎正宗によるSF漫画『攻殻機動隊』に登場するガジェット「攻性防壁」は、SF作家ウィリアム・ギブスンが生み出した一連のサイバーパンク作品における「ICE」ないし「Black ICE」がその発想元となっていることについてはSF者にとっては敢えて語るまでもない常識である。しかしながら近頃のオタ界隈ではギブスンより寧ろシロマサの方が知名度が高かったりするため、ギブスン未読者に対し「Black ICEとは攻性防壁のようなもの」と説明する羽目になるいとう一種の逆転現象が度々見受けられるのが現状である。

さて18禁サイバーパンクロボットアクションゲームの傑作『BALDR FORCE』について、この作中では「脳死/フラットライン」や「腕利き/ホットドガー」など黒丸訳ギブスン用語が多用され作品に彩りを添えているが、上記のような関係をふまえてか「攻性防壁」に「Black ICE」とルビを振るという、クルードかつテクニカルな表記が行われていた。

〈ホーリースマイト〉はどのくらい痛いの?

現地勢がアインズ様にダメージを与えた数少ないシーンという事もあり、「威光の主天使」が発動した〈ホーリースマイト〉については色々と話題になる事が多い。
2chなどではアインズ様のオレツウェイ感からかヒット・ポイント1%も減らなかったんじゃないか?という意見も割合多く見られる。
ただまあオバロ作中の描写だけでは何とも言えない状況であり無根拠な推察に走りがちであるが、とりあえずD&D3.5eであのシーンを再現するとしたら大体の所は試算できるのでやってみる。


まずはアインズのヒット・ポイント、
3.5版ではアンデッドのHPはクラスや能力値にかかわらずヒット・ダイス×d12で算出されるので、キャラメイクで一番良く使われる「1Lv目は最大、あとは平均値」のダイス目計算ルールでは、おおむね28HDのアインズは187hpとなる。


次に〈ホーリースマイト〉のダメージを考えてみる。

「モンスター・マニュアル3.5版」に記載されているエンジェル3種はどれも《ホーリィ・スマイト》を擬似呪文能力として発動できるが、これは「善の領域」4Lv呪文であり、これではアインズの低Lv呪文無効化能力で防がれてしまう。

だがオバロの〈ホーリースマイト〉は第七位階。これは《ホーリィ・スマイト》の上位呪文であり「信仰大全」に収録された7Lvクレリック呪文《ライチャス・スマイト》に相当すると思われる。

*悪のクリーチャーに術者Lv×d6のダメージ、1d4ラウンドの盲目化、意思セーヴ成功でダメ半減及び盲目効果無し、悪の来訪者に対してはd8とダメージダイスが大きくなり、善のクリーチャーにはノーダメ

次に呪文のダメージを算出するのに必要な「威光の主天使」の強さ(術者レベル)についてだが、現地では最上位天使、アインズからすればザコ、でも第七位階が使えるということであり、ここらの点から考量してD&D3.5eのアストラル・デーヴァ相当で話を進める。

*アストラル・デーヴァはMMに記載されたエンジェルの内では一番弱いが、それでも脅威度14(オバロ49Lvパーティと張り合う強さ)、多数の擬似呪文能力を持ち、この内の《ホーリィ・ワード》が《ライチャス・スマイト》に入れ替わっていても呪文Lv的に問題は無い。

アストラル・デーヴァの術者Lvは12である為、《ライチャス・スマイト》のダメージ期待値は12d6=42
「威光の主天使」は作中、ロッドで《呪文威力強化》していた為に1.5倍して63

エピック術者であり意思セーヴが高いアインズは95%でセーヴ成功するだろうから、ダメージ半減して31.5

結果、アインズのヒット・ポイントからすれば約16.8%のダメージとなる。


無論、以上の計算はあくまでD&D3.5e上での期待値であり、実際はどうだったのかは分からない。
HP算出一つ取ってみても後継のパスファインダーRPGでは魅力による補正が付いて大幅に増えるだろうし、ましてインフレが激しいであろうMMOベースのユグドラシルでは本当にダメージが1%未満という事もあり得るかも知れない。
しかし「3版D厨ならば、このような物の考え方をする」という点においては、くがね氏の考えるダメージの考察材料として十分意味があるものと思われる。

 

追記:なおモンスター種族生来の呪文発動能力(擬似呪文能力)は術者クラスのように2Lvごとに習得呪文レベルが1上がったするような法則性は無く、種族ヒット・ダイス(オバロで言うところの種族レベル)が低くとも高位の呪文を使える事がある。
もっとも強力な呪文は1日1回とか回数が少ない事が多く、さらに呪文のダメージを決める術者レベルも、本来クラス能力によりその呪文を発動できるようになるレベルより低い事もある。
この点から考えるに、オバロで登場したモンスターが使用する呪文から7Lv刻み説に則りその種族レベルを推察するのは、あまり正確では無い可能性が高い。

*D&Dの天使系は、脅威度の割に低めの種族HDだが疑似呪文能力いっぱい、上位エンジェルに至ってはさらに20Lvクレリックとしての呪文発動能力を追加で持つなど、低めのHPに特殊能力詰め込み過ぎな感じ。